2023 Fiscal Year Research-status Report
戸建住宅市街地の住宅更新における世代間継承と住宅・住環境の管理に関する研究
Project/Area Number |
20K04834
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
松本 暢子 大妻女子大学, 社会情報学部, 教授 (90183954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大橋 寿美子 大妻女子大学, 社会情報学部, 教授 (40418984)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 住宅更新 / 住居系市街地 / 世代間扶養 / 空き家対策 / 空き家の管理不全 / 空き家の活用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、戸建て住宅市街地の更新メカニズムを明らかにするために、①長期に住み続けている事例、②資産運用型の建替事例、③空き家化した事例を当該地域で収集し、世代間継承の観点を踏まえて縦断的に分析し、街区単位・地区単位での住宅管理および更新過程を把握し、戸建住宅市街地の持続可能な住宅管理および更新、余剰空間の利活用を含めた住環境マネジメントのあり方を示すことである。 これまで、東京都西部の戸建住宅市街地を含む自治体(世田谷区、狛江市、調布市)における空き家対策協議会での実績および意見交換をもとに、空き家化の経緯やその課題を把握してきた。さらに、空き家等対策計画の策定およびその改定を行った世田谷区および狛江市の過去5年間の空き家の現状および空き家化の経緯を分析した。その結果、空き家がそのまま空き家として存在することはなく、取り壊されて更地化する、宅地として売買される、などの事象、すなわち空き家の新陳代謝が起こっていることを確認した。東京西部の対象とする地域では、宅地の売買が主で、中古住宅としての売買事例は稀であった。 さらに、東京都内の自治体における空き家等対策計画の策定状況とその内容をもとに、空き家発生抑制の効果的取り組みとして、「特定空き家」の認定制度や自治体から所有者への働きかけが大きいことがうかがわれた。 昨年度は、住宅地管理の事例および余剰空間の利活用事例の収集を行い、多くの場合、利活用は住宅市場における取引として行われていることを確認した。そのため、対象とする地域(住宅市場がある程度機能している地域)では、利活用に取り組むよりは住宅地管理の必要性、その取り組み事例をもとにした管理不全空き家の発生予防が重要であることなどを明示し、取りまとめに向けた検証を始めたところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍における大学業務の増加で時間を割かれたことから研究開始が遅れ、その影響で予定よりも遅れている。また、研究にとりかかったものの、視察や資料収集が難しいことがあり、予定通りに進められないまま、現在に至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、とりまとめを行う予定である。 これまでに収集した東京西部の戸建住宅市街地における①から③の事例をもとに、当該地域の空き家化の経緯とその後についてモデルとして示したい。こうした事例の経緯は、対象とする地域の住宅事情と無関係ではなく、それを踏まえた検討を行うこととする。さらに、自治体での取り組み(空き家発生の抑制)として、管理不全空き家への取り組みを中心に整理する予定である。昨年度の検討で、当該地域では利活用される事例が少なく、空き家の発生抑制としては、管理不全空き家としないことが重要と考えられたためである。 そこで、東京都内における空き家等対策計画の策定自治体の、5年間の実績を把握することで、自治体の取り組みの特徴およびその内容を分析することで、実効性の高い取り組みを再検討することとしたい。 最後に、狛江市の空き家発生状況をみると、街区形状および敷地形状が空き家化と無関係ではないことを明らかとし、空き家発生抑制に向けては住宅周辺の細街路整備の必要性を検証したい。また、空き家等対策計画策定時に意見交換した所有者への働きかけの効果を示し、管理不全空き家への対応方策を示すことで、まとめとしたい。
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Causes of Carryover |
研究補助者への謝金および調査のための交通費等を予算では計上していたが、現地での実態調査が予定通りに進んでいない。事例等の収集において、地図および行政資料にもとづく分析を行ってきたため、予算の消化ができていない。コロナ禍での研究遂行であったことから、計画時点では想定していなかった行政資料の分析に取り組むこととなった。 とりまとめにおいては、空き家化の経緯をモデル的に示すほか、現地調査および調査結果の精緻化を進める予定である。
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