2020 Fiscal Year Research-status Report
中性子線散乱減衰を原理とした鋼板内のコンクリート欠陥の新規評価手法に関する研究
Project/Area Number |
20K04801
|
Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
瀬古 繁喜 愛知工業大学, 工学部, 教授 (50507259)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | コンクリート / 欠陥 / 散乱型中性子線測定装置 / 遮へい材 / 減速材 / 測定範囲 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、散乱型中性子線測定装置の仕様について実験検討を行うために次のような装置を制作した。底板を厚さ2mmのステンレス製とし、検出管の下に減速材を設置するために底板を2重構造とした。底板上の中央には密封された中性子線源をステンレス製の線源ホルダに入れて配置し、線源の両側には25mmの間隔で熱中性子の検出管として直径25.4mm×長さ157.4mmの3He比例計数管を平行に配置した。2重構造の底板には減速材が厚さ15mm程度まで設置できるようになっている。 2、散乱型中性子線測定装置で鋼板を介してコンクリートを測定する場合の測定可能な範囲は、測定装置にポリプロピレンの減速材を使用した場合には、減速材の厚さ 5mmを境にしてRIカウントの増加傾向が変わるため、減速材の厚さを10mm程度以上にすると測定範囲の感度が向上することが実験により確認できた。なお、減速材の候補としてカーボンや重水等も検討したが、ポリプロピレン樹脂に比べて精度向上の効果はみられなかった。ポリエチレン樹脂はポリプロピレン樹脂とほぼ同程度の効果があることが分かった。 3、散乱型中性子線測定装置でコンクリートを対象にして測定する場合には、厚さ方向で150mm以内程度が有効であることが分かった。二つのコンクリート被験体の間の距離を変える実験を行ったところ、空間の距離が160mm以上では計数率比(標準の中性子線数量に対する測定された熱中性線数量の比)が変化しなくなるため空隙を検知する範囲は160mmまでと考えられる。また、空隙幅160mmまでであれば定式化が可能であり、計数率比は空隙の幅の二乗で減衰することが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、散乱型中性子線測定装置の仕様を検討する装置は、減速材の材料種類や厚さを変えて設置でき、その効果を確認できる水準で制作できた。 2、速中性子を減速して熱中性子に変換する減速材として、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂が有効であり、検出管の下に設置する場合の厚さとして10mm以上の場合にRIカウントの増加傾向への効果があることが把握できた。 3、コンクリートを対象として測定する場合には厚さ方向で150mm以内程度、コンクリートの間に空隙を設けた場合には空隙の幅方向で160mmまでが今回検討する散乱型中性子線測定装置の測定範囲であることが分かった。 以上、当初予定した目標に対しては概ね順調に到達できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
1、中性子線源および検出管の周囲に配置し、速中性子や熱中性子の出入りを制御する材料として、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂のほかに、ホウ素樹脂やホウ素ゴム、カドミウム等の材料を取り上げて、中性子線の遮蔽性能や反射性能などを実験的に評価して選定する。 2、検出管の新たな仕様として、現在使用している直径1inch×長さ5inchの棒状の検出管に代えて、直径2inch×高さ2inchで立方体に近いイメージの円筒型で3Heガスの濃度を高めた検出管を採用し、検出部の小型化と応答性能の改善による測定感度への効果について実験的に評価する。 3、中性子線の検出範囲を制御することができる材料を選定して装着した測定装置を用いて、鋼製型枠の模擬試験体に模擬欠陥を設置し、コンクリートを打ち込んだ状態における欠陥の大きさ等に対する測定値の変化の精度を実験的に確認する。
|
Causes of Carryover |
(理由)次年度使用額(繰越額10万円)については、長期間の納期が予想される熱中性子検出管の購入を前倒ししたため、当初計画を修正した分が余剰となった。 (使用計画)1、次年度使用額(繰越額10万円)については、中性子線の減速材や遮へい材の評価実験を勢力的に実施していくための実験補助やデータ整理に充当していく予定である。2、当初は初年度の導入を計画していた放射線挙動を数値解析するワークステーションの導入を実施し、実験の遂行に対しては研究費の使用計画の大きな変更はない予定である。
|