2020 Fiscal Year Research-status Report
Experimental study on the wave-ice-structure interaction for ice-going ship
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20K04938
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
澤村 淳司 大阪大学, 工学研究科, 助教 (90359670)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾関 俊浩 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (20301947)
木岡 信治 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(寒地土木研究所), 主任研究員 (20414154)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 氷海船舶 / 氷荷重 / 波浪 / 氷海実験 / 海氷微視構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のR2年度の研究実施計画は,1)氷板破壊を考えない波浪中氷荷重の実験的解明と2)氷板破壊を考えた模擬氷の開発(R3年度も継続)の実施であった.
1)氷板破壊を考えない波浪中氷荷重の実験的解明:海氷の大きさが小さいとき,海氷は船体との衝突において破壊されない.そこで,氷板破壊を伴わない海氷中を船舶が航行する時の船体氷荷重を模型船試験により測定する事を考える. R2年度は,密度が海氷と同等の円形状のプラスチック(ポリプロピレン)板を海氷とした模擬氷を使用し,常温の試験水槽を用いて波浪-氷板の相互影響を調べた.実験の波浪は定常波とし,定常波の波高と波長をパラメタとしたときの,円形海氷板の運動(上下変位,水平変位,加速度)と氷の密接度(水面上に浮遊する氷板の面積割合)を計測した.この実験により,定常波中にある海氷板の上下運動と氷密接度の関係を明らかにした.この結果は波浪-氷板の相互影響下にある船舶の氷荷重の発生原因解明のための重要なデータの一つとなる.
2)氷板破壊を考えた模擬氷の開発:氷板が大きくなると,氷板は波浪および船体との衝突によって破壊される.氷板破壊を模擬した模擬氷はなく,本研究において開発を試みる.海氷の内部構造は純粋な氷と異なり塩分の存在により,純氷の構造にブラインと呼ばれる塩もしくは空洞が存在する.そして,ブラインの存在が海氷強度を決める大きな要因であると考えられているが,その詳細は明らかになっていない.R2年度は,海氷のブライン構造の特徴から海氷の強度特性を明らかにするため,核磁気共鳴映像法を用い3次元の海氷微視構造データを取得し,氷板の曲げ強度と海氷微視構造(ブライン体積,ブライン構造の方向)の関係を調べた.この実験によりブライン構造は曲げ強度に影響を及ぼす事が明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の実施計画は,1)氷板破壊を考えない波浪中氷荷重の実験的解明(1年目),2)氷板破壊を考えた模擬氷の開発(0.5-2.0年目),3)氷板破壊を考えた波浪中氷荷重の実験的解明(1.5-2.5年目),4)実海データとの比較による実験結果の検証(2-3年目)であり,R2年度の計画は,1)氷板破壊を考えない波浪中氷荷重の実験的解明と,2)氷板破壊を考えた模擬氷の開発(R3年度も継続)の実施であった.
1)氷板破壊を考えない波浪中氷荷重の実験的解明:R2年度の当初計画は,定常波の波高と波長,氷板の厚さと長さ,船の船首傾斜角と速度をパラメタとした模型船実験を実施し,氷板の運動と船に作用する氷荷重を計測し,波浪条件と氷板運動および氷荷重の関係を解析し,氷荷重の発生原因を特定する事であった. これに対し,R2年度は,定常波の波高と波長,氷板の大きさをパラメタとした,波浪中の氷板運動の計測実験を実施し,波浪-氷板の相互影響を明らかにした.R2年度の当初計画にある,船の船首傾斜角や速度をパラメタとした,波浪-氷板の相互影響下にある船体氷荷重計測実験(模型船実験)は未実施となった.これは,R2年度において,当初使用を予定していた試験水槽の使用が急遽制限された事が理由である.
2)氷板破壊を考えた模擬氷の開発:R2年度の下半期からR3年度において,氷板破壊を模擬した模擬氷を開発する事が当初計画である.模擬氷の開発のためには,ア)強度試験を実施し海氷の破壊特性が模擬できる材料の選出と,イ)海氷の微視構造を解析し海氷強度特性の解明を行う事が必要になる.R2年度は,上記のイ)の海氷微視構造データを取得し,ブライン体積,ブライン構造の方向などの海氷微視構造と海氷曲げ強度との関係を明らかにした.模擬氷の開発に関する研究は,おおむね当初予定の進捗となった.
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Strategy for Future Research Activity |
波浪-氷板-船体の相互影響下における氷荷重の発生原因を,模擬氷を用いた模型船実験により解明する本研究は4つの研究課題に細分し実施する(カッコ内は当初計画の年度).R3年度以降は各研究項目に対して以下のように実施する.
1)氷板破壊を考えない波浪中氷荷重の実験的解明(1年目):R2年度の実験結果(波浪と氷板運動の関係)を用い,船首傾斜角と船速度をパラメタとした模型船実験を実施し,波浪中の氷板の運動と船に作用する氷荷重を計測する.2)氷板破壊を考えた模擬氷の開発(0.5-2.0年目):強度試験を実施し海氷の破壊特性が模擬できる材料の選出を行い,これと,R2年度の実験結果を加味することで,破壊を伴う模擬氷を作成する.3)氷板破壊を考えた波浪中氷荷重の実験的解明(1.5-2.5年目):破壊を伴う模擬氷を作成したのち,試験水槽にて波浪中の海氷板運動と海氷板の変形,割れの計測実験(波浪-氷板の相互影響の解明実験)と,破壊を伴う模擬氷を用いた模型船実験(波浪-氷板-船体の相互影響の解明実験)を実施し,氷破壊と氷荷重の関係(氷破壊が氷荷重に及ぼす影響)を明らかにする.4)実海データとの比較による実験結果の検証(2-3年目):実氷海域において,実験の検証データ(氷の破壊と氷荷重の大きさなど)を取得し,実験と実氷海データの定量的な関係を明らかにし,実氷海域中の波浪-氷板-船体の相互影響下における氷荷重の発生原因の特定を実現する.
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Causes of Carryover |
R2年度は,当初使用を予定していた試験水槽の使用が急遽制限され,R2年度に予定していた模型船試験が未実施となった.このため,模型船試験のための予算が使用できず次年度使用額が生じた.R3年度は,R2年度において未実施となった模型船試験とR3年度に実施計画がある氷板破壊を考えた模擬氷の開発のために予算を使用する.
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