2020 Fiscal Year Research-status Report
浮遊細菌数とエンドトキシン量に基づく室内のグラム陰性細菌曝露リスクの把握
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20K04822
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
石松 維世 産業医科大学, 産業保健学部, 准教授 (40289591)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エンドトキシン濃度 / 浮遊細菌数濃度 / PM2.5 / 衝突型PM2.5サンプラー / PM2.5用直進型サイクロン |
Outline of Annual Research Achievements |
PM2.5中浮遊細菌数濃度とエンドトキシン(ET)濃度を確実に測定できる捕集条件を見出すため、2種類の実験を行った。捕集に使用したフィルターの素材は、ニトロセルロース混合エステルである。 1.衝突型SPM10/2.5サンプラーとPM2.5用直進型サイクロン式サンプラー(新規開発)を使用し、PM2.5捕集サンプラーの見直しを検討した。フィルターは0.8μm孔径とした。細菌数濃度では、両サンプラー間の一次回帰式の傾きはほぼ1、正の相関(r=0.93)があり、差は認められなかった。一方ET濃度の相関性は高かったが(r=0.84)、一次回帰式の傾きは0.48と直進型サイクロンの濃度が低かった。 8時間と24時間の捕集時間を検討したところ、細菌数濃度では捕集時間による両サンプラー間の傾きは変わらず、相関性は24時間捕集が若干低くなった(r=0.79)。ET濃度は、24時間では定量下限値を下回らず、両サンプラー間の相関性も良好になったが、傾きは1を下回った。 2.総粉じん中とPM2.5中の細菌数濃度とET濃度について、0.45μmと0.8μm孔径のフィルターを用いて、捕集条件見直しを検討した。細菌数濃度は、総粉じん中では両フィルター間の相関性は高く(r=0.95)、一次回帰式の傾き1.95より0.45μm孔径の濃度が約2倍となった。一方、PM2.5中の相関性は低く、回帰式の傾き0.69と総粉じん中とは異なっていた。ET濃度は、PM2.5では0.45μm孔径で定量下限値を下回ることがあったが、総粉じん中、PM2.5中ともに両フィルター間の相関性は高く(r=0.99)、回帰式の傾きは共に約1であった。 以上より、新規の直進型サイクロンは現況の衝突型と変わらず、またフィルター孔径からの条件見直しでも測定値に大きな向上は認められなかったため、従来の条件での捕集を継続することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた通り、これまで使用していた衝突型SPM10/2.5サンプラーと新規開発のPM2.5用直進型サイクロンによる細菌数濃度およびET濃度の比較と、孔径の異なるフィルターによる総粉じんおよびPM2.5中細菌数とETの濃度比較を実施し、捕集条件の再検討を試みた。 衝突型と直進型サイクロンの細菌数濃度については、捕集時間に関わらず1対1の関係性が得られ予想通りであったが、ET濃度は予想とは異なり直進型サイクロンの方が低くなっていたため、新たな研究テーマが見出された。しかしET濃度は、捕集時間が長いほど、すなわち浮遊細菌量が多いほど確実に測定できることがわかった。 サンプリングに使用するフィルターの見直しでは、使用するポンプとフィルターの圧力損失の問題から、素材の見直しではなく孔径の見直しを行った。その結果、総粉じん中浮遊細菌数濃度は孔径0.45μmの方が約2倍高くなったが、PM2.5中では両フィルターの相関性は低く明確な関係性はなかった。ET濃度については、総粉じん中、PM2.5中ともに高い正の相関性があったが、両フィルターの濃度はほぼ1対1であり、フィルター孔径の差は認められなかった。 以上より、実験データから得られた結果は当初の予想とは異なっていたが、捕集条件の見直しについては十分なデータが得られたと考え、これまでの捕集条件を継続することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の結果より、サンプラーおよび捕集条件の変更は行わず、これまでの条件を継続してデータの蓄積を行うことととした。すなわち、総粉じんはオープンフェースサンプラー(吸引流量20 L/min)、PM2.5は衝突型SPM10/2.5サンプラー(吸引流量2.5 L/min)、捕集フィルターは0.8μm孔径セルロース混合エステルメンブランフィルター、捕集時間8時間である。 2021年度は、捕集場所を過去の測定から一部変更し、室内は捕集時に在室者がいる機会が多い場所を選定して、ヒトの影響を加味したデータを採取する。これにより、浮遊細菌数とET濃度に変化が出ることが予想され、外気の影響だけでなく室内の影響も考えることができる。 また、大腸菌を用いて菌数とET量を測定し、両者間に関係性があるか否かを調べ、菌数とET量との換算が可能かどうかを検討する。その際、大腸菌の培養条件や菌の洗浄条件なども重要と思われるため、まず、培養日数を固定し、1回培養で得られた大腸菌について調べていく計画である。 換算ツールができない場合には、実測データをもとにして、室内環境におけるグラム陰性菌曝露リスクを考える。
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Causes of Carryover |
2020年4月中旬から6月まで在宅勤務命令のため実験が中断し、計画を縮小したため試薬等の購入が抑えられた。また、成果発表や情報収集を予定していた学会が開催されなかったり、リモート開催などになったため、出張もできず旅費の使用がなかった。そのため、予想外の繰越金が発生した。 2021年度は、月1回の捕集を行い、細菌数濃度とET濃度の測定を計画している。これにより、測定検体数が多くなることが予想されるため、繰越金を加えて、計画外ではあるがET測定装置を追加購入して増設し、効率的なデータ採取を行う計画である。また、測定検体数が多くなると、使用する試薬量が増えるため、その購入も行う。旅費については、演題登録予定の学会がリモート開催またはハイブリッド開催になるものが多いため、2020年度と同様に支出は計画よりも縮小すると思われる。
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Research Products
(1 results)