2020 Fiscal Year Research-status Report
Method of rehabilitation plan and business scheme for mixed community in French public housing
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20K04842
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
関川 華 近畿大学, 建築学部, 講師 (10646087)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | フランス / 団地再生 / ソーシャルミックス / Paris Habitat OPH / 社会住宅 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は以下の主要な2つの課題によって研究目的を達成しようとしている。課題1は団地再生の計画の把握、課題2は団地経営のスキームの把握である。それら課題にはそれぞれ2つの小課題を設定しており、令和2年度は課題1の一つ目の小課題である「団地再生の建築計画的特徴の把握」に主に取り組んだ。また同時に課題1の二つ目の小課題である「団地再生の事業実態」に取り組むための調査対象候補の選定に取り組んでいた。新型コロナウィルスの世界的な感染拡大を受け、本務はもちろんのこと調査協力を依頼するはずのParis Habitat OPHとのコンタクト自体を取ることができておらず、本研究の計画で2ー3年目から実施を予定している現地調査の準備は進まなかった。一方で、令和2年11月までに、フランスの建築雑誌『Architecture d'aujourd'hui』から、新築及び再生された社会住宅のデータを67件(1999-2021年)抽出するとともに、Paris Habitat OPHが1922年から2017年までに供給した住宅団地の再生事業が実施された事例22件のデータ入力を終えた。 令和2年度時点ではParis Habitat OPHによる団地再生計画の目的とその手法を、ストックの建築時期から整理することができた。団地再生自体は1980年代後半から始まり、2000年代になってからは再生事業数が急増している。団地再生が行われたストックを時間軸で整理した結果、3つのクラスタに分類できた。一つは19世紀の事例群(群と表現したが実際は1例)、1920-1920年代の事例群(7件)、1950-1970年代の事例群(14件)であった。居住性の向上、省エネといった、現代の住生活に不可欠な改修が行われているだけでなく、社会的多様性や近隣関係の保持などのコミュニティマネジメントに資する改修が実施されていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度はCOVID-19の世界的なパンデミックにより、国内における研究機関(大学や図書館)の機能不全が長期に渡って発生し、さらにフランスでも長期的な都市のロックダウンや入国制限が実施されていた。そのため、本研究の課題に着手すること自体にハードルがあるのだが、幸いにして当初の計画で1-2年目までに文献による事例の収集とその分類を目標にしていたことから、緊急事態宣言が解除された数ヶ月間に活動を集中させることで当初の計画に見合う成果を得ることができた。 一方、成果の公表については学会自体が研究報告会などの催事を延期または中止としたことから、目標としていた発信は達成されていない。成果自体の発信は、今後の研究期間中に行う予定である。 日本では収集に限界がある資料を調査及び踏査する必要があり、令和3年度以降はCOVID-19のワクチン接種の進捗や感染状況を注意深く観察しつつ、その可能性と時期を慎重に判断したい。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3~4年度には課題1を概ね完了させ、令和4~6年度には課題1の成果を元に課題2の現地調査を実施していく予定である。 まず研究手法の課題として認識していることは、現地調査のタイミングである。当初の研究計画はCOVID-19自体、報告されていなかったことであり、世界的パンデミックに発展してしまった現時点では、移ろいやすい社会状況、国際状況を日々注視しつつ、現地調査の計画を立てていく。研究費については、令和2年度に成果の公表のために報告会などへの参加費や出張費を計上していたものが繰り越されているため、次年度以降に行う現地調査を安全・健康に実施するために必要な消耗品やICT機器の準備などに臨機応変に充てたいと考える。 次に研究内容の課題としては、課題2の団地経営のスキームの把握に関することである。当初はPPP/PFIによる団地経営が行われていることを前提に進めていたが、その実態を法律的な側面からも把握することが重要である。この部分については研究代表者は専門外であるので、可能であれば日本国内における専門家を探し、ヒアリングなどを試みる。上記の通り、COVID-19による発信機会の減少によって繰り越される研究予算については、ヒアリング調査のための出張費などに充てられるようにしたい。
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Causes of Carryover |
理由:当初の計画提出時はCOVID19の存在自体なかった。令和2年度は当感染症の感染拡大とその予防のため、研究資料の整理等で雇用するはずであった学生の大学への入構自体が制限され、代表が稼働できる範囲で研究を実施した。また、成果発表のために計画していた学会の延期や中止により、原稿投稿の機会が制限された。そのため、旅費や人件費に計上していた30万円近い研究費が次年度へと繰り越されることになった。 使用計画:繰り越された研究費は、未だにCOVID19の感染は制圧できておらず国内外の混乱状況を踏まえると、当初の計画通りの使用内訳で執行することは難しいと考える。本研究の目的をつつがなく達成するためには、リモートによる調査に必要なICT機器の補強に必要な設備備品費、現地調査における研究代表者の安全性や、補完的に行う国内でのヒアリング調査などで発生する旅費、データ分析に必要な人件費などに充てることが不可欠であると考える。
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