2021 Fiscal Year Research-status Report
瀬戸内海沿岸部の近代化にともなう土着型建築生産技術の盛衰
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20K04832
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
牛島 朗 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (40625943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱 定史 山形大学, 工学部, 助教 (40632477)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地質 / 地形 / 近代産業 / 花崗岩 / 石柱 / 構法 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は,初年度に続き新型コロナウィルス感染症の影響もあり,主な活動範囲を山口県内の事例2箇所を中心とした現地調査及びデータの解析作業を実施した。 1つ目は,周南市の離島「大津島」での石柱構造物に関し,現在まで屋根架構(上部構造)を保持する計8棟について,建築学的観点から平面図・断面図・架構図等の各種図面を採取するとともに,建築構法に関する専門家である共同研究者の協力も得ながら,3D解析モデルの作成を試みている。石材に加え,現地で採取される自然素材等異素材の組み合わせなど,石柱構造物の実態を把握する上で必要な要素・接合方法等に関する整理及びモデル化を行った。近代石材業の発展が独自の石柱構造物を生み出したと言えるが,構法的観点からは建築物ごとの個別性(1棟1棟異なる仕様)の一端が示された。 2つ目は,宇部市に残存する炭滓レンガの建築的な特性を把握するにあたり,地域特有の素材である炭滓レンガ製造と密接に関わる宇部の工業化の歴史を整理し,都市史的なアプローチから宇部という場所の特性の検証を試みた。その結果,地元資本の集積,地下埋蔵資源の活用といった地域独自の要素と都市化との関係を整理している。宇部の近代化は,これまで石炭業の発展を中心に語られてきたが,前段階となる農業生産主体の空間構成・地域組織の在り様がその後の都市化にも多大の影響を及ぼしていたことが示された。 上記2件の調査成果について,それぞれ現時点の整理内容を日本建築学会中国支部研究発表会において報告を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症の影響が長引く中で,現地調査における行動制限もあり,対象としている建築物に関わる居住者などとの接触機会を最小限に留めざるを得なかった。今後,査読論文等として成果を取りまとめるとともに,学術的価値を向上させる上では,関係者への詳細なヒアリングや追加の実地調査も検討する必要がある。また,共同研究者の現地調査機会もまん延防止等重点措置期間と重なり,十分な検証を行えていない面もある。その為、次年度に向け,必要となる作業を再整理した上で,円滑な研究計画遂行につとめたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題で主題とする土着型の建築生産技術解明には,詳細な対象建築物の調査及び建築関与者への聞き取りが不可欠となる。その為,現在までの進捗状況を加味し、3年目となる令和4年度は,新型コロナウィルス感染症の状況も慎重に見極めつつ,現地調査の機会の確保を図るとともに,各調査において効果的に必要となる情報を入手するため,共同研究者間のオンラインを含めた事前打ち合わせ機会を増やし,充実した調査に繋がるよう準備を行う予定である。また、これまで収集したデータに関する取りまとめ作業を並行して実施することで,研究計画の円滑な実施につとめたい。
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Causes of Carryover |
初年度に引き続き,新型コロナウィルス感染症の影響により,当初予定していた現地調査に関し,まん延防止等重点措置期間と重なる時期があり,共同研究者と合同での調査機会が制限された。その為,年度内の旅費執行に支障をきたしている。次年度に延期する形で,改めて現地調査機会を設けるとともに,研究成果の取りまとめに向けた作業を並行して実施し,研究計画の遂行につとめたい。
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