2022 Fiscal Year Research-status Report
感染症早期発見に向けた流入下水中胃腸炎ウイルスの網羅的検出と流行指標の開発
Project/Area Number |
20K04745
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
風間 しのぶ 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (20749444)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 腸管系ウイルス / メタゲノム / 流行指標 / 下水 |
Outline of Annual Research Achievements |
人間社会におけるウイルスの多様性と感染症の発生程度を把握し、ウイルス感染症を早期検出することは感染症対策を講じる上で必要かつ急務である。本申請研究では,下水試料からssRNAウイルス(多くのヒト腸管系ウイルスが有する特徴)を網羅的に検出し、それらウイルス感染の発生状況を明らかにする。加えて,検出されたウイルス(既知・未知)を用いて、ウイルス感染症の発生程度(感染者数やその割合)を示す流行指標を開発することを目的とする。昨年度実施したメタゲノム解析から高頻度・高濃度(配列数)で検出された、未知配列、および、腸内細菌に感染する既知のウイルス(バクテリオファージ)を指標の候補として、国内の下水や海外の下水・地下水試料から定量PCRにて検出を試みた。その中でも、あるファージは、いずれの試料からも定量PCRにて高頻度・高濃度で検出され、また、本研究で開発を目指す指標として有力であると考えられた。さらに、本検討をすすめるなかで、当該ファージ検出における新たな知見を得ることができた。当該ファージの定量PCR検出系は複数開発されており、その検出系の中でも、多くの既報では最も高い特異性および検出感度であると報告されている検出系Aを用いている。しかしながら、本研究で用いた海外の試料に対して検出系Aでのファージ検出を試みたところ、検出できないことがわかった。つまり、検出系Aのみでの検出では、誤陰性となることが示された。これについて、当該ファージの遺伝子配列の多様性によるものと考え、検出系について検討した結果、検出系Aとあわせて検出系Bを用いることで誤陰性を防ぐことが可能であることが示唆された。これは、流行指標の開発においても、あらたに検討すべき課題であるが、当該ファージ検出を行うその他の研究にとっても有用な知見であると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響により進捗が遅れたため、初の研究実施計画を変更し、1年延長することとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在検討中の指標の有用性について検討をつづけ、本研究課題を遂行する。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により進捗が遅れたため、当初計画していた実験や研究発表が未実施のため。研究期間を1年延長ため、2023年度に残額を使用する。
|