2023 Fiscal Year Annual Research Report
Charles-Edouard Jeanneret's Urban Design in 'LA CONSTRUCTION DES VILLES
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20K04887
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田路 貴浩 京都大学, 工学研究科, 教授 (50287885)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ / ル・コルビュジエ / ラ・ショー=ド=フォン / 都市の構築 / 都市デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、のちにル・コルビュジエを名乗るシャルル=エドゥアール・ジャンヌレの都市デザイン論の形成過程を追跡する一連の研究の第一段階で、ジャンヌレの未定稿「都市の構築」に表明された都市デザイン論の基本理念と手法を明らかにすることを目ざした。さらに、その参照源とされたカミロ・ジッテ『広場の造形』や、ドイツ郷土保護運動などからの影響を調査した。 「都市の構築」は都市デザインの各要素について、事例を交えながら多数の類型を提示し、その評価を論じている。本研究では、とくに中心的に扱われている街区、道、広場を対象に分析を行い、ジャンヌレの類型の評価コメントから、視覚的・身体的評価軸と実用的評価軸の二軸を導出した。 最終年度は、都市デザイン論の思想的背景の探索に取り組み、とくにジャンヌレが述べる「愛郷心」について考察を行った。ジャンヌレは愛郷心に関して、ジョルジュ・ド・モントナックの『祖国の愛すべき相貌のために』(1908)を引用し、「都市のシルエット」の重要性を論じていた。ドイツの郷土保護運動をスイスに導入しようとしたことで知られるド・モントナックは、スイス民族の象徴としてアルプスの風景を論じ、風景の相貌と民族意識を結びつけ、風景の美しさを通じて地元の愛国心が生まれることを主張した。美的景観を通じて愛国心を育むことが当時の常識であり、環境美の対象が自然から都市へと拡張された時代であった。 ジャンヌレも地域性の尊重や教育の重要性という点でド・モントナックへの同調を見せている。しかし一方で、愛郷心の創出根拠を風景の象徴的な相貌に求めるド・モントナックあるいは当時のフランス語圏の議論とは異なり、地形と建物群が形成する都市のシルエットの視覚的明瞭さに還元している。これはジャンヌレの独自な見方であり、ここにより近代的な都市景観の萌芽を指摘することができる。
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