2021 Fiscal Year Research-status Report
A study on culture of settlement housing with practice for improvement of self-build houses in Mongolia
Project/Area Number |
20K04860
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Research Institution | Tokyo Polytechnic University |
Principal Investigator |
八尾 廣 東京工芸大学, 工学部, 教授 (50509750)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | モンゴル / 定住 / 住まい / 構法 / 住居改善 / 技術支援 / 都市 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度もパンデミックのため、海外での調査・実践活動ができなかった。このため次年度にモンゴルでの研究活動を集中し行うこととし、国内における研究・実践活動を可能な限り行なった。他分野の研究者との共同研究を含む以下のような研究・実践活動を行った。 1)鳥取大学乾燥地研究センター共同利用研究に継続参画し、ウランバートルの古写真と絵図、旅行記等に対して深めた知見により、19世紀末から20世紀前半にかけてのウランバートルの建築や都市の建設における建築構法・木材利用および建設者に関する分析を行ない、ウランバートルの歴史的背景について都市・建築の観点より明らかにした。その成果を、共同執筆による著書「モンゴルにおける木材利用と森林後退―19世紀から20世紀前半の写真より(堀田あゆみ、渡邊三津子、鈴木康平編著、遊文舎、2020.3月)」として出版した。 2)ウランバートルにおけるゲル地区の住まい、社会主義時代に建設されたアパートの住まいに関するこれまでの調査結果の一部を、国立民族学博物館特別展「邂逅する写真たち モンゴルの100年前と今」において詳細な建築模型やパネルにより展示・公開した。建築模型制作においては、ゲル地区のセルフビルド住宅や移動住居ゲルの構法についても再現し、現地住民の住宅建設手法についての検証を行なった。 3)NPO法人GERにおいて毎月定例研究会を実施し、日本の建築・都市計画分野の専門家、モンゴル科学技術大学土木建設学部、森林研究所、現地におけるゲル地区の住居改善の活動家との情報交換を行い、住居改善のノウハウに関する情報交換を行なった。 4)大学所在地の厚木市における市民参加のまちづくりワークショップに参画し、住民の側からのボトムアップ型まちづくりに関する実践経験を得た。この活動によりウランバートルにおける住民との連携による住居改善の実践活動に役立つ貴重な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は新型コロナウイルスによるパンデミックのため、海外での研究活動が行えず、研究の主体であるウランバートルのゲル地区および社会主義体制下で建設された集合住宅の現地調査は遂行できなかった。しかし、鳥取大学乾燥地研究センターにおける他分野の研究者との共同研究により、近現代ウランバートルの建築・都市と周辺の自然環境との関係に関する知見を得て、モンゴルにおける建築や都市の建設に関する研究成果を共同執筆による出版という形でまとめることができた。また、国立民族学博物館での特別展への参加、研究内容の展示公開においてはゲル地区の住まいを詳細な建築模型により再現し、その住まいのあり方に関する知見を多くの研究者と共有することができた。さらに、国内における市民参加のまちづくりワークショップに参画したことで、市民によるボトムアップ型まちづくり、都市改善に関する貴重な実践的経験と知見を得ることもできた。以上のように、国内における研究活動は新たな研究の展開と成果を獲得している。次年度以降は現地調査が可能な見込みであり、本年度に得た知見と経験は、今後の研究に必ず役立つものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の核をなす、現地におけるゲル地区および社会主義体制下に建設された集合住宅の住居調査および資料収集については、2022年度以降に集中して行うこととする。幸いにしてモンゴルへの渡航は可能である見込みである。しかし、パンデミックの影響により住居内部の調査に関しては困難が伴うことが予想される。このため、現地調査の方法については、モンゴル科学技術大学やウランバートル在住の研究協力者との協働を検討している。 実践的研究であるゲル地区の住居及び住環境改善のマニュアル配布の社会的実験については、今年度モンゴル科学技術大学の研究者や現地における住居改善の活動家、NPO法人との意見交換の中で、住民による情報交換が特にFacebook上で盛んであることが確認され、それらのウェブサイトの特定も行うことができた。今後はゲル地区における住居改善のアイデアを集めたウェブサイトの構築に注力するとともに、これら住民主体の情報交換SNSとの連携を模索する。 住民がSNS上で発信する住居改善の情報は、敷地内空地の利用方法、庭の作り方、植物の育て方、住居建設の構法、さまざまな道具の紹介、住宅設備の紹介など多岐にわたる。しかし、これらは個々の住民により発信されるままで体系的には整理されていない。本研究におけるウェブを通した情報発信においては、住居改善のための知識を体系的に把握できるものを目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスによるパンデミックのため、海外での調査・実践的活動ができなかったため、今年度は現地調査にあてる旅費および人件費・謝金を支出せず次年度使用にまわすこととなった。モンゴルでの調査・実践活動については2022年度以降に集中して行うこととする。
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