2021 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Public Buildings in Local Administrative Region Interposed by Various Construction Entity in Colonial Taiwan
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20K04890
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
西川 博美 岡山県立大学, デザイン学部, 准教授 (00749351)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 理 神戸女子大学, 家政学部, 客員教授 (60212081)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 台湾 / 日本統治時代 / 台中 / 地方行政 / 公共建築 / 技師 / 技手 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本統治期の台湾の地方都市における公共建築の実態を明らかにするために、地方統治体制の中で発動された、警察、地方団体、企業などの活動が、公共施設の建設を担った実態を明らかにすることを研究目標とする。 本年度は、基礎的な情報の取得と整理として、まず台湾の地方都市において、公共建築がどのように建設されていったのかを、地方制度の実施状況をふまえて明らかにすることに取り組んだ。 調査対象としたのは、台湾地方都市の中で地方自治制が進む時期に最も発展が著しかったとみなされる台中である。統治下の台湾地方都市においては、地方制度の改変が繰り返される中でも廃県置庁、廃庁置州など、行政区分の変更が繰り返された。そして、大正9年(1920年)にようやく「市」が置かれ、ここから実際の地方自治が始まった。 そうした状況を踏まえて明らかにしたのは、1.地方自治の権能が与えられなかった時期には、総督府による施設設置が進んだが、台中州、台中市の成立により、地方行政による施設建設が行われるようになった。2.寄附金を募り建設するという様態が見られ、公共建築としての性格付けが曖昧と思われるケースが特徴として見られた。3.州・市において、技師・技手が在籍し、彼らが設計を担うようになっていった、などのことである。 この中で2.における寄附金をベースとする公共建築の建設は、本研究が明らかにしようとする自治体以外の各種団体や個人の建設への関わりを示唆するものであり、研究の次の段階への足がかりとなる成果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、引き続くコロナ禍による渡航制限によって、台湾現地での調査が実施できなかったため、分析作業の進展は遅れてしまうこととなった。しかし、統治期に日本語でまとめられた地方都市の地誌や市史の類いを国内で悉皆的に調べる資料調査を行い、加えて台湾現地の研究協力者の協力の元に、建物が建設された当時に発行されていた新聞史料等のデータを一部だが調査することができた。 それによる分析は、本研究の基礎的な部分に留まるものではあるが、日本建築学会の学術講演会に投稿することができた(西川博美、「日本統治期台湾の地方都市における公共建築建設-台中市に着目して」、2022日本建築学会大会(北海道)学術講演)。来年度からは、現地調査も再開できる見通しであり、この基礎的な調査分析をもとに、資料と実際の空間・建築の調査を行い、本格的な分析作業を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年前半までは、国内における資料調査と現地協力者による現地の資料調査を続けるが、とりわけ協力者による調査は、その調査方法をさらに効率化できる見通しであり、充実させたものとする。 調査内容においては、地方都市における公共建築建設の基礎的把握として、台南、高雄に着目し、資料だけはなく現地調査において都市空間全体の中での公共建築の存在のあり方を検証する。そして、台中、台南、高雄それぞれの比較検討を踏まえ、そこに介在した、地方自治の中での各種民間団体や自治組織の実態を歴史的に明らかにすることに取り組むこととする。
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Causes of Carryover |
台湾への現地調査、史料調査が、コロナ禍による渡航規制で実現できなかった。台湾では現在でも入国の際に、7日間の隔離期間が設けられているが、その日数は徐々に緩和されてきていると伺える。状況を鑑みた上、本年度は台湾現地へ渡航して、建築物の細部はもちろんのこと、都市空間の全体を把握しながら、研究調査を続行したいと考えている。更に、現地でしか入手できない史料や情報を収集したいと考えている。
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Research Products
(1 results)