2021 Fiscal Year Research-status Report
日本植民地下台湾における金瓜石鉱山の開発と事業圏域の拡大
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20K04905
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
波多野 想 琉球大学, 島嶼地域科学研究所, 教授 (60609056)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 蘇澳 / 植林 / 石灰石採取 |
Outline of Annual Research Achievements |
戦前の日本による植民地経営の特徴を具体的に示す場として、台湾の鉱山開発がある。台湾の植民地期(1895-1945)に鉱山開発を実施した日本企業は、主体となる鉱山を強力に稼働するために、その他の複数の鉱山や、燃料などの原材料を獲得する事業地を台湾本島内のみならず日本本土にも所有した。すなわち、近代台湾の鉱山は自らの閉鎖的な鉱山域をこえて、台湾および日本本土の広域的地域における土地造成、建築物の建設、輸送路の整備等を通して、各地の地域構造に影響を与えた。本研究は、金瓜石鉱山の経営を支える、材木供給のための植林と石灰石採取を進めた台湾東部の蘇澳など付随する事業地、および愛媛県の鉱山を対象に、施設配置や土地所有・利用の実態と、事業展開が地域構造に与えた影響を明らかにすることを目的とするものである。 2021年度は、上記の研究目的を達成するため、台湾に居住する協力研究者を通して、蘇澳周辺における事業開発の実態把握を進めるための資料収集を行った。その結果、事業開発を主導した金瓜石鉱山田中事務所によって作成された図面類が複数存在することが明らかになる一方で、土地の所有と利用に関する土地登記簿、地籍図等が存在しないことも判明した。後者については、金瓜石鉱山田中事務所が開発を進めた一帯が先住民族が居住する森林地域であり、官有地の貸借を通じて事業展開を図ったことが理由と考えられる。そこで、土地利用全般に関する資料の捜索を継続しつつ、金瓜石鉱山田中事務所によって作成された図面類から施設配置と輸送路整備に関する空間的実態の分析を先んじて進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
台湾在住の協力研究者による資料収集を進めたことで、これまでまったく研究がなされていなかった蘇澳における植林や石灰石採取に係る空間開発を復元するための資料の存在が明らかとなった。しかし新型コロナ感染症の拡大が続き、研究代表者自身による台湾調査が実施できなかったため、現存遺構の調査の進捗していない。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度には、協力研究者によ資料収集を継続的に実施するとともに、新型コロナ感染症の拡大に伴う渡航制限の状況をみながら、現地調査を行う計画を進める。また愛媛県における現地調査を先に進めることで、当該研究の目的達成に向けた作業を進捗させる。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の拡大状況により、台湾における現地調査が実施できなかったため、主に旅費と人件費を翌年度の助成金と合わせて使用することになる。まず愛媛県における現地調査を早急に進めるとともに、台湾渡航のタイミングをはかり実施に向けて現地の協力研究者と調整する。
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