2021 Fiscal Year Research-status Report
漁船の健康寿命を守るマルチコプター型 状態監視・診断ロボットの開発
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20K04957
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
太田 博光 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 教授 (80399641)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 状態監視 / 診断 / 信号処理 / 転がり軸受 / 漁船 / 音響 / 振動 / パラボラ集音マイクロホン |
Outline of Annual Research Achievements |
漁船の機械要素として損傷の多い転がり軸受の高精度診断を実現した.本診断システムは既存法である「パラボラ集音マイクロホンと合成波形分離法」の特長である集音効果と複数の音源同定機能を生かしつつ,回転周波数成分の抽出法である合成波形分離法に新たな信号処理手法を加え,更なる高い診断精度と実用性の向上を実現している.具体的には回転周波数成分を励起する固有振動数帯の同定,抽出を行っている.提案する信号処理法の考え方は以下である.診断対象の機械要素である転がり軸受の外輪,内輪に人工傷をつけた物を試験機に装着する.損傷転がり軸受から離れた位置にパラボラマイクを設置する.パラボラマイクに装着されたレーザーポインタを利用し,損傷軸受に照準を合わせ効果的な集音を行う.次に試験機を運転させ,スピーカから任意のノイズを加えた環境下でサンプリング周波数100[kHz]の音響測定を行う.測定された音響時系列データにフーリエ変換を施したものを直接FFT値と呼ぶ.直接FFT値には転がり軸受の固有振動数帯も含まれている.この直接FFTで得られた広帯域成分を周波数領域で細分化し,逆フーリエ変換により音響時系列データに再び変換する.この音響時系列データにエンベロープ処理注を施し,再度,フーリエ変換によりパワースペクトルを得る.これをエンベロープスペクトルと呼ぶ.このエンベロープスペクトルには細分化された帯域毎の回転周波数成分が強調されている.この帯域毎に現れる回転周波数の1次から5次成分までの強度和を評価量とする.この強度和が最大となる直接FFT値の帯域を最適な固有振動数帯として同定する.最終的に診断のパラメータとして機械の回転数や測定器のアンプゲインの影響を受けない診断パラメータを用いることで診断精度を大幅に向上させる事が可能となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,着想していた診断システムの構築を行うことが出来,予定通りの高精度な状態監視・診断性能を発揮している為,本研究課題の進捗状況はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本診断システムを無人航空機に搭載し,漁船の機関室を想定した室内での自律航行と診断対象機械に対する正確な照準合わせ法を確立し,有効性を検証する. 漁船の機関室内での使用を前提としているためGPS(Global Positioning System)による誘導は困難かつ精度不足である.今回,精度の良い位置情報を得るためのツールとして簡易マーカーの使用を予定している.壁面に簡易マーカーを貼り,無人航空機に搭載されたカメラから,そのマーカーが指示する情報を受け取り,飛行制御に利用する.具体的には無人航空機が各簡易マーカーの位置で行うべき動作を決めておく.例えば上昇,水平移動,左右旋回,音響測定,着陸等,各マーカーを実験空間の適切な場所に貼付け,その位置で指定された動作を行う.音響測定時にはパラボラマイクの焦点が合う正確な位置に簡易マーカーを貼ることで本無人航空機を誘導し,精度の良い位置情報を得る事ができる.音響測定終了後,本無人航空機はプログラムされた定点に着陸する.音響データは搭載されているWiFi送信機で地上のノートパソコンに送信され,診断プログラムによりリアルタイムで診断が行われる.本無人航空機はマルチコプター型であるため,プロペラブレードによる空力音が発生し,パラボラマイクに到達する.これらノイズは合成波形分離法により除去可能である.またプロペラブレードと診断対象機械の回転周波数が近接している場合でも,ズームFFT注により周波数分解能を向上させることで分離,除去が可能である.最終年は研究代表者の所属する水産大学校の漁業調査練習船 耕洋丸(排水量2352トン)の機関室内を利用して本診断システムの有効性と実用性を実証する.
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Causes of Carryover |
回転機械の診断を対象とした音響測定装置の製作費が当初予定していた予算額よりも,低く抑えることが出来たため,次年度に使用したいと考えている.主に次年度に実施予定のマルチコプター型機械診断ロボットの製作費用の一部に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)