2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K04955
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Research Institution | National Institute of Maritime, Port and Aviation Technology |
Principal Investigator |
松沢 孝俊 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (00443242)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 氷の機械的性質 / 超音波探傷 / 海氷構造 / 曲げ強度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の対象は最終的には海氷等の実氷であるが、実氷は様々な構造を有しており、それを実験環境で再現する必要がある。そのため、令和3年度は低温室において氷サンプルを作成する手法の確立を進めた。 はじめに純水で自然界の結晶構造である垂直構造を持つような純氷の製氷を試み、約半日の冷却により氷厚50mm程度のサンプルを得られるようになった。製氷はじめに氷核散布という手法を使うことで、結晶構造が安定的に成長することがわかった。 次に、海水を模して凝固点降下を示す溶剤(プロピレングリコール)を混入した水で、純粋について確立した手法で製氷を試みた。海氷は塩分により構造中にブライン(凝縮された塩分ポケット)を有することで、その機械的強度が弱化する。これを再現するため、溶剤の濃度を様々に変えて製氷し、純氷と同様に氷厚50mm程度のサンプルを得られるようになった。こうして作成した氷を模型氷と呼ぶ。薄片を作り結晶構造を観察したところ、ミリ以下の結晶を生成することに成功しており、これは海氷の強度に関連する模型試験を行う場合、数10分の1スケールの縮尺で実験が可能であることを意味する。 以上の通り、性状が異なる数種類の氷サンプルを作成したが、船舶工学的に最も重要な強度のひとつである曲げ強度を確認するため、片持ち梁試験と3点曲げ試験を各サンプルについて実施した。製氷自体が試行錯誤によるためタイプごとのサンプル数としてはまだ不十分であるが、純氷について約50、模型氷について約100の強度試験データを取得した。これを分析した範囲では、溶剤濃度や室温制御に対する強度の変化はおおよそ合理的に表れており、海氷を模擬するという目的で模型氷を製氷した場合、その性状をコントロール可能になったということができる。 なお、実氷の結晶構造を参考にするため、北海道ウトロ港内とサロマ湖内において海水と海氷のサンプル採取を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に超音波探査の調査と機器の調達を行い、次年度(本年度)に製氷手法の確立を実施した。これらは海氷強度に対する超音波の特性を調査するために必要不可欠なファクターであり、これらが得られたことで最終年度の超音波による分析を系統的に実施することが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
純氷及び模型氷について超音波探査に適した形状の氷サンプルを作成し、プローブ設置やサンプル保持等の条件について最適化し、実際の探査手法を確立する。そのうえで製氷と試験を繰り返しデータ数を増やすことに注力し、統計的な解析を目指す。
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Causes of Carryover |
製氷に関する機器類を内作したため、購入の必要がなくなった。 次年度に繰り越し、製氷の効率を高めるため冷凍機及び低温室の環境整備に回す。
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