2021 Fiscal Year Research-status Report
汎用性の高い湿度環境指標推定手法の開発と時空間分布評価
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20K04757
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
赤塚 慎 高知工科大学, システム工学群, 准教授 (80548743)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 可降水量 / 相対湿度 / MSM-GPV |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は,これまで開発してきたMSM-GPVデータを用いた高空間分解能の可降水量分布推定手法により90mメッシュで四国地方の可降水量を推定し,それを用いて四国地方の相対湿度分布を推定する手法を検討した. 可降水量を用いた相対湿度の推定は,可降水量と露点温度との関係(変換式)を求めることで可能になる.そこで,四国の気象官署において可降水量と露点温度との関係を求め,その関係を用いて可降水量を相対湿度に変換し,精度検証を行った.その結果,5kmメッシュのMSM-GPV相対湿度データよりも精度向上をすることができなかった.この理由として,可降水量は地表面から大気上端までに含まれる積算水蒸気量であるのに対し,相対湿度は地表面付近の大気中に含まれる水蒸気の割合の指標であるためと考えられた.そこで,MSM-GPVデータを用いて各気圧面間の水蒸気量を推定し,地上から何気圧面までの積算水蒸気量が地表面付近の相対湿度と関連が強いのかを検討した.その結果,地上から900hPa気圧面までの積算水蒸気量と地表面付近の相対湿度との相関が最も高くなることが明らかになった.この関係を用いて,地上から900hPa気圧面までの積算水蒸気量から地表面付近の相対湿度を推定し,その精度検証を行った.その結果,5kmメッシュのMSM-GPV相対湿度データと同程度の精度で推定可能であることが示された.また,可降水量から露点温度への変換式の係数は,四国の各気象官署において大きく異なる値となったが,地上から900hPa気圧面までの積算水蒸気量を用いることで,四国の各気象官署における違いが小さくなった. 以上から,地上から900hPa気圧面までの積算水蒸気量を用いることにより,90mメッシュの解像度で四国全体の相対湿度分布を5kmメッシュのMSM-GPV相対湿度データと同程度の精度で推定することが可能であることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は,可降水量から地表面付近の相対湿度を推定する手法の開発に重点的に取り組み,地上から900hPa気圧面までの積算水蒸気量を用いることにより,90mメッシュの解像度で四国全体の相対湿度分布を5kmメッシュのMSM-GPV相対湿度データと同程度の精度で推定することが可能であることが示された.このことから,四国における毎時の相対湿度分布図を作成できるようになった. さらに, 2014年から2021年までのGNSS可降水量を空間内挿することにより四国地方の毎時の可降水量分布を作成し,日平均可降水量や時間ごとの月平均可降水量の分布図を作成した. したがって,令和4年度は研究実施計画通り,「テーマ④ 湿度環境指標の時空間分布評価」に関する研究を重点的に取り組むことができる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,湿度環境指標の時空間変動評価を重点的に行う. まずは,地上から900hPa気圧面までの積算水蒸気量を用いて,四国における毎時の相対湿度分布図を作成し,昨年度から気象庁のアメダス観測点の一部で観測が開始された相対湿度データを用いて精度検証を行う.また,可降水量分布図および相対湿度分布図の適切な空間分解能を検討し,汎用性の高い湿度環境指標データを整備する. その後,相対湿度の日平均分布図や月平均分布図を作成し,相対湿度の各月,各時刻の平年値の分布図を作成する.最後に,これらの分布図を用いて,相対湿度の時空間分布の評価を行う. さらに,令和3年度に作成した可降水量の日平均分布図や月平均分布図との比較を行い,可降水量と相対湿度の時空間分布の違いを検討する.
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Causes of Carryover |
旅費による支出がなかったため. ストレージの増設などのための物品費に充当して使用する予定である.
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