アジア庭園基礎研究4ーー沖縄伝統庭園における自然観の表現と空間形態に関する研究

2020 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 20K04884
• Research Institution: Chiba University
• Principal Investigator: 章 俊華 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (40375613)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 大野 暁彦 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 講師 (00758401) ; 三谷 徹 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (20285240) ; 鈴木 弘樹 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (50447281)
• Project Period (FY): 2020-04-01 – 2023-03-31
• Keywords: 沖縄庭園 / 庭園調査 / 空間構成

Outline of Annual Research Achievements

沖縄庭園第1回調査：
調査対象地は、保存状況良好の首里城、円鏡池庭園、円覚寺庭園、玉陵、中村住宅、龍澤池庭園、識名園、伊江殿内庭園の7箇所を中心に行い、また、庭園は原形とは異なるものの伊江御殿別邸庭園、円覚寺庭園、中城御殿跡庭園の3箇所も現地写真を取り、状況確認をした。360度３次元スキャナーを用いて庭園の測量を行い、今後、庭園図面の補足や作成のためのデータ収集ができた。
1，建築形態に関する調査：各所において収集できる図面および資料の収集を行った。現地調査では、コンベックスとレーザー測定機で建築室内と窓まわりの室内側および室外側を測定し、そのデータをもとに図面化を行った。
2，庭園形態に関する調査：これまで詳細に実測されていない各庭園においてコンベックスおよび３次元スキャナーにより石積の細かな積み方や特徴部位の形態などを把握することができた。それぞれの成果を図面化するための基礎データを取得した。
3，文学表象に関する調査：各庭園において撮影した扁額の撮影データからの文字表記の映し作業、データ整理をした。庭園のイメージ空間を文字により表現する様式として伝播したため、まずはこの形式の基本データと沖縄歴史文化の資料集「首里城研究」No.2,4,11,15,17,18が収集できた。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

現地調査に基づくデータの作成を行い、そこから沖縄庭園に関する共通する特徴を以下のように認めつつあり、2021年度において成果として発表する準備が進んでおり、おおむね順調に進行、研究の次への展開を生む成果が期待できる。
1，建築形態の特性に着目する研究：（鈴木先生） 各庭園と建築の関係性は多様であり、沖縄の風土とあいまった関係性が確認できた。中国の庭園調査から行っている同じ手法により、今後データを整理し分析する予定である。今回の調査の結果の一部は、2021年度日本建築学会大会で発表する予定である。
2，庭園形態特性に着目する研究：各庭園には、各々異なる手法で石垣を主体とした境界が形成されており、これに注目した分析をまとめ研究成果として発表する予定である。
3，文学的表象に着目する研究：清朝の康熙帝、雍正帝、乾隆帝、道光帝、同治帝などの皇帝御賜扁額から見た沖縄風景表象及び庭園イメージ空間の特徴に関する研究をまとめ、造園学会の研究論文集や環境情報科学英文誌に投稿する予定である。

Strategy for Future Research Activity

１、補完調査の必要性：1年目の調査は、沖縄那覇市に集中しているが、2年目は石垣島と竹富島など未調査のままの対象が複数存在すること、その空間形態、文学的表象に関するデータ画がなされていないことなどが認識され、本研究の中で可能な限り調査記録を作成することの重要性が認識されている。
２、分析計画、研究成果のビジュアル化の検討：分析方法の確立。建築形態研究は、庭園にある建築からの景観に関する心理量分析からその特徴を見いだすと同時に庭園形態の分析も３次元スキャナーデータの作成と分析によって、更なる詳細調査を行い、分析の完成度を上げる。また、建築、庭園ともに一般図としての平面図、断面図とした資料づくりが重要な基礎作業として考えられる。
３、総合考察と成果のまとめ：中国庭園を初め、韓国、ベトナム、沖縄庭園における漢字文化圏のアジア庭園基礎研究の調査研究手法として総括的に位置づける。互いにどのように影響を与えながら伝播し、また独自の発展をしてきたかについて総合考察を行う研究者間の議論が予定されている。

Causes of Carryover

コロナの関係で昨年度（R2）は那覇市に中心として庭園の調査を行ったため、本年度（R3）は石垣島と竹富島を加え、調査を行う予定である。