2022 Fiscal Year Research-status Report
Fundamental research on transmission dynamics of influenza virus in indoor environment
Project/Area Number |
20K04826
|
Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
嶋崎 典子 国立感染症研究所, ウイルス第三部, 主任研究官 (80466193)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 淳子 地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立医療センター中央市民病院(第1診療部、第2診療部、第3診療部, 中央市民病院, 副医長 (10704710)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | インフルエンザ / ウイルス伝播 / COVID-19 / ウイルス変異 / 中和抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、病室等の室内環境における、インフルエンザやCOVID-19のウイルス伝播動態の解明に向けた基盤研究を行うことを目的とする。伝播に影響する因子の1つとして、宿主の保有抗体量に着目し、複数の施設のワクチン接種した職員を対象に、血清中のワクチン株と変異株に対する中和抗体価を調べ、ブレイクスルー感染の有無とあわせて、実態把握を試みた。 COVID-19の場合、ワクチン接種者の中和抗体価は、個人のバラツキ幅が大きく、ワクチン接種後から経時的に大きく低下しており、その程度はインフルエンザワクチンより大きかった。COVID-19ワクチンで誘導された血清中の抗体は、流行の主流であるオミクロン株との反応性が低下していた。2022年度は日本国内でCOVID-19がこれまでで最も流行したため、本研究参加者の中でもブレイクスルー事例が多発した。感染推定場所は自宅で同居家族からというケースが多かったが、経路不明も多かった。ブレイクスルー感染した人から可能な限り唾液検体あるいは鼻水検体を採取し、検体中のウイルス量をPCRで定量したところ、発熱レベルとは相関が見られなかったので、自宅療養中の感染対策は発熱を目安にすることなく一定の対策が必要であると示唆された。 一方、インフルエンザについて、2022年度は日本国内で若干流行(主としてH3N2型)があったものの、抗体調査参加者においては、インフルエンザのブレイクスルー感染事例は発生しなかった。大部分の参加者のH3N2ワクチン株で誘導された抗体は、H3N2の流行代表株とよく反応しており、また経時的にも維持されていた。過去に発生したブレイクスルー感染の検体を分析した結果、分離ウイルスは当時主流行だったB型山形系統であることやワクチン接種による抗体上昇が少なかったことが判明したので、環境情報とあわせてウイルス伝播のシミュレーションに取り組んでいる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度からCOVID-19も研究対象に含めて研究を進める計画に変更したところ、ブレイクスルー感染事例および濃厚接触事例が当初予想より多く発生したため、検体を採取して感染後の抗体変化やウイルス変異株などの分析を進めるのに、予想した以上の時間がかかっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ブレイクスルー感染事例および濃厚接触事例の分析を進める。また、室内伝播には人の行動が影響する可能性も考えられたため、抗体調査参加者の感染対策行動について、アンケートによる意識調査結果をまとめる。抗体保有状況やブレイクスルー事例の環境情報とあわせて総合的にウイルス伝播の影響因子を考察する。
|
Causes of Carryover |
研究期間を延長したため。延長に関わる支出分については次年度の実支出額に計上予定である。
|