2020 Fiscal Year Research-status Report
Fundamental research on transmission dynamics of influenza virus in indoor environment
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20K04826
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
嶋崎 典子 国立感染症研究所, インフルエンザウイルス研究センター, 主任研究官 (80466193)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エアロゾル / 飛沫 / インフルエンザ / COVID-19 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、病室等において、インフルエンザに代表されるウイルス性呼吸器感染症の感染源伝播を遮断するための感染対策の一助になることを目指して、室内環境におけるウイルスの伝播動態の解明に向けた基盤研究を行う計画である。 2020年度は、インフルエンザ罹患者のくしゃみを模擬した感染源発生モデルの作製を行った。具体的には、模擬唾液とインフルエンザウイルス粒子を用いて、既報のくしゃみの粒度分布に近いエアロゾルが発生するネブライザを数種類検討した。ここで言うエアロゾルとは、飛沫・マイクロ飛沫・飛沫核を包括した、空気中に浮遊する微小な液体または固体の粒子を指す。発生したエアロゾルの粒度性状解析は、パーティクルカウンターを用いて計測した。その結果、ネブライザの構造に依存する場合もあるが、模擬唾液の成分変化によって、エアロゾルの粒度分布が変化することがわかった。くしゃみの他に咳や大声の会話などに似た様々な粒度分布のエアロゾルが作製出来た。更に、フィルター素材に捕集されたウイルスエアロゾルの粒子状態の観察を電子顕微鏡等で行うことによって、供試したウイルスエアロゾルの粒度が確認出来た。 また、2020年度はインフルエンザが殆ど流行しない一方で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者数が桁違いに多く、病院や介護施設でのCOVID-19クラスターが多数発生していたため、実環境での呼吸器系ウイルスの伝播事例として、公表された情報の収集を行った。感染対策についても社会全体として喫緊の課題であったため、国が推奨する対策のうちCOVID-19で特に強調されるようになった換気に関して、長時間過ごす公共空間の換気状況の実態を簡易計測調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
人間の実環境におけるインフルエンザ感染事例について環境調査や分析等を行い、因子解析や仮説検証することも計画していたが、本年度はインフルエンザが殆ど流行しなかったため、この部分の実施が困難となった。
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Strategy for Future Research Activity |
インフルエンザ罹患数の激減状況を鑑みると、研究対象をインフルエンザだけに限定していては、今後、実環境でのウイルス伝播事例の検証が不十分になることが予想されるため、現在国内最大規模のウイルス性呼吸器感染症であるCOVID-19も研究対象に含めて、研究を進めることとする。特に、変異ウイルスの影響は、インフルエンザでもワクチン株選定において絶えず問題になってきたように、COVID-19において、人々へのワクチン接種がはじまり、中和抗体をもつ人数が増える環境下で、ワクチンで誘導された抗体の変異ウイルス中和能がウイルス伝播にどのように関わってくるか調べる必要があると考え、実態把握を試みる。
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Causes of Carryover |
物品費については、年度末納品等にかかる支払いが、令和3年4月1日以降となったため。当該支出分については次年度の実支出額に計上予定であるが、令和2年度分についてはほぼ使用済みである。 また、COVID-19緊急事態宣言等により、海外学会への渡航参加が全く出来なかったことや、インフルエンザ罹患数の激減により、インフルエンザ感染事例に関する解析作業が殆ど無かったため。生じた次年度使用額の一部は、次年度に追加を予定している研究分担者に配分する計画である。
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Research Products
(2 results)