2020 Fiscal Year Research-status Report
A historical study of the technical character of master carpenters at local castle towns and activities of their successors in Meiji period.
Project/Area Number |
20K04891
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
中村 琢巳 東北工業大学, 建築学部, 准教授 (20579932)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本建築史 / 明治時代 / 城下町 / 大工棟梁 / 地方色 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国の地方城下町には、江戸時代後期に生誕し、明治に活躍した大工棟梁が築いた歴史的建造物が数多く現存する。本研究の目標は、多くの名匠が台頭した地方城下町の明治時代に着目し、彼らの出自、事績と作品、作風やその生産体制、さらに弟子たちの活動という切り口で職人のモノグラフを集積するものである。その上で、地方間の技術交流(北海道の影響)などの比較文化史を試みる。 既往の日本建築史研究では、全国区で活躍した職人が注目されがちである。それらと異なり、まさに地方で活動した職人が対象となる。しかしながら、既往の郷土史研究のような職人の評伝ないし記録集の域をこえるために、東北地方に限定しつつ、比較分析の視点を重視している。研究対象とした職人は、洋風建築や近代和風、寺社など、手がけた類型を異にするように配慮し、比較分析と地方色の多様さの論述を両立するように留意している。 本年度は、研究着手初年度として、研究対象となる地方城下町の大工棟梁の資料的調査および実作品である歴史的建造物の実測調査に取り組んだ。具体的には青森県弘前、岩手県奥州市水沢、宮城県登米市登米町の町家や近代和風建築を対象とした。これら地域のなかでも、とりわけ、水沢の旧城下町区域の近代和風建築調査では、郷土画家の襖絵の多様、気仙大工の影響も目される奇抜な数寄屋造りの浸透、武家住宅の近代和風建築への共通する改造手法など、「明治時代における地方色の形成」という視点で、有力な事例を収集することができた。次年度以降、東北地方広域の城下町の比較という視点に加えて、こうした具体的なひとつの城下町での作風形成を、明治時代特有な地方色の醸成の視点から考察することも目指していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の基盤は、地方城下町に現存する歴史的建造物の実測調査(フィールドワーク)が中心となるものである。しかしながら、2020年度はコロナ禍に見舞われ、コロナ対策による出張制限のもとフィールドワークの計画通りの実施が困難となった。むろん、文献調査への移行等、対応を進めているものの、予定していた通りは、実測調査で基盤情報を整備できていない点で、進捗は当初計画よりやや遅れた状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画では、初年度である2020年度に研究の基盤データとなる、広域な地方城下町の歴史的建造物実測調査を推進予定であった。しかしながら、2020年度はコロナ禍の対策から、そのフィールドワーク計画が計画通り進捗できなかったこともあり、引き続き、2021年度もフィールドワーク(実測調査)を重視した研究を進める。同時に、技術交流を想定している北海道札幌・函館や弘前の大工棟梁の作風の比較といった、東北・北海道にまたがる広域的な比較検討だけでなく、奥州市水沢における気仙大工の影響関係といった、よりマクロな視点で技術交流や作風形成を想定していくことで、コロナ禍においても、フィールドワークを積み重ねることが可能なように対応したい。
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Causes of Carryover |
基盤研究(C)自体は当初計画通りの予算執行を進めた。一方で、「基盤研究(C)における独立基盤形成支援(試行)」における追加処置のうち、次の2件で次年度使用が発生している。ひとつは、これまでの研究資料・建築模型を保管・展示する資料室の環境整備事業について、コロナ禍から論文・研究資料・模型展示等の整備に要する人員の手配が整わず、次年度に使用が生じた。現在、学生活動が緩和されつつあり、整備に要する人件費を支出し、資料室環境整備については、2021年度前期にて完了予定である。もう1件は、2020年度に完了予定であった研究資料の論文製本について、発注・製本作業を依頼していた工場が、2月13日に発生した福島県沖地震の被災で作業が中断し、製本作業復旧まで時間がかかり、次年度(4月)まで納品が遅れたものがある。本件はすでに2021年4月に製本納品が完了している。
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