2022 Fiscal Year Research-status Report
大名華族の東京邸に関する都市史的研究─明治前半期を中心に
Project/Area Number |
20K04896
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
松山 恵 明治大学, 文学部, 専任准教授 (40401137)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 都市史 / 江戸 / 東京 / 武家地 / 大名華族 / 鉄道 / 明治初年 / 明治維新 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度(2022年度)は、昨年度までに収集した各種の歴史資料の分析にもとづいて、2本の雑誌論文(いずれも査読付き)と、一件の学会報告、また図書(共著)の執筆からなる研究成果の公表をおこなった。 一本目の雑誌論文(“Edo-Tokyo and the Meiji Revolution)は、都市史分野で著名な国際雑誌に掲載されたものである。海外(おもに英語圏)の日本史研究は戦後の近代化論の影響が強く,日本における状況以上に明治維新期に関する研究、ひいては歴史叙述が限られるなか、近代移行期の江戸-東京に関する都市史研究の内容を,海外の先行業績との関連で位置づけなおすとともに,追加の歴史資料にもとづく指摘なども交えながら論じたものである。 二本目の雑誌論文(「明治初年東京における武家地処分と鉄道敷設事業」)は、日本列島初の長距離鉄道である, 明治3年(1870)開始の東京新橋-横浜間の鉄道敷設事業について,あらたに都市史的な観点から考察した研究である。事業を主管する民部省の拠点形成の動きに加えて,対象地域の性格(東京府内においてはその大半が大名藩邸で構成)が,当該事業の中身を左右する要素であったことや,これまで不明確だった明治初年東京の武家地処分の実態などについても具体的に明らかにした。なお、一件の学会報告(「「高輪築堤」の誕生に関する一考察 )は、この二本目の雑誌論文の成果の一部を先行して公表したものである。 他方、共著の図書(『日本近・現代史研究入門』)は、日本近代史・現代史研究に取り組むにあたっての基礎を解説する研究書である。その中で、申請者は、戦後に台頭した日本近代および現代都市史研究のうち,とくに近代に関する研究史を,主要先行業績の成果と課題,さらに今後の研究展開の方向性などについても指摘しつつ、明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度(2022年度)には、上述のように著名な国際誌への投稿論文(査読付き)をはじめ、比較的豊かな研究成果をあげることができた。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の問題によって、依然、とくに当該年度の前半には事実上の行動制限も継続するなど、本来予定していた日本各地への史料調査などが大きく滞った昨年度までの2年間の遅れを十分取り戻すまでにはいたらなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
次の二つのアプローチから研究を進める方針である。 一つ目は、大名華族一般を対象とした居所およびその変遷の把握である。これは昨年度までもおこなってきたことであるが、今後も、各種の歴史資料(東京都公文書館所蔵「東京府文書」や、後述する大名華族関係史料などを念頭)を収集しながら、引きつづきの把握につとめる考えである。 二つ目は、いくつかの大名華族を対象に、その東京邸の空間的実態やそこを拠点におこなわれた活動を掘り下げることである。この課題の遂行のためには、日本各地の博物館などに所蔵されている大名華族関係の史料を収集・分析することが必須であるものの、昨年度までは感染症問題にともなう行動制限によって実施がきわめて難しかったことから、今後はそれを遂行する予定である。
|
Causes of Carryover |
昨年度も、新型コロナウイルス感染症の問題によって、事実上の行動制限が課される時期があったことから、本来予定していた出張(本課題の遂行で必須となる、日本各地の博物館などに所蔵される歴史資料の閲覧・収集のため)の実施がきわめて困難であったため、こうした次年度使用額が生じることになった。
|