2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of the precipitation for the structure design and solution of water flow on the ground level in the urban area at the time of the heavy rain
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20K04863
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Research Institution | Fukui National College of Technology |
Principal Investigator |
野々村 善民 福井工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (70713353)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 確率降水量 / 妙法寺川 / 一乗谷川 / 戦国時代 / 遺跡資料 / 福井県立一乗谷朝倉氏遺跡資料館 / 外水氾濫 / 再現期間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は実務で活用できる確率降水量の新たな解析方法と都市洪水の予測手法を開発することである.2021年度の本研究の目的は,妙法寺川流域における水の流れを予測することである.そこで,本研究は河川氾濫シミュレーションiRICを用いて大雨時の妙法寺川の流量を明らかにした. その結果,妙法寺川において外水氾濫を引き起こす一時間降水量は235mm以上であることがわかった.そこで,実務に対応した大阪湾における確率降水量を用いることで,一時間降水量235mmの再現期間は8798年となることがわかった.つまり,妙法寺川において大雨のみによる外水氾濫の危険性は低いことがわかった. 次に,2019年に福井県立一乗谷朝倉氏遺跡資料館(以下,資料館)は戦国時代の一乗谷川(以下,旧一乗谷川)の河川断面を示す遺構を発見した.これらによって,1573年の朝倉氏滅亡直後に外水氾濫が発生したことが明らかになった.そこで,本研究は,この遺跡資料を用いて旧一乗谷川流域の3Dモデルを再現した. この3DモデルとSTREAMを用いて,旧一乗谷川において外水氾濫を発生させた1時間降水量は42mmであることがわかった. また,本研究は福井県とその周辺の20点の観測点における降水量データを用いて,若狭湾における確率降水量を算出した.この確率降水量を用いることで,1時間降水量が42mmである場合,その再現期間は1年間で3.5日となることがわかった. 以上から,本研究で開発した河川氾濫の予測手法と地域に応じた確率降水量を用いることによって,河川の氾濫対策の計画案が検討できることを示すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績は査読論文である「戦国時代の一乗谷川における外水氾濫に関する研究 考古学的資料に基づく3Dモデルの作成と河川氾濫解析」で記している.地域において実務に対応した確率降水量の算出方法が確立できた.これにより,考古学で得られた遺跡資料から外水氾濫時の一時間降水量とその再現期間が予測できるようになった. また,福井市の朝倉氏遺跡公園に上城戸(かみきど)がある.資料館の見解によると,上城戸の本来の目的は敵の襲来の防御であった.上城戸の構造は地上高さ2mまで石垣となり,その上部に土塁がある.本研究により,大雨時の上城戸における水流を予測した結果,上城戸は洪水対策の機能も追加できることがわかった. なお,一乗谷朝倉氏遺跡の観光客数は2019年105万人となり,福井県内で上位5番目であった.2020年以降のコロナ禍によって,2020年の観光客数は85万人となった.観光客数の回復を目指して,2022年10月に福井県立一乗谷朝倉氏遺跡資料館は新築され,リニューアルオープンが予定されている.これに合わせて一乗谷朝倉氏遺跡に関する新たな動画が製作されている.これまでに得られた本研究成果の一部が動画の中で紹介される予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
戦国時代の一乗谷における遺跡資料を研究対象として,本研究で開発した研究手法を適用したことで,新たな研究テーマが考古学の領域において発見できた.例えば,日本国内の最古の砂防堰堤は元文3年(1738年)に築造された深水古砂留と言われている. 今後の推進方策は戦国時代の一乗谷川における水流を解明することで,上城戸が日本最古の砂防ダムであることを学術的に証明することである. 今後の研究計画の変更については,本研究の当初計画では氾濫対策技術は,開粒度アスファルトおよび透過性保水型路盤としていた.これらによって得られる洪水の抑制効果は小さくなる.そのため,令和4年度の本研究の活動は,砂防堰堤などの建設構造物を対象とする.
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Research Products
(5 results)