2022 Fiscal Year Research-status Report
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20K04841
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
市川 尚紀 近畿大学, 工学部, 教授 (50441085)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 琵琶湖 / 郡上八幡 / 津和野 / 水郷集落 / 水路網 / 水利施設 / 水文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、滋賀県の「琵琶湖湖畔の水郷集落」と岐阜県の「郡上八幡集落」について調査を行ったが、コロナ禍による緊急事態宣言等の影響もあり、十分な調査ができなかったため2022年度に追加調査を行った。また2022年度は新規に島根県の「津和野集落」の調査も行った。 「琵琶湖湖畔の水郷集落」では、2021年度に調査した水郷集落の内、「大溝集落」「マキタ集落」「醒ヶ井集落」の追加ヒヤリング調査と、新たに「菅浦集落」の実測調査を行った。「菅浦集落」では、これまでの他集落の水利施設とは異なる「イド」と呼ばれる共同水場がみられた。この成果は、2023年度近畿大学工学部研究報告に投稿予定である。 「郡上八幡集落」では、鮎釣りと飛び込み文化を再確認したうえ、各々が近接した場所で行われていたため水深の実測調査を行った。その結果、20~30mの距離で水深が約50cm~約400cmと大きく変化している箇所があることを確認できた。これだけの水深の違いがみられる市街地の自然河川は、極めて珍しい。この成果は、既に2022年度日本建築学会中国支部研究発表会で発表し、現在、日本建築学会の査読付き論文集に投稿するべく原稿を執筆中である。 新規に調査した島根県の「津和野集落」は、重要伝統的建造物群にも選定されており、城下町の水路に鯉が泳いでいる水路景観が町のシンボルとなっている。しかし、行政や環境脅威藍へのヒヤリングから、鯉が泳いでいる水路は、城下町が形成された江戸期に整備されたものではなく、大火による被災を受けて明治期に整備されたもので、鯉は昭和期に幼児を喜ばせるために放流されたものであることが分かった。また、裏通りに郡上八幡の「エイ箱」と酷似した水利施設があることや、通りからは見えないが屋敷の中庭に池を設けた広大な庭が残されていることが分かった。この成果は2023年度日本建築学会学術講演会に投稿済である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、主に2021年度の追加調査と、新規に島根県津和野集落の現地調査を行った。また、郡上八幡の水郷集落の調査結果については学会発表済で、島根県津和野集落の調査結果については学会発表原稿を投稿済である。各々の進捗状況は以下の通り。 まず、滋賀県琵琶湖湖畔の水郷集落の調査については、2020-2022年度に行った調査結果のまとめ作業をおこなっている。また、郡上八幡集落の調査では、2021-2022年度に3回の現地調査を実施することができ、収集を予定していた情報がほぼ揃ったため、2023年度に学術論文を執筆する予定である。また、島根県津和野集落の調査は2泊3日で1回調査しただけなので、2023年度に追加調査及び「日原エリア」「畑迫エリア」との連携方策について現地調査とヒヤリング調査を実施する予定である。また、詳細調査はできなかったが愛知県の「足助町集落」の伝統的な水路景観のフィールド調査も行った。この「足助町集落」は、三州街道(塩の道)の宿場町として栄えた足助町の背後には足助川が流れ、川沿いの石垣上まで張り出すように家屋が建てられている。街路と護岸に高低差があるところでは、護岸上(地下階)に「シタヤ」と呼ばれる物置を設けており、3階建てのような水辺景観が形成されていた。 以上の調査による知見を、より広く関連行政や研究者、一般の関心者へ還元するため、論文としてだけでなく、建築学会の共同研究者らと執筆を進めてきた書籍『水辺の公私計画論-地域の生活を彩る・公と私の場づくり-』(技報堂出版,2023.5予定)にも執筆した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、岐阜県郡上八幡の水郷集落の成果を学術論文としてまとめ、また、島根県津和野集落の調査結果を学会発表すること、そして山口県美祢市の堅田集落の新規調査を行う予定である。津和野集落の調査については、2023年度を最終年度として成果をまとめる予定である。そして、書籍『水辺の公私計画論-地域の生活を彩る・公と私の場づくり-』(技報堂出版)を出版し、その内容について7月には東京でシンポジウムを開催する予定である。さらに、2023年度は科学研究費の最終年度ではあるが、新規に山口県美祢市の水郷集落の調査を始めるべく、既に情報収集を始めている。その後は、上記のまとめ作業を行いながら、他の事例についても並行して情報収集を行い、最終的には、「事例の特徴」「歴史的背景」「関連法制度」「現状の課題」などについて考察することを目標とする。 また2022年度から、共同研究者らと新たな学会の委員会「親水とSDGs」を発足した。これまで、我々が取り組んできた調査研究を顧みながら、SDGsの17の指標と照らし合わせ、都市の水辺環境を取り巻く問題について考察している。これらの結果を整理したマトリクスを作成し、日本建築学会大会学術講演会での発表する予定である。そして、都市の水辺のSDGs施策の策定・推進都市をみつけ、ヒヤリング調査を実施する。最終的には、新たな書籍の出版や、日本建築学会の水環境シンポジウム等で発表することで社会への還元をはかる予定である。
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Research Products
(3 results)