2022 Fiscal Year Research-status Report
エリア防災における外国人の避難行動分析からみた都市のマルチリンガル化
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20K04877
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
丹羽 由佳理 東京都市大学, 環境学部, 准教授 (80586751)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 友紀 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (70305556)
丹下 学 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (70549584)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 災害 / 地下空間 / 外国人 / 避難 / シミュレーション / エリア防災 / エリアマネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)地下空間における避難誘導サインの掲示状況調査 2021年度に行った「地下空間モデルの作成と避難シミュレーションの試行」を踏まえて、地下街・地下通路・地下広場等における避難誘導サインの掲示状況について現地調査を行った。都心にある多くの地下空間では案内標識の多言語化や外国人対応案内所などが設置されており、マルチリンガル化が進んでいる。しかし「避難誘導サイン」に着目すると、複雑な地下空間構造、地下と地上との接続、避難誘導サインと他掲示物(鉄道案内・商業掲示物)との関係性、通行者・滞在者の動線交錯などさまざまな課題があることがわかった。 (2)地下空間からの避難を想定した実験(外国人・日本人) 本研究は、地下空間における避難誘導サインが抱える問題のうち、「地下と地上との接続」、「避難誘導サインと他掲示物(鉄道案内・商業掲示物)との関係性」について取り組むこととした。2022年12月には、外国人と日本人を対象とした避難実験を行った。実験場所は、大学キャンパスにある地階とし、地下街に見立てるために壁面や天井面には商業掲示物・鉄道案内標識・避難誘導サインなどを設置した。実験は、一人ずつ2回実施し、避難にかかった時間、出口探索行動、視線計測による注視傾向について分析した。 (3)避難時の出口探索行動 実験では、避難誘導サインに関する知識の違いが避難時の出口探索行動と関係している可能性が示唆された。また外国人は掲示物の矢印を注視しやすく、避難誘導サインの矢印と他の案内矢印とを交錯させないようにすることが望ましいことが分かった。地下空間には多くの利用者が滞在しているため、避難誘導サインと掲示物との関係についてはより精緻な調査分析が必要であり、分析を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は,地下空間における避難誘導サインの掲示状況調査、外国人・日本人を対象とした避難行動実験を実施することができた。現在も分析を継続しているが、避難誘導サインに関する知識の違いが避難時の出口探索行動と関係している可能性や、外国人は掲示物の矢印を注視しやすく、避難誘導サインの矢印と他の案内矢印とを交錯させないようにすることが望ましいことなどがわかってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、シミュレーションの結果と実験の結果を考察し、出口探索行動の避難行動パタンや流れのボトリネックを明らかにする。これにより、エリア防災に欠けている属人的な視点を補強していきたい。
本研究における「都市のマルチリンガル化」とは、単なる多言語対応ではなくピクトグラムなどの情報も含んでいる。都市に埋め込まれたサインのみではなく、一時的な空間提供、情報システムの構築も対象として進めていきたい。複雑な地下空間構造、地下と地上との接続、避難誘導サインと他掲示物(鉄道案内・商業掲示物)との関係性、通行者・滞在者の動線交錯などさまざまな課題に対して評価項目の構築を目指す。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大の影響により、調査の時期が変更となっている。2024年度は、これまでの調査研究から得られた知見を整理し、英文校閲費を支出予定である。
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