2020 Fiscal Year Research-status Report
いつでも聴き取れるを実現する屋外拡声システムの分散配置デザイン
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20K04807
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
佐藤 逸人 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (30346233)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 防災行政無線 / 屋外拡声システム / 分散配置 |
Outline of Annual Research Achievements |
防災情報を提供する屋外拡声システムは聴こえにくいという問題がある。これを回避する方法として,スピーカをできるだけ多く分散配置し,必要最低限の音圧レベルで拡声する方法の確立が本研究の目的である。 2020年度は,音の伝搬距離と気象条件による音圧レベルのばらつきの対応関係について,測定システムの構築と試験測定を行った。測定システムについては,(A) 太陽光パネルを用いた無人測定システムと,(B)スマートフォンを用いた簡易測定システムの2つを構築した。 (A)のシステムは,太陽光パネルと,シングルボードコンピュータ,防水マイクロフォン,気象センサー,携帯電話回線による通信機能の組み合わせからなる。試作システムを2つ作成し,そのうちの1つを2020年12月から2021年2月までの間,屋外に設置した。測定対象は,設置した地域において平日は17時,休日は12時から放送されるミュージックチャイムとした。設置期間内において,(A)のシステムは想定通りに動作し,録音した放送と放送の元音源を相互相関分析することにより,エコータイムパターンを求めることができた。 (B)のシステムは,スマートフォンのWEBブラウザ上で動作するWEBアプリとして開発した。現場での有人測定となるが,スマートフォンのマイクロフォンによる屋外拡声システムからの放送の録音,GPS機能による位置情報の取得,カメラ機能による周辺の画像の取得,携帯電話回線による取得データのサーバーへの送信が可能である。月1回の試験放送を対象として,試験測定を2回実施した結果,WEBアプリの不備あるいは測定者のミスにより,測定が失敗した例があったが,想定したデータの取得は可能であった。(A)と同様の方法でエコータイムパターンを求め,録音した放送の聴感印象と比較した結果,響きの長さやロングパスエコーの有無といった点で一致が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の遂行に必要な屋外拡声システムの長期定点測定のためのシステム構築が順調に進んでいる。また,測定に協力いただける自治体も目処がついている。以上の状況から,研究はおおむね順調に進展していると評価した。ただし,COVID-19感染拡大の影響により,測定地点の現地視察ができなかった。今後もCOVID-19感染拡大が続くようであれば,長期定点測定や,正常性バイアスを打ち破るために必要な音圧レベルを明らかにするための心理実験の開始が遅れるなどの影響が想定される。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19感染拡大の状況を見ながらになるが,屋外拡声システムの長期定点測定(テーマA)の準備を進める。また,スマートフォンを用いた測定システムについては,2020年度の試験測定で確認された不備が生じないようWEBアプリのアップデートを行う。2021年度は,長期定点測定だけでなく,正常性バイアスを打ち破るために必要な音圧レベル(テーマB)とエコーを軽減するための屋外拡声システム設計方法(テーマC)にもそれぞれ着手する。テーマBについては,刺激とする音声とサイレンの作成を行う。サイレンについては実際に使用されている音源を入手する。音声については,話者や話し方によって緊迫感が変わることが知られており,既往の研究を踏まえて複数の刺激を準備する。被験者調整法による予備実験を実施し,緊迫感を感じ始める放送音の音圧レベルをおおまかに把握する。テーマCについては,これまでの研究代表者が開発してきた音線法による幾何音響シミュレーションの精度を向上させる。具体的には,スマートフォンを用いた測定システムによる測定で得られたエコータイムパターンとシミュレーション結果を比較検討することにより,建物等の反射係数や拡散係数を最適化する。COVID-19感染拡大によりテーマAやBの進行が停滞する場合は,テーマCに注力して研究を進める。
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