2022 Fiscal Year Research-status Report
数理モデルに基づいた電磁気特性や初期状態の電磁気特性に依存しない損傷評価法の構築
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20K05000
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
程 衛英 東北大学, 工学研究科, 講師 (40739661)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 非破壊検査・評価 / 欠陥 / 減肉 / 導電率 / 透磁率 / 寸法評価 / 周波数掃引 / 電磁気方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は材料の電磁気特性や初期状態の電磁気特性に依存しない、実機鉄鋼構造物における欠陥や減肉などの‘幾何寸法上の損傷’と‘材料特性変化という劣化損傷’を非破壊的に検査・評価する方法の確立である。2020~2021年度は、非磁性の導電性二層積層部材の各層の導電率に依存しない層毎の厚さを評価する方法、及び劣化による導電率変化の高感度な検出・評価法を構築した。2021~2022年度は、強磁性鋼板の板厚測定・評価と強磁性炭素鋼パイプの肉厚や減肉の非破壊検査・評価法を構築した。2022~2023年度は被検体の導電率あるいは欠陥の導電率に依存しない欠陥寸法評価法を構築できた。また、マイクロ波測定における配管内面減肉の部位特定・寸法評価を行った。2022~2023年度の事績は以下である 1,導電率に依存しない欠陥の深さ評価法を構築できた。2021、2022年度における導電率に依存しない肉厚や減肉の検査・評価法を欠陥の深さ評価に適用できるように発展させた。周波数の掃引で得られた磁束密度信号を用いて導電率が不明である試験体に埋め込む理想欠陥(完全割れ、欠陥導電率は0)の深さサイジング法を構築できた。補償を行うことによって、EDMノッチで作成したマスターカーブを用いてリアル欠陥(欠陥内部分接触、欠陥導電率は0ではない)の深さを評価可能である。 2,研究が進んでいくうちに、マイクロ波帯域における損傷検出・評価も必要であることが明らかになった。マイクロ波測定信号の周波数―波数-空間のドメイン変換を行い、空間ドメインに信号を再構成できた。また、スペクトル解析によって、損傷寸法を評価した。このドメイン変換による損傷位置の同定及び損傷寸法の評価の研究は2023年に採択された新規テーマ【〈波数・空間〉ドメインにおける検査対象の位置同定と寸法評価のフレームワークの 構築】のベースにもなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
欠陥や減肉などの‘幾何寸法上の損傷’の検出・評価はほぼ計画通りに進んでいる。 2020~2021年度では非磁性である材料を対象に導電性二層積層の層ごとの厚さ測定・評価法を構築できた。また、計画外の材質や劣化評価に必要な高感度な導電率の測定・評価法も構築できた。2021~2022年度では、強磁性鋼板の厚さ測定・評価と鋼管の肉厚測定・評価を取り込み、導電率変化による影響が極めて小さい数Hzにおける板厚測定・評価法を開発した。また、磁気特性変化(透磁率と残留磁化)の影響を低減できる数十Hzにおける配管の肉厚測定・評価法を構築できた。 2022~2023年度では、周波数掃引法における欠陥の深さ評価を行い、欠陥が埋め込まれる試験片、あるいは欠陥内部の欠陥導電率に依存しない欠陥の深さ評価法を構築できた。また、マイクロ波帯域におけるパイプ内面減肉の検査・評価を行った。 よって、実機鉄鋼構造物における欠陥や減肉などの‘幾何寸法上の損傷’の検査・評価はほぼ計画通りに進み、計画外の成果(マイクロ波検査・評価)も得られた。 材質や劣化評価においては、計画外の高感度な導電率や導電率変化の測定・評価が出来た。磁気特性の測定・評価は計画より遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は新規の「波数・空間〉ドメインにおける検査対象の位置同定と寸法評価のフレームワークの構築」と統合して推進することを考えている。最終目標を念頭に、研究中に得られた知見を踏まえ、成果を最大限に得られるように推進すると考えている。 本研究では、材料の電磁気特性に依存しない欠陥や減肉のようなや損傷の寸法評価、また、初期状態の電磁気特性に依存しない電磁気特性変化による劣化評価を目標としている。電磁気特性のような材料の固有因子に影響されることなく損傷の寸法を評価するために、変化させることが出来る計測条件(例えば、周波数)を変化させ、スペクトル上に共通の’不変‘な電磁気特性を取り除くアプローチを立てた。すなわち、一定帯域範囲内に周波数掃引を行い、スペクトル解析により電磁気特性に依存しない寸法評価法を構築する。これからは研究対象(肉厚や欠陥、非磁性や強磁性など)に適した信号処理や数学モデリング方法を加え、各周波数領域の信号の特徴量を用いた寸法評価法を構築していく。 材料劣化評価においては、まず、所有の磁気特性データを分析し、劣化によって変化しない成分と変化する成分を見極め、変化する成分を抽出・モデリングする。また、2022年度に開発した高感度な導電率測定法を用いて導電率を測定し、導電率変化と劣化度の相関関係を求める。それによって、劣化の電気・磁気特性変化モデルを構築する。新たな材料劣化に伴う電磁気特性変化試験片の作成には膨大な費用が必要であるため、本研究の予算で内完了するのは極めて難しい。試験片を所有している共同研究先を見つけて進むことを考えている。
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Causes of Carryover |
研究が進んでいくうちに、マイクロ波帯域における損傷検出・評価も必要であることが明らかになった。2022~2023年では、マイクロ波測定信号の周波数―波数-空間のドメイン変換を行い、空間(パイプの場合は距離)ドメインに信号を再構成できた。また、スペクトル解析によって、損傷寸法(ここでは全面減肉の長さ)もできた。このドメイン変換による損傷位置の同定及び損傷寸法の評価の研究は2023年に採択された新規テーマ【〈波数・空間〉ドメインにおける検査対象の位置同定と寸法評価のフレームワークの 構築】のベースにもなる。今後、この二つのテーマを統合する予定である。マイクロ波領域の計測にvector network analyzer が使われている。今研究室が保有している機種(E8363B, Agilent Technologies)は2003年のモデルであり、Operation system はかなり古いWindows XP、保守契約もない。周波数帯域は40MHz ~40GHzである。万が一の備え、また、周波数帯域の拡張を考え、この(B-A)と新規テーマの2023年度の予算を合わせて、新たなvector network analyzerを購入することは望ましい。非常に高額の設備であるため、機種によって、合わせた予算も不十分な場合、リースでの使用も考えている。
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