2020 Fiscal Year Research-status Report
タイ・バンコクにおける水辺空間の変容と再編に関する史的研究
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20K04914
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Research Institution | Kure National College of Technology |
Principal Investigator |
岩城 考信 呉工業高等専門学校, 建築学分野, 准教授 (50647063)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻田 智恵 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特任研究員 (90808304)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | チャオプラヤー川 / 都市史 / 環境史 / GIS / 河岸 / 地先 / 郊外住宅地 / チャイナタウン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀末から現代に至るタイ・バンコクの水辺空間の形成と破壊、そして再編に至る空間の変容とその社会経済的な背景を、歴史的に明らかにするものである。初年度となる令和2年度は、1888年から1960年代の古地図を用いた水辺空間の類型化とそれらの変容過程の解明と、文書史料からみる各水路の維持管理と周辺環境の変容の解明を主眼において、研究を進める予定であった。しかしながら、コロナ禍のため国外のみならず、勤務校の感染防止対策により国内の調査出張も不可能となり、当初予定していた史資料の収集を実施することができなくなった。ただし、予定していた古地図のいくつかは、タイ人の研究協力者の尽力によって、デジタルデータとして入手することができた。しかし、当初の予定に比べれば十分とは言えない。 国内外における調査出張が出来ないので、史資料の収集方法を改め、日本の国立国会図書館が所蔵し、Webで公開する1890年代から1940年代の戦前の日本人が出版した、タイ全土あるいはバンコクに関する旅行記や概説の中から、バンコクの水辺空間に関する記述を時系列に収集した。こうして、戦前の日本人から見たバンコクの水辺空間の自然環境、利用方法や清濁の状況などの変遷に関する考察を行った。西洋人とは異なる自然観や農業観を持つ日本人のバンコクの水辺空間に関する記述には、これまでのバンコク研究では触れられてこなかった、水辺の地先権のあり方といった慣習法に触れるものもあり、今後の研究に大いに役立つ史料的な発見も少なくなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究の進捗状況が、「遅れている」最大の理由としては、コロナ禍のため国内外での史資料の収集ががほとんど出来きなかったことが挙げられる。コロナ禍における国外への渡航制限は、本研究のような海外研究では致命的と言える。 当初は、19世紀末から現代に至る、水辺空間の全体的な変遷の体系化に向けて、タイの国立公文書館や国立図書館、チュラロンコーン大学やタマサート大学の図書館、また日本の京都大学東南アジア研究所やアジア経済研究所の図書館で、古地図や文書史料を収集し、整理する予定であった。しかし、国外のみならず国内での史資料の収集も十分に出来ない状況によって、国立国会図書館のWebサイトを中心に史料収集を行ったものの、計画通りあるいはそれに近いような形で研究を進めることはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍では、本年度も国内外の調査出張は難しい。とりわけ、バンコクに渡航した上での古地図や史資料の収集は不可能であると考えている。そこで、まず我々がすでに入手している古地図や文献史料の分析を進めていく予定である。そして、タイにおいて所蔵が明確なものは、我々のタイにおける人的ネットワークを最大限に活かし、タイ人研究者に協力してもらいながら、遠隔で収集していく予定である。 こうして、すでにある、あるいは入手できた古地図を、地理情報システム(Geographical Information System; GIS)を用いてマクロな視点から分析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本研究は海外研究であるので、バンコクへの調査出張は欠かせない。しかし、コロナ禍によって、予定していた海外のみならず、国内の調査出張も不可能となった。そのため、当初予定していた旅費が未利用となり、それが次年度使用額が生じた最大の理由である。
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