2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K04933
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
溝口 誠 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 准教授 (10532781)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 気流乱れ強さ / 動的乱流格子 / 風洞試験手法 / 強乱流場生成 / 空力測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,乱流生成装置の一種である動的乱流格子を用いた風洞実験に模型直動装置を組み込むことで,模型と気流の相対速度を調整可能とし,様々な強さの乱流場を実験模型周囲に実現する実験手法の開発に取り組んでいる. 2020年度はまず,既存風洞へ模型直動装置を導入し,模型と気流の相対速度を制御できる実験環境を構築した.具体的にはステッピングモータとリニアガイドを利用した直動装置を風洞測定室に組み込み,模型の移動速度調整のための制御系を整備した.模型移動速度の測定結果からは,一定速度での模型直動が実現でき,模型移動速度を精度良く調整可能なことを確認した. 本研究では次に,構築した模型直動装置に熱線流速計を取り付け,模型と気流の相対速度および相対速度の時間変動を測定した.従来の動的乱流格子を利用した風洞実験では,風洞気流の流速を減少させると動的乱流格子によって生成される流速変動も減少し,流速変動と気流流速の比である乱れ強さが低下する.一方,本研究の提案では,風洞気流と気流流速変動を一定に保ったまま,模型直動によって模型と気流の相対速度だけを変化させることができる.その結果,模型移動速度の調整によって,相対的な乱れ強さを変更することができる.熱線流速計による測定結果からは,本研究で提案する実験手法によって気流の乱れ強さが調整可能となり,動的乱流格子単体で生成するよりも強い乱れを実現できることが明らかになった. 2020年度は模型直動装置に空気力センサと翼模型を取り付け,直動中の実験模型に働く空気力測定に関する予備実験も行った.予備試験の結果からは,精度のよい空気力測定のために必要な実験手法改善のための知見が得られた.2021年度はこれまで得られた知見をもとに,研究の更なる進展に引き続き取り組む.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度に実施予定であった,既存風洞への模型直動装置導入は当初計画どおりに完了した.また,模型直動のための模型駆動系の構築も終了した.構築したシステムによって模型と気流の相対速度を変更できることを確認し,模型の直動によって相対気流の乱れ強さを調整できることを示した.また,直動する模型に働く空気力の測定についての予備試験を実施することで,今後の研究進展に対して重要な知見も得られた.このように現在まで,当初計画に対して研究は概ね順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は当初計画どおりに研究が進展し,空気力測定の予備試験も実施した.今後は引き続き,実験模型が直動する環境における空気力測定の実現に取り組む.実施した予備試験の結果からは,直動装置の延長および研究計画策定時の想定よりもさらに小さな力センサの採用が望ましいことが分かった.そこで次の取り組みとしてまず,風洞測定室と直動装置を延長したうえで,小型力センサを導入し,翼模型に働く空気力の測定を行う.そのうえで構築した実験システムを用い,乱れ強さと翼空力特性の関係を測定する.測定結果および提案する実験手法の妥当性は,既存の翼空力特性データとの比較によって評価する.
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Causes of Carryover |
2020年度に実施予定であった空気力測定予備試験を,既存物品でも対応可能と判断し,今後の研究に必要な力センサの選定と購入を先送りしたことが次年度使用額が生じた主な理由である.また,2020年度の講演会がオンライン開催や中止となったため,講演会参加用旅費として予定していた分も次年度に繰り越す.繰り越し分と2021年度助成金は,今後の研究に必要な力センサや直動装置延長用器材の購入に利用し,研究を進展させる予定である.
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