2020 Fiscal Year Research-status Report
Earthquake Response Control of Wooden Structures by using High-damping Rubber
Project/Area Number |
20K04792
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
中村 豊 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (40830477)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 木造住宅 / 木造軸組構造 / 耐震等級3 / 制振ダンパー / 震度7 / 2016年熊本地震 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)耐震等級3の2階建て木造住宅の終局耐震性に関する研究 本研究では耐震等級3の性能を持つ住宅について、実地震波に対する終局耐震性能を評価した。2階建て軸組構造の木造住宅の設計図書を基に耐震等級3超の解析モデルと、存在壁量を減らした耐震等級3相当の解析モデルを作成した。この2モデルに2016年熊本地震前震(KiK-net益城)の地震波を入力して大破から倒壊までの時刻歴応答解析を行い、終局耐震性能の検証を行った。観測波形をそのまま入力した場合は、耐震等級3超のモデルであっても倒壊に至る結果となった。0.85倍入力の場合、耐震等級3超モデルでは、最大層間変形角が1/26を超え、倒壊はしないものの大破に至ることが分かった。耐震等級3相当モデルでは、0.75倍入力でねじれ振動により倒壊に至った。耐震等級3超及び3相当の住宅であっても震度7相当の地震に対しては、壁量の少なくなる玄関付近や南面における応答が大きくなり、倒壊に至ることが明らかとなった。 (2)制振ダンパーによる木造住宅の耐震性能向上に関する研究 本研究では、耐震等級3超の2階建て軸組構造の木造住宅に住宅用制振ダンパーを設置して、その地震時応答低減効果を応答解析モデルの時刻歴応答解析により検証した。ここで用いた制振ダンパーはリリーフ機構を持つ住宅用の小型オイルダンパーである。地震波形は2016年熊本地震前震(KiK-net益城)の0.85倍入力とし、 ダンパーを設置しない場合、1階X方向にダンパーを4台、または7台設置した場合について応答解析を実施した。ダンパーを設置しない場合に比べて、ダンパーを7台設置した場合は、1階の最大層間変形角が1/15から1/30へと半減できることが分かった。また、単に存在壁量を増やした場合の解析モデルとの応答比較から、ここで採用した制振ダンパーの等価壁倍率が3~4相当であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.実際の2階建て軸組木造住宅についての耐震性能の検証を実施:大手住宅メーカーの協力を得て、耐震等級3で設計・施工された住宅の設計図書を入手でき、その詳細な地震応答解析モデルを作成して、研究を進めることができている。これにより、木造住宅の終局耐震性能について実用面での貴重な知見を得ることができている。 2.木造住宅用の制振ダンパーの応答低減効果の検証を実施:現実に市販されている住宅用小型オイルダンパーについて、その力学特性を正確に反映した地震応答解析を進められている。上述の住宅の地震応答解析モデルを用いてダンパーの応答低減効果を明らかにしており、制振設計上も有用な研究成果を得られている。 3.中層木造建築の構造設計法の検討、地震応答解析の準備:大断面の集成材を用いた3層以上の木造ラーメン構造の構造設計法の関係資料準備、地震応答解析プログラムの整備を実施済みである。 以上のことから、現在までの研究はおおむね順調に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.2021年度の研究推進方策 「中層木造建築の耐震性能に関する研究」:大断面の集成材を用いた中層(3層以上)木造建築について、現行の構造設計法に基づいてモデル建築物の設計を行い、その耐震性能に関する研究を行う。モデル建築物について解析モデルを作成し、過去の極大地震動に対する地震時応答解析を行い、その耐震性能の評価を行う。また、オイルの粘性抵抗を利用した制振ダンパー、高減衰ゴムを用いた制振ダンパー等の応答低減効果について検討を行う。これらの検討を通じて、中層木造建築物の終局耐震性能を明らかにし、制振ダンパーを用いる場合の実用的な構造設計法に関する検討を行う。 「2階建て木造住宅への2層間またぎの制振ダンパー設置方式に関する研究」:建物の層間に制振ダンパーを設置する従来の方式に対して、2層間にまたぐ形で設置した制振ダンパーの効果について、2階建て木造住宅の地震応答解析モデルを用いて検討を行う。この検討を通じて、最適な制振ダンパーの設置方法・制振架構についての検討を行う。また、新しいダンパーの設置方法に対応し、剛性と減衰効果を考慮した等価壁倍率の設定法についての考え方を整理し、試算を行う。 2.2022年度の研究推進方策 「制振架構・制振ダンパーの等価壁倍率の評価と構造設計法に関する研究」:架構への設置方法と制振ダンパーの剛性と減衰効果を考慮した等価壁倍率による構造設計方法を確立し、試設計モデルについて解析を行い、その妥当性を検証する。 「中低層木質系建築物の極大地震に対する終局耐震性能の評価」:現行の構造設計法による中低層木質系建築物の極大地震に対する終局耐震性能を明らかにする。また、最適な制振架構・制振ダンパーを採用した場合の応答低減効果について明らかにする。
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Causes of Carryover |
コロナ感染拡大に伴い、出張・外部機関との打ち合わせ等が延期となったこともあり、千円未満の僅かな次年度使用額が発生した。従って、翌年度分の助成金の使用計画については当初の予定と変更はありません。
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