2022 Fiscal Year Research-status Report
沖縄の近現代史に関わる歴史的環境と場所の記憶の継承に関する研究
| Project/Area Number |
20K04870
|
|---|
| Research Institution | University of the Ryukyus |
|---|
Principal Investigator |
清水 肇 琉球大学, 工学部, 教授 (40244280)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
| Keywords | 歴史的環境 / 近代化遺産 / 沖縄 / 場所の記憶 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
2022年度においては、沖縄県内全域を対象とした近代の文化的資産に関わる調査を継続し、とくに那覇市内の戦後の都市形成史に関わる地域の詳細調査、沖縄島北部地域の近代の建造物に関する調査、沖縄県内の地域の祭祀に関わる建造物の近代化過程に関する調査を継続した。
沖縄の近代化遺産全般についての特性を技術的、意匠的に総論として整理する作業を行い、学会発表へ向けた準備を行った。
那覇市内の戦後の都市形成史については、出身地コミュニティとの関係で、来住者を支援しながら形成されてきた市街地形態の持つ意味についての詳細聞き取り調査を行うことができ、街区や社会基盤、共有空間等の形態自体が歴史的経緯を示すものであることを明らかにし、地域空間を歴史的経緯から解読することができた。
沖縄島北部地域の近代化過程については、とくにコンクリート構造、鉄筋コンクリート造の戦前における技術的広がりについての個別調査を進めることができた。沖縄島北部地域には水路などの社会基盤施設や大宜味村旧庁舎等の公共施設の遺構が残されているが、これらが建設された背景として、地域にもたらされた近代的建設技術の定着過程についての仮説を得ることができ、次年度の調査へ向けた課題を明確にすることができた。
上記と関連して、県内全般に見られる祭祀に関わる建造物の近代的な形態について、沖縄に元々は見られなかったと考えられる和風意匠を含めて事例を収集し、分析を行った。個別事例に関わる地域ごとの状況とともに、県内全般における近代の意匠や形態の広がりに関わる基礎的資料を収集した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
県内各地における近代の文化的資産の状況に関わる調査は、すでに取り組みが進んでいる市町村に蓄積された文化的資産のリストの確認を中心に進めている。県内における近代の文化的資産（建造物等）のリストの更新を進めており、2022年度も少しずつ進捗した。
一方で場所の記憶の継承に関わる取り組みであるが、新型コロナウィルス感染症による影響が続いたため、集落等におけるエコミュージアム的な取り組みは検討段階に留まっている。2022年度後半より各種企画の実現可能性が高まっており、2023年度へ向けた検討を行うことができた。
なお、当初に想定していた韓国、済州大学所蔵の第二次大戦時の沖縄の空中写真の複写についても、新型コロナウィルス感染症による状況が妨げとなり、依然実施できていないが、2023年度には訪韓が可能になることを見込んでおり、実施する予定である。
|
| Strategy for Future Research Activity |
市町村における近代の文化的資産（建造物等）に関わる調査を、学外機関（沖縄県教育委員会、沖縄県建築士会）との連携により継続する。
地域における場所の記憶の継承の取り組みについては、関係機関（2023年度においては南風原町立南風原文化センター、首里地域、国頭地域のまちづくり関係団体など）と連携を行いながら、継続的な取り組みとなるように準備を進める。
空中写真の複写については、2023年度中の訪韓が可能であることを見込んで実施する予定である。
|
| Causes of Carryover |
研究の共同検討のために、学外研究者の招聘と研究打ち合わせを計画したが、新型コロナウィルス感染症に関わる状況のために招聘が中止となり、オンライン打合せのみにとどまった。
当初の研究計画において想定した、韓国の大学所蔵の第二次大戦中の沖縄の空中写真の複写の入手について、新型コロナウィルス感染症に関わる状況から訪韓を延期しており、複写手数料や所要の旅費について使用できていない。これらは2023年度における訪韓を見込んで支出する予定である。
また、国内学会等の現地実施が行われていないため、県外旅費を使用していないため、旅費の使用額が少なくなった。2023年度は学会参加や資料収集の可能性が高まると見込んでおり、効果的な使用を計画している。
|
Research Products
(3 results)
