2021 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation of repair time of building damaged by earthquake using automatic generation of logic network of repair schedule
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20K04768
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
岡野 創 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (40416863)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 工程論理ネットワーク / PERT / 地震被害 / 修復期間 / モンテカルロシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までは,損傷分布を所与として建物の修復期間を自動評価する方法の研究を行ってきたが,今年度は,入力地震動を所与とした修復期間の評価に取り組んだ。 入力地震動を所与として修復期間を評価するためには,1)建物の応答評価,2)部材の損傷評価,3)建物の修復期間評価,という段階を踏む必要があるが,各段階の評価には大きなばらつきがあり,これを無視することはできない。これらの変動要因を考慮するためには,確率変数に関する多重積分を行う必要があるが,部材数が多くなると積分の実行は不可能となる。そこで,本研究では,モンテカルロシミュレーション(以下,MCS)を用いて,これらの変動要因を考慮した評価を行うことにした。 具体的な方法は以下の通りである。まず,想定する地震動強さに適合する地震動波形群を入力地震動としてフレームモデルによる応答解析を行う。解析に用いる波形群の個数は現実的に実行可能な範囲(現状では数十個)で設定する。次に,応答解析結果から応答の中央値と共分散を求め,MCSで必要とするセット数(数百~数万)だけ中央値と共分散が適合する応答値セットを生成する。生成されたMCS用の応答値セットに対して, 部材毎に[0 1]の一様乱数と部材フラジリティを用いて損傷度を決定する。定まった損傷度分布に対して,建物の修復期間を評価する。 修復期間の評価は,前年度に検討した工程ネットワークの自動生成し,供給作業員数の最適化して最短工期を算定する手法を用いた。供給作業員数の最適化については,作業時間が共通するアクティビティが累積的に増加して影響期間が長くなり調整が困難になる事例が表れたことから,作業時間のアクティビティを自動的に再分割して回避するように改良を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,地震時の建物損傷による損失のうち,事業機会の喪失による損失につながる修復期間の評価手法を構築することである。修復期間の評価は工程を考慮する必要があるため,部材修復費の総和として概ね表すことができる修復費に比べて,評価の難易度が高い。また,想定される入力地震動に対して修復期間を評価するためには,建物の地震応答のばらつきや,応答に対する損傷発生のばらつきを考慮する必要があり,モンテカルロシミュレーション(以下,MCS)に試行の中で修復期間を評価する必要がある。 以上の認識に基づいて,初年度は修復の工程論理ネットワークを自動生成し,供給作業員数の制約の下で最短工期を求める手法の研究を行った。基礎的な理論検討は科研費に応募する前に済ませていたことから,目標は早期に達成され,その成果は建築学会構造系論文集に投稿し掲載(2020-09)された。 2年目にあたる本年度は,当初の目標であるMCSへの修復期間の評価の組み込みを行った。システムは,①複数の入力地震動波形に対するフレーム応答解析→②応答値の統計的な特性に適合するMCS用の応答値セットの生成,③応答値に対する損傷の決定,④損傷分布に対応する修復の工程論理ネットワークの自動生成,⑤供給作業員数の制約下での最短工期の評価,からなる大掛かりなものである。このうち,③④⑤は複数回実行される。実装において,⑤において研究実績の概要で述べたような問題が発生したが,改良を加えることにより解決された。開発した手法は,実在の建物に適用して実働することを確認した。 本年度の成果は年度内に論文作成を済ませており,次年度冒頭に建築学会構造系論文集に投稿する予定である。 以上より,概ね予定通りの進捗と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
地震による経済的な損失では,修復費のような直接的な損失だけでなく,間接的な損失も考慮する必要とされているが,これまでは間接的な損失に関連する修復期間の評価が困難であることから,予測的な立場から検討することができなかった。 本年度までの研究により,修復費と同じ枠組みの中で修復期間が評価できるようになったことから,次年度以降は,修復費に代表される直接的な損失と対比しながら,修復期間に伴う間接的な損失の重要度について試行的な検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により,学会発表がオンラインとなり,出張費等が必要なくなったため,本年度の使用予定額が減じた。次年度は,学会でパネラーとして対面参加するため出張費が必要となる。また,査読論文の掲載費などにも使用する予定である。
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Research Products
(2 results)