2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K04800
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
輿石 直幸 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00257213)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 土蔵 / 伝統土壁 / 左官 / 材料 / 調合 / 竹 / 縄 |
Outline of Annual Research Achievements |
土蔵における左官技術を対象とし、令和3年度は以下の研究を行った。 1.既存文献の調査:令和2年度に調査した国指定重要文化財等の「保存修理工事報告書」32件の整理・分析を進めた。 2.既存土蔵の実地調査ならびに壁体層構成および材料・調合の分析:昨年度と同様、既存土蔵の調査は見送った。 3.要素試験体による左官技術の評価:上記2における壁体層構成および材料・調合の分析により、土蔵に用いられる壁土については、ある程度の知見が得られたが、下地については物性の情報がほとんどない。そこで、本年度は下地に関する3つの実験を行った。【実験1】竹の物性試験であり、間渡竹2種(丸竹と割竹)および小舞竹2種(いずれも割竹)を対象とし、20℃・65%RHで水分平衡状態とした後、スパン300mmの3等分点載荷の曲げ試験を行い、応力とたわみの関係を測定して弾性係数を求めた。【実験2】3種類の縄の物性試験を行った。わら縄は、直径が4mm程度であり、2本のストランドが撚られており、ストランドは長さ70cm程度の素線が1~4本撚られていた。しゅろ縄は、直径が3mm程度であり、2本のストランドが撚られており、ストランドは長さ250mm程度以下の素線が1100本程度撚られていた。一般に使用に適さないとされているビニール縄は、直径が5mm程度であり、3本のストランドが撚られており、ストランドは長さが連続したフィルム状であった。引張弾性係数は、わら縄が140N/mm2、しゅろ縄が27N/mm2、ビニール縄が78N/mm2であった。【実験3】これらの竹と縄を用いて格子状に編んだ30cm角の小型下地試験体を作製し、面外方向に加力して剛性を求めた。縄3種類、格子の隙間間隔2水準、縄の結び方2種類(千鳥編・巻き編)を実験要因とし、これらを組み合わせた24の試験体について一定荷重を加えたときの変形量を測定して面外剛性を比較した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度の遅れを取り戻すまでには至らなかったため、やや遅れている。 令和3年度は、もっとも遅れている上記の項目3の要素試験体による実験を優先して行った。令和2年度、層間剥離を抑制するための下地処理方法として、①砂ずり(粘土質の層間に砂質の層を挟む)、②ヒガキ(下層に鏝で凹凸を付ける)、水湿し(乾いた下層に散水してから塗る)の効果を確認した。今年度は、同様の目的で行われる、下げ縄、層内に塗り込む縦縄・横縄などの縄を使った技術を評価する予定であったが、縄の物性情報がなかったため、下地に使用する竹の物性も併せ、これらの物性試験を行った。 次年度は、縄を使った層間剥離防止技術の評価と、項目1および項目2の未完成部分を仕上げる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、既存文献調査および実地調査をもとに、既存土蔵の軸組、壁下地および塗り層構成の図面化し、各土蔵における塗付け工程の比較・分析を行う。また、令和2年度の実験をもとに、引き続き要素試験体による評価を行い、練り土の調合に応じ、層間剥離防止に効果的な下地調整、砂ずり等の条件を整理する。また、令和3年度の実験をもとに、下地に緊結した下げ縄や層内に塗り込む縦縄、横縄による塗付け層の層間剥落防止効果について評価を行う。 令和4年度は得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う
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Causes of Carryover |
令和2年度と同様、新型コロナウィルス感染拡大により、既存土蔵の実態調査が実施できず、出張旅費の支出がなかったため。令和4年度に、実地調査を行う。
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