2023 Fiscal Year Annual Research Report
Fundamental research on transmission dynamics of influenza virus in indoor environment
Project/Area Number |
20K04826
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
嶋崎 典子 国立感染症研究所, ウイルス第三部, 主任研究官 (80466193)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 淳子 地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立医療センター中央市民病院(第1診療部、第2診療部、第3診療部, 中央市民病院, 医長 (10704710)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | インフルエンザ / COVID-19 / ウイルス変異 / 中和抗体 / ウイルス伝播 / エアロゾル |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、病室等の室内環境における、インフルエンザやCOVID-19のウイルス伝播動態の解明に向けた基盤研究を行うことを目的とする。伝播に影響する因子の1つとして、宿主の保有抗体量に着目し、ヒト倫理審査の承認を得て、ワクチン接種者のワクチン株や変異株に対する血清抗体価やブレイクスルー(BT)感染の有無、BT感染者から採取したウイルスを調べ、実態把握を行った。 COVID-19では、研究参加者の約25%にBT感染が見られた。感染推定場所は自宅で同居家族からというケースが多かったものの、経路不明も多かった。また、中和抗体価を調べる試験の中で、部分的に中和能が減弱して変異ウイルスの出現を許容する現象が見られ、ワクチン株(武漢株)の変異を誘発するヒト血清の属性は、その殆どがワクチン接種のみ由来であった。この試験管内で起こった変異ウイルスを解析すると、市中流行株と同様の変異が入っており、ワクチン接種者の抗血清が市中株の変異を促した一因である可能性が示唆された。 一方、インフルエンザでは、研究参加者にBT感染事例は発生しなかった。そこで、過去のBT感染事例について、BT感染者の抗体価や採取ウイルスを分析したところ、当時流行したウイルスが分離されると共に、ワクチン接種による抗体上昇が少なかったことが判明した。更に、事例発生場所と推定される室内でのウイルス粒子の伝播動態を模擬的に実験検証するため、既報のインフルエンザ患者の呼気と同じような、5μm以下にウイルス遺伝子を多く含むエアロゾルの作出を試みた。模擬唾液と不活化インフルエンザウイルスを用いてチャンバー内で人工的にエアロゾル化し、12段アンダーセンサンプラーで詳細に粒径分布を測定したところ、ウイルス遺伝子が5μm以下にピークを持つエアロゾルが作製できた。インフルエンザウイルスの室内伝播をトレースするための感染源モデルが開発できたと考える。
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