2020 Fiscal Year Research-status Report
過剰に添加された重金属安定化キレート薬剤は最終処分場の安全弁か汚濁源か?
Project/Area Number |
20K04755
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
水谷 聡 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80283654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
貫上 佳則 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (90177759)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 有機キレート剤 / 最終処分場 / 都市ごみ焼却飛灰 / シリアルバッチ試験 / 浸出水 / 重金属 / 内水ポンド |
Outline of Annual Research Achievements |
キレート処理された焼却飛灰からの薬剤の溶出挙動を把握するために,乾式/湿式の排ガス処理を行った2種類の都市ごみ焼却飛灰に対して,ジエチルアミン系(DEA)/ピペラジン系(PIP)の2種類のキレート薬剤を添加した模擬処理灰を作成した。この試料に,液固比10の溶出試験を5回繰り返すシリアルバッチ試験を行い,キレート薬剤の溶出挙動を把握した。薬剤の添加率は1~15%と大きく設定した。得られた溶出液のpH,キレート薬剤濃度,金属類(Pb,Cu,Cd,Cr,Zn,Mn,Fe,Ca,Na)濃度,全有機炭素濃度を測定した。 キレート薬剤の溶出量は添加量の増加とともに増加したが,飛灰の種類で挙動が異なっていた。また薬剤溶出率は抽出1回目が最も高く,比較的速やかに溶出することが示唆された。 並行して実埋立地からの浸出水に含まれる有機キレート剤の実態把握も行った。主に都市ごみ焼却残渣を埋め立てた3カ所の海面処分場の浸出水・内水ポンド・接触酸化槽・硝化槽等から,2週間に1度,7ヶ月間に渡って採水し,DEAおよびPIPキレート剤の濃度を調査した。浸出水からは2.5~62 mg/Lのキレート薬剤が検出され,キレート処理飛灰から薬剤が溶出している可能性が高いと思われた。ただし内水ポンドから浸出水処理過程を経る中で,キレート薬剤は分解処理されていることも確認された。 またシリアルバッチ試験での重金属の挙動では,例えばPbの場合,薬剤を添加することにより1回目の抽出液での溶出濃度は著しく低下していたが,3回目以降では薬剤処理飛灰からより高濃度で溶出する例も確認された。すなわち長期的に見ると鉛の再溶出が起きている可能性があり,詳細な検討が必要であると思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
余剰に有機キレート薬剤を添加したキレート処理飛灰から,キレート薬剤が溶出する可能性があること,また余剰量が多いほど溶出量も増加することを,シリアルバッチ試験により明らかにすることが出来た。これは飛灰の種類やキレート薬剤の種類によらず起こることも確認できた。また,実際の焼却灰を中心とした埋立地においてキレート薬剤が溶出していることを,実浸出水の分析によって確認する事が出来た。 以上より,初年度としては充分な成果が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
キレート薬剤で安定化処理した処理飛灰を充填したカラム試験を行い,キレート薬剤の溶出挙動を把握する。また重金属類を含有する標準溶液を溶媒として通水し,溶出したキレート薬剤と重金属類が反応して安定化反応が起きるかどうかを確認する。 最終処分場の浸出水の実態把握としては,今年度は取り組めなかった陸上処分場を対象に,キレート薬剤が溶出しているのかを確認する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により,成果発表を予定していた学会がオンライン開催になり,予定と比べて旅費が余剰となった。2021年度は岡山でオンサイト開催が予定されており,そちらに参加する際に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)