2020 Fiscal Year Research-status Report
境島村における幕末~近代の蚕種製造民家群の保存継承に関する基礎的研究
Project/Area Number |
20K04886
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
大野 敏 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (20311665)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 境島村 / 登録有形文化財 / 境島村登録文化財活用推進協議会 / 大型蚕種製造建築 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、国登録有形文化財(建造物)を増やすことにより境島村における大型蚕種製造建築群の価値を明確にしていくことは、4件(4棟)の大型蚕種製造建築(主屋)の国有形登録文化財が実現した。また、実態調査が遅れていた立作地区から1件調査でき、登録へ向けて書類提出を行った。さらに従来保存問題が生じていた蚕室1棟について、所有者が自費修繕してくれた(今後登録文化財へ向けて調査資料を整える)。加えて島村新地地区の南に展開する埼玉県本庄市宮戸地区においても、最古の大型蚕種製造建築所有者が、登録文化財化を希望してくれた(今後調査を行い登録へ向けた準備を行う)。 次に大型蚕種製造建築の群として存続のための地元の認識と活動が重要である、という点は、上記の活動に呼応して「境島村登録文化財活用推進協議会」を立ち上げ、2020年12月に設立式と意見交換会を準備してくれた。そこでは横浜国立大学大学院生作成の地域再生企画のパネル展示と大野の記念講演も予定していたが、新型コロナの影響で延期となり、まだ実現していない。しかし、組織は設立され、その設立意義や夏同内容は地元新聞に何度か掲載され、周知された。協議会では2021年度から年4回の「通信(広報紙)」を発行することにして、地域内への周知・啓もう活動を展開することにしたので、その内容に関して、「島村の建築の魅力」を順次提供するとともに、広報紙の編集にも協力していく。 くわえて、田島弥平旧宅の調査研究に関して、昭和27年に取り壊された大型新蚕室の復原考察に着手し、類例調査(山形県松が岡開墾場蚕室2棟)を実施した。 以上のように、国登録有形文化財(建造物)への登録を増やしていくことにより、境島村における大型蚕種製造建築群としての価値を明確にし、地域の人たちの中からその継承(活用を通した存続)の声を引き出して、その活動の展開を図る、という研究目標は着実に進展している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標としては、島村地域の大型蚕種製造建築(主屋を中心とするが蚕室ほかの付属屋も含めて価値のある建築を包含する)においてはじめての登録文化財を誕生させること。そのことを契機に、蚕種製造建築群としての重要性(世界遺産田島弥平旧宅と共に周辺の建築群を含めて地域の建築文化が素晴らしという事)を、地域内外に知ってもらい、建築群のとしての今後の利活用を考える契機にしたい。と考えていた。 それに対して実績は、2020年12月に3件、2021年3月に1件、計4件(4棟)の大型蚕種製造建築(主屋)の国有形登録文化財が実現した。また、従来島村の中では文化財調査が遅れていた立作地区から1件の登録へ向けて書類提出を行うことが出来た。さらに従来保存問題が生じていた蚕室1棟について、所有者が自費による修繕を英断してくれて、その修繕が完了した(2021年に登録文化財を目指す)。加えて島村新地地区の南に展開する埼玉県本庄市宮戸地区においても、最古の大型蚕種製造建築(主屋)所有者が、主屋の登録文化財化を希望する意向も確認できた(今後調査を行い登録へ向けた準備を行う)。上記の活動に呼応して、島村地域内の住民の方々が「境島村登録文化財活用推進協議会」という組織を立ち上げくれて、2020年12月に設立式と意見交換会を準備してくれた(学生演習のパネル展示と大野の記念講演も予定)が、コロナの影響で延期となってしまった。なお、田島弥平旧宅の調査研究に関して、昭和27年に取り壊された大型新蚕室の復原考察に着手し、類例調査(山形県松が岡開墾場蚕室2棟)を実施した。 以上のように、新型コロナの影響で、一部活動は延期状態にあるが、地域の特質を示す建築群の文化遺産的価値を広く啓蒙し、その存続を地域住民とともに推進していく、という研究目的は、初年度としては予定以上の成果を上げたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の影響が続いており、現地へ出向いての調査研究は制限を受ける可能性が高いが、初年度において島村地域の住民の方々が「境島村登録文化財活用推進協議会」を設立させてくださったので、その組織と連携を深めて、コロナの影響下で活動可能な範囲で研究活動を展開していく。 まずは引き続き国有形登録文化財を増やしていく。2021年度はすでに1件の登録見込みであるが、修繕が終わった蚕室も新規に資料を整えて登録手続きを行う。隣接する埼玉県宮戸地区からも少なくとも1件の登録へ向けて調査を進めて資料整備を目指す。また、島村地区内における登録候補物件の選定と相談を協議会と進めていく。 蚕種製造建築群の価値周知については、推進協議会会長が、2021年4月から年4回の予定で「通信(活動広報紙)」の発行を始めてくれたので、その内容に関して協力して、文化財建築としての見どころなどを、順次紹介していくことを考えている。また、BS朝日放送「百年名家」で島村地区の大型蚕種製造建築群の魅力を取材してくれることになったので、その内容について推進協議会と伊勢崎市教育委員会と連携して「地域の魅力」を内外に正しく伝えられる内容にしていきたい。 田島弥平旧宅の審査室復原考察も、現状遺構(基壇)の再確認と、現在伊勢崎市教育委員会が整理中の弥平旧宅史資料整理の成果提供を受けて、復原考察と復原図作成に取り組む。 なお、関連調査として、群馬県内の絹産業遺産の所在地域における歴史的建築の保存活用実態や、養蚕建築群を有する地域(長野県上田、福島県伊達、兵庫県養父など)における保存活用への取り組み実態についても把握していきたい。
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Remarks |
国登録有形文化財の登録に向けて必要な書類は、行政関係書類のほかに、当該建築の文化財的価値を示す「 所見」・「平面図」・「配置図」・「写真」・「求積図・求積表」などの準備が必要となる。その部分は学術的的な調査に基づいた成果を反映させる必要がある。
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[Remarks] 田島達行家主屋登録に関する資料(所見・平面図・配置図・写真ほか)
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[Remarks] 田島善一家主屋登録に関する資料(所見・平面図・配置図・写真ほか)
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[Remarks] 金井義明家主屋登録に関する資料(所見・平面図・配置図・写真ほか)
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[Remarks] 田島亀夫家主屋登録に関する資料(所見・平面図・配置図・写真ほか)
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[Remarks] 町田清家主屋登録に関する資料(所見・平面図・配置図・写真ほか)