2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of Pedestrian Simulator in VR Environment
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20K04988
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
辛島 光彦 東海大学, 情報理工学部, 教授 (90264936)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱本 和彦 東海大学, 情報理工学部, 教授 (50266368)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 歩行者用シミュレータ / VR環境 / 全方向歩行可能歩行デバイス / 速度感 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,歩行行動特性に関する研究において安全の観点からの倫理上の制約を伴い歩行シーンが限定的となる問題を解決できるように,歩行者が実空間と同様に歩行を体感できる歩行環境を再現できるVR環境を用いた歩行者用シミュレータを開発することを目的とした. 2022年度までにHMDを用いたVR環境,没入型VR環境とも速度感,距離感については歩行デバイス特性が影響を与えることが確認され,VR環境下のパラメータを調整することによりシミュレータの歩行速度を現実環境の歩行速度と同様の状態にできることが示唆された.しかし調整前のシミュレータの速度と現実環境の速度の大小関係はHMDを用いたVR環境とは逆の関係になり,そのメカニズムの検討が課題として残った. そこで2023年度は2022年度まで統一できていなかった現実環境,HMDを用いたVR環境,没入型VR環境の歩行環境を全て一致させた上で,それぞれの歩行に関する情報を収集する実験を行い,両VR環境における現実環境の歩行速度とパラメータ調整前のシミュレータの歩行速度の大小関係の相違について確認するとともに,その相違のメカニズムについて検討した.実験の結果,HMDを用いたVR環境においては従前通り歩行速度に歩行デバイス特性が影響を与えることが確認され,現実環境と比較し歩行速度が有意に速くなることが示された一方,没入型VR環境においては歩行速度に対する歩行デバイス特性の影響はHMDを用いたVR環境よりも小さく、歩行速度は現実環境の速度に近くなることが示された.両VR環境において歩行デバイス特性が同様であるにも関わらずHMDを用いたVR環境のみ現実環境と歩行速度の相違が生じるメカニズムは,両VR環境における視覚的歩行速度感の影響の相違によるものと推察された.ただ両VR環境における視覚的歩行速度感については検討できておらず,その推察の検証が課題として残った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度,2021年度とコロナ禍により研究を当初の研究実施計画通りに進捗させることが困難であったため,研究の進捗状況に遅れが生じていた.加えて2021年度に予定していた没入型VR環境で実施する予定のシミュレータを用いた実験が没入型VR環境に3D地図情報を投影するソフトウェアの問題で実施できず,当初の予定になかったHMDを用いたVR環境にて実験を実施したため,この点からも研究の進捗状況に遅れが生じてしまった. 2022年度はその遅れを取り戻すため,新規に対応したソフトウェアを導入し,没入型VR環境にて実験を実施した.ところでこの実験に際し歩行シミュレータ上の歩行速度を現実環境の歩行速度に一致させるためには歩行シミュレータのパラメータ調整が必要であることが分かっているが,パラメータ調整に大きく影響する現実環境の歩行速度とパラメータ調整前のシミュレータの歩行速度の大小関係がHMDを用いたVR環境と没入型VR環境では著しく異なったため,パラメータ調整に時間を要し2022年度も計画通りには進められなかった.2023年度は両VR環境の歩行速度の相違のメカニズムを明らかにするために現実環境と両VR環境を一致させたうえでパラメータ調整前のシミュレータの歩行速度を検討する実験を行ったところ,両VR環境の歩行速度は異なったが,従前とは異なり没入型VR環境の歩行速度は現実環境と近くなり,両VR環境とも同様の歩行デバイスを用いているにも関わらずHMDを用いたVR環境のみが現実環境と歩行速度が異なるメカニズムを視覚的歩行速度感の観点から検証することが新たな課題として残された. またメカニズムの検証が新たな課題として残されたため,2022年度来未実施の従来の実空間において明らかにされている歩行行動特性についての没入型VR環境におけるシミュレータによる再現性の確認実験が実施できていない.
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Strategy for Future Research Activity |
前述のようにHMDを用いたVR環境と没入型VR環境において現実環境の歩行速度とパラメータ調整前のシミュレータの歩行速度の大小関係について,歩行環境を一致させた場合,従前とは異なり没入型VR環境の歩行速度は現実環境と近くなり,両VR環境とも同様の歩行デバイスを用いているにも関わらずHMDを用いたVR環境のみが歩行速度が現実環境と異なるメカニズムを明らかにすることが新たな課題として残された.2023年度は歩行環境も一致させ,両VR環境における歩行デバイスも同一であったにもかかわらず,両VR環境の歩行速度が異なったのは両VR環境における視覚的歩行速度感の影響の相違によるものと推察された.そこで両VR環境における視覚的歩行速度感についてのデータを収集する実験を行い,HMDを用いたVR環境のみ現実環境よりも歩行速度が速くなるメカニズムを視覚的歩行速度感の観点から検証する予定である. 加えて2022年度来計画し実施できなかった従来の実空間において明らかにされている歩行行動特性についてのシミュレータによる再現性の確認実験を実施する予定である. 本研究に割り当てるエフォートを当初の計画より高めることで2024年度内に確実に当初予定以上の実績を上げる予定である.
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Causes of Carryover |
2023年度は次年度使用額の一部を用いて現実環境,HMDを用いたVR環境,没入型VR環境の歩行環境を全て一致させた上で,それぞれの歩行に関する情報を収集する実験を実施し,前述の両VR環境で生じた歩行速度の大小関係の相違のメカニズムについて検討する予定であった.この検討の実験を実施するにあたり,改めて現実環境に一致させたVR環境を両VR環境で構築するのに時間を要したため,想定していた被験者の半分程度(22名)しか収集できなかった.また2022年度来未実施の従来の実空間において明らかにされている歩行行動特性についての没入型VR環境におけるシミュレータによる再現性の確認実験も未実施となった.加えて全体的な研究進捗の遅れにより想定していた国際会議での報告も実施できていない.これらの理由で次年度使用額が生じている. 2024年度は次年度使用額の一部を用いて2023年度に実施した実験の被験者数を増やすとともに,両VR環境における視覚的歩行速度感についてのデータを収集する実験を実施し,前述のHMDを用いたVR環境でのみ現実環境よりも歩行速度が速くなるメカニズムについて視覚的歩行速度感から検証する予定である. その上で次年度使用額の残りを用いて2022年度来未実施の従来の実空間において明らかにされている歩行行動特性についての没入型VR環境におけるシミュレータによる再現性の確認実験を実施する予定である.
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