2020 Fiscal Year Research-status Report
偏心圧縮材を座屈補剛材として用いた新形式の補剛法による耐震改修方法の構築
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20K04779
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
熊谷 知彦 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (70376945)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 座屈補剛 / 軸力材 / 偏心圧縮材 / 座屈解析 / 座屈実験 / 変形制御機構 / 異種材料 / 接着接合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,圧縮軸力を受ける部材の曲げ座屈荷重増大のための偏心圧縮材を補剛材として用いた新形式の座屈補剛による耐震改修方法の開発および接着剤を用いた簡便な補剛材接合方法の構築である。本研究で提案する補剛形式は,補剛の対象となる部材に別の部材(補剛材)を沿わせて材端のみを接着剤で接合するのみで構成可能な形式である。本研究では研究期間3年間で数値解析および座屈実験により以下のことを明らかにする計画である。 1) 補剛すべき部材である主材と補剛材を軸方向中央部において一体化する機構の開発・提案 2) 主材と補剛材(木材,鋼材等)の接合方法として接着剤を用いた場合の補剛効果の検討 3) 種々の材料(鋼材,木材等)を使用した場合の補剛効果の検討 4) 外力として軸力・曲げが加わった際の座屈挙動の解明と補剛効果の検証 5) 本補剛形式を構造物に組み込んだ際の雪荷重等に対する座屈性状,地震時挙動の分析 6) 提案補剛形式の座屈補剛効果について体系的にまとめ,本補剛形式の設計手法,既存の部材への耐震補強の方法を提案する 研究期間1年目の2020年度においては,上記1)について開発・提案を進め,2)のための数値解析による検討および予備実験を実施した。具体的には下記の通りである。1)については,鋼製の主材の軸方向中央部に鋼棒を溶接し,その鋼棒にコイルバネを巻き付けることで,鋼棒により主材と補剛材からなる断面の一体化を図り,コイルバネにより補剛材拡幅方向への変形を補助する機構を提案し,その有効性について確認した。結果として本機構を導入しない場合に対して1.2倍に増加した。2)については,主材に平鋼,補剛材にベイマツを用いた試験体の接合にエポキシ樹脂接着剤を使用して接合した場合の補剛効果を座屈実験により検討した。接合部には1)と同様の鋼棒を溶接し,ベイマツに開けた孔に接着剤の充填する形式とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書における初年度の計画は,現在まで検討してきた新形式の補剛方法において対象とする主材断面形状,部材細長比,主材・補剛材の材料,主材と補剛材の剛性比,補剛材を接合するための接着剤,接着方法,接着面積,断面を一体化する機構,荷重条件(中心圧縮,圧縮・曲げ)等の条件を選定・提案すること,および,耐震補強を行うために既存部材への適用方法の提案を行うことであった。このことに対して,補剛に関する部材の材料,寸法等については,年度初めに決定することができ,また,断面を一体化する機構(変形制御機構)についても,鋼製の主材の軸方向中央部に鋼棒を溶接し,その鋼棒にコイルバネを巻き付ける形式を提案することができた。当初の計画には無かったが,変形制御機構を導入した場合の座屈性状についても数値解析を実行することで検討することができた。結果として,導入により1.2倍の座屈荷重の増加を実現できた。一方で,荷重条件としては中心圧縮のみを対象としたため,今後様々な荷重条件に対する検討を進める必要がある。また,既存部材への適用方法の提案については,主材に平鋼,補剛材にベイマツを用いた場合の数値解析結果を元にエポキシ樹脂接着剤を用いた簡便な接合部を開発し,予備実験ではあるものの実際の試験体を製作し,その座屈補剛効果を検証することができた。結果として,座屈発生前には数値解析と同様の補剛材の拡幅変形が確認され,座屈発生時においても接合部は破壊せず,最終的にベイマツが割れることで崩壊に至ることが確認できた。この知見を元に更なる改良を行うことを予定している。以上のような進捗状況より,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究計画は,引き続き数値解析による補剛効果の検証を行い,補剛効果の高い条件を明確にすること,本補剛形式のメカニズムを明確にするため,理論解析による座屈荷重と数値解析結果の比較検証を行うこと,座屈実験による実挙動での補剛効果の検証し,実挙動の観点から提案する補剛形式の妥当性を検証することである。 この計画に対して,2020年度提案した断面を一体化する機構(変形制御機構)を用いた場合のより補剛効果の高い設計条件を探ると共に,実施した座屈実験の結果を元に変形制御機構を導入した新たな試験体を設計し,実挙動での補剛効果についても検討する予定である。なお,座屈実験を実施したことで,数値解析では考慮できていなかった木材の破壊形式が明らかとなったため,このことを考慮した数値解析モデルの作成,破壊形式を考慮した接合部,試験体の設計を進める予定である。また,2022年度に計画している三次元構造解析プログラムによる提案する補剛形式を組み込んだ構造物の座屈性状の分析についても,今年度中に具体的な対象構造物を選定する予定である。
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Research Products
(1 results)