2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K04841
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
市川 尚紀 近畿大学, 工学部, 教授 (50441085)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 琵琶湖 / 水郷集落 / 水路網 / 自噴井 / 水利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、今後の水辺の景観まちづくりのあり方を検討するため、全国各地の伝統的な水辺空間や新たな水辺・水上空間の利活用事例を収集・整理し、各事例の歴史的背景や制度的背景を把握しながら現地踏査、実測調査、ヒヤリングなどを実施する研究である。 そこでまず滋賀県琵琶湖湖畔の水郷集落に着目した。全国的に伝統的な街並みを保存・維持していくことが重要である認識が高まっている中で、滋賀県琵琶湖湖畔には多くの水郷集落が点在しており、重要文化的景観や日本遺産に登録されているなど、積極的に景観を保存していこうとする姿勢がみられる。そこで本年度は、東アジアとの交流と交友をめざす拠点として建設された雨森芳洲庵のある「雨森」、重要文化的景観に選定されている「伊庭」と「針江」、1級河川の犬上川を水源とする「北落」、重要伝統的建造物保存地区に選定されている「五箇荘」、湖北八景に選ばれている中山道醒井宿の「醒ヶ井」、自噴井が豊富に位置している「上小川」の7集落を対象として、実測調査、踏査、ヒヤリング調査によって、各集落の空間構成や水利用形態、水文環境などの比較考察を行い、水郷集落の多様性と水との係わりを維持しながら街並みを残していくための工夫や課題について把握した。中でも上小川集落については、用水と自噴井が混在し、豊富な水量と現役で使われている水利用施設が多く点在している希少な事例であるため、より詳細に住民と水との関わり、水路網の実態を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度(初年度)は、事例収集を中心に行いながら本調査の準備作業として、滋賀、山口、福岡、岐阜などの事例の予備調査を行う予定であったが、突然のコロナ禍のため、共同研究者との情報交換やフィールド調査などが難航し、実績としては、滋賀県琵琶湖畔の7集落の現地調査のみにとどまった。フィールド調査中心の研究のためコロナ禍の影響は大きかったが、それでも琵琶湖畔の集落調査によって集落の水路システムの分類ができ、特に用水路と排水路の2つの水路システムで存在することが確認された。また上小川においては、カワトとカバタが併用されている水利用施設が確認でき、両システムを併せ持つ集落であることを把握できたとともに。この集落の先行研究がなく、自噴井の存在や水利用空間の実測を行うことで、独特な水利用文化の実態を初めて把握できた。さらに、ヒヤリング調査から、水文化に対する自治体や住民の意識及び住民の暮らしに自噴井の水が利用されているか否かが重要文化的景観の選定に影響していることもわかった。 現在、この調査研究の成果を論文としてまとめている。また、既に2021年度日本建築学会学術研究発表会に投稿済である。秋の日本都市計画学会大会が開催される運びになれば、WSなどで発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、琵琶湖畔の他の集落調査に加え、水辺のパークPFI事例(福岡県)や水辺のオープンガーデン事例(山口県)、さらに既往研究を引き継ぎながら水辺のオープンカフェ事例(広島県)の今後の展開について現地調査とヒヤリング調査を行う予定である。調査方法は、水郷集落の場合は実測調査、踏査、ヒヤリング調査とし、最近の水辺利用事例については観察調査、ヒヤリング調査によって事例の空間構成と事業スキームを把握する予定である。 また、令和3年度もコロナ禍の影響が続くと思われるため、文献などによる事例収集を並行して進めながら、「事例の特徴」「歴史的背景」「関連法制度」「現状の課題」などについて整理することと、共同研究者と書籍『(仮称)水辺の公私計画論』の執筆作業を進めながら、都市の水辺の景観まちづくりについて持論を展開し、これまで収集した事例の体系的分類を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による令和2年4月からの緊急事態宣言以降、不要不急の外出ができなくなり、加えて夏期休暇期間は春に休講となった授業の代替期間となったため、本研究の調査研究期間は4日間しか確保できなかった。そのため、研究費を消化することができず、次年度への繰り越しを余儀なくされた。 令和3年度は、例年通りの夏期休暇期間が確保できる予定であるため、予備調査や本調査を当初の計画通りに行う予定である。
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