2020 Fiscal Year Research-status Report
Fate of food poisoning causing Clostridium perfringens in water environment, and its disinfection.
Project/Area Number |
20K04756
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
橋本 温 県立広島大学, 生物資源科学部, 教授 (30332068)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ウェルシュ菌 / 糞便汚染指標 / cpe / 食中毒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、水循環システムでの食中毒の原因菌となるcpe遺伝子保有ウェルシュ菌の分布について再整理し、過去にデータ取得した河川および下水放流水からのcpe遺伝子保有ウェルシュ菌の分布とその負荷量等の収支を解析し、水系の人系糞便汚染指標としての意義に関する成果を論文として報告した。 加えて、本年度は、ウェルシュ菌食中毒の原因食品や汚染ルートの新たな可能性として、下水等の放流先の河川等の水系-農作物を想定し、まずはその影響を受けやすいと考えられる根菜類からウェルシュ菌および食中毒の起因となるcpe保有ウエルシュ菌の分離とその遺伝子解析を行った。 根菜類として、産地の異なる市販のジャガイモを対象に、その表面を界面活性剤添加滅菌リン酸緩衝液で洗浄し、洗液からハンドフォード改良寒天培地/嫌気培養法にてウェルシュ菌コロニーを得た。各コロニーを増菌培養し、得られた菌株からPCR法にてウェルシュ菌α毒素遺伝子(cpa)およびウェルシュ菌エンテロトキシン(cpe)の確認された65株について、そのcpe遺伝子および16S rRNA遺伝子のシーケンス解析を行った。cpe遺伝子のシーケンスでは、各菌株ごとの塩基配列の差はほとんど認められなかった。一方、16S rRNA遺伝子のシーケンス解析からは、大きく3つのグループに分類することができた。NCBIデータベース登録株等との比較では、一つのグループと食中毒患者分離株との間で高い相同性が確認された。 現段階では、根菜類分離株の検査数が限定的であるため、今後データ数を増加するとともに、河川や下水等の分離株の遺伝子情報との比較を行うことで、これらの関連性や汚染ルートの解明、食中毒の感染源としての意義などを検討してゆく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では、今年度は河川や下水等からのウェルシュ菌の分離とその遺伝子解析に一部取りかかっている予定であった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の流行によって、河川や下水等のサンプリング、大学の入構制限などによって、本来実施予定であった試験解析に支障を来し、入手の容易な根菜類からのウェルシュ菌の分離とその解析に力点を置いて研究を実施した。従って、当初予定よりやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の課題は、根菜類の調査、河川、下水等の調査、それらの総合的な解析と関連性の解析がある。 このうち、根菜類の調査については、分離菌株を増加させ、全体で150-200菌株程度について遺伝子解析をおこなう。加えて、より長い範囲の16S rRNA遺伝子を対象とした再検査を実施する。 また、河川、下水等の調査については、新型コロナウイルス感染症の動向を判断しつつ、根菜類-水系の関連性を評価するために十分な株数について検査を行う。 併せて、水系-根菜類でのウェルシュ菌の動態や食中毒との関連性について、遺伝子データベースに登録された食中毒患者由来株との比較などによって検討を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行によって、当初予定していた河川、下水等でのサンプリングが実施できず、加えて、学会等が中止となった。また、河川等の試料の解析についての遺伝子解析等が行えなかった。このため、当初計画していた旅費および物品費および遺伝子解析の委託費(その他)を使用せず、次年度使用額が発生した。 次年度にはこれらのサンプリング、解析等を実施する事で、翌年度分と併せて使用する。
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