2020 Fiscal Year Research-status Report
数理モデルに基づいた電磁気特性や初期状態の電磁気特性に依存しない損傷評価法の構築
Project/Area Number |
20K05000
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
程 衛英 東北大学, 工学研究科, 講師 (40739661)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 材料評価 / 電磁気非破壊評価 / 数理モデル / 損傷 / 劣化 / スペクトル / 電磁気特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は材料の電磁気特性や初期状態の電磁気特性に依存しない、鉄鋼構造物実機における欠陥や減肉などの‘幾何寸法上の損傷’と‘材料特性変化という劣化損傷’を非破壊的に検査・評価する方法を確立することである。実施計画に従い、減肉や欠陥などの寸法評価と材質劣化評価を同時に展開した。初年度は ①二層積層部材における上下層それぞれの厚さの測定・評価法を構築した。先行研究では、単層非磁性・導電性被検体における導電率の把握が不要な板厚測定・評価法を確立できた。昨年度は、周波数掃引渦電流測定とインピーダンス正規化を行った上で、対周波数差分を行い、その差分により特徴量を抽出し、低周波と高周波帯域毎における特徴量を分析することによって二層積層の上層・下層の厚さを正確かつ簡単に測定・評価する方法を構築できた。これらの特徴量は各層の導電率に依存せず、この厚さ同定法の適用に当たって、上下層の導電率の大小関係を把握すれば、それぞれの正確な導電率の値を把握する必要はない。 ②非破壊・高感度な導電率・導電率変化を検出・評価する方法を構築できた。実施計画では劣化に伴い磁気特性変化のみに着目していたが、昨年度の研究において、鉄鋼構造材料の導電率が劣化とともに変化しており、導電率変化の検出・評価が材質や材料劣化評価に非常に有効であることを確認できた。現有の導電率測定法は、劣化による微小な導電率変化を十分検出できないことが懸念された。そのため、昨年度は非破壊かつ高感度な導電率や導電率変化の測定・評価を本研究に取り入れた。同じ厚さの被検体においてはスペクトル上に極値になる周波数の測定によって高感度で導電率や導電率変化を測定・評価できた。幾何形状・寸法が異なる被検体においては、検出コイルが共振になる周波数または共振点のインピーダンスの特徴量の測定によって、高感度・高分解能で導電率変化を検出・評価できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
欠陥や減肉などの‘幾何寸法上の損傷’の検出・評価はほぼ計画通りに進んでいる。初年度は非磁性である導電性二層積層の層ごとの厚さ測定・評価法を構築できた。強磁性導電性板の厚さ測定・評価も取り組み中である。 材質や劣化評価においては、計画外の高感度な導電率や導電率変化を測定・評価することを取り入れたため、磁気特性の測定・評価は計画より遅れている。しかし、導電率測定・評価も材質や劣化評価に必要なものであり、研究の最終目標に向かって進んでいる。また、新型コロナ感染拡大に伴って移動が制限されたため、新たな試験片の作成や磁気特性測定は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はほぼ計画通りに推進する予定であるが、最終目標を念頭に、研究中に得られた知見や社会情勢を踏まえ、柔軟に修正・対応していこうと考えている。 本研究では、材料の電磁気特性に依存しない欠陥や減肉のようなや損傷の寸法同定、また、初期状態の電磁気特性に依存しない電磁気特性変化による劣化評価を目標としている。寸法同定を電磁気特性のような材料固有因子に影響されないために、変化させられる計測条件(例えば、周波数)を変化させ、スペクトルにより共通の’不変‘な電磁気特性を取り除く方策を立てた。すなわち、一定帯域内に周波数掃引を行い、スペクトル解析により電磁気特性に依存しない寸法評価法を構築する。これからは研究対象(肉厚や欠陥、非磁性や強磁性など)に適した信号処理や数学モデリング方法を加え、各周波数領域の信号の特徴量を用いた寸法評価法を構築していく。 材料劣化評価においては、まず、所有の磁気特性データを分析し、劣化によって変化しない成分と変化する成分を見極め、変化する成分を抽出・モデリングする。また、昨年度開発した高感度な導電率測定法を用いて導電率を取得し、導電率変化と劣化度の相関を求める。よって、劣化の電気・磁気特性変化モデルを構築する。更に、現場や実機に適用できる非破壊電磁気計測法を開発する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染拡大に伴い移動制限などにより、新たな試験片の作成及び測定は延期になりました。出張や学会の参加などもなるべく控えるようになりました。よって。2020年度の助成金は全部消化切れなかった。 2021年度に感染症が落ち着くようになれば、計画通りの ①試験片作成や、②(出張に伴う)測定を再開、③研究成果もオフラインの学会で積極に発信する などを予定しています。 よって、次年度分として請求した助成金と合わせて使用する予定です。
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