2021 Fiscal Year Research-status Report
トンネル火災の早期検知と風速0化の有効性向上に関する研究
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20K05008
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Research Institution | Komatsu University |
Principal Investigator |
川端 信義 公立小松大学, 生産システム科学部, 教授 (90126631)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トンネル火災 / 早期検知 / 縦流換気 / 風速0化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は大きく2つの項目に分けられる. 1.縦流風速の変化に対する成層煙の動挙動特性 今年度は、成層状態の煙層の縦流風速が変化する場合の動特性の解明にシミュレーションにより煙挙動cfdシミュレーションが模型トンネルでの火災実験を再現しうるように、レイノルズ数による影響および壁での速度および温度境界条件について検討を行った。その結果、0.6m角の正方形断面トンネルにおける火災時の温度分布と比較し、よく一致することを確認した。さらに作成するトンネルの大きさについてシミュレーションによって検証を行った。 2.風速0化の効果的な運用法に関する検討 風速0化は重渋滞状態でトンネル火災が発生した場合に風速を迅速に低下させ0m/s近くに保ち、煙の成層状態を維持して煙層の下を避難行動可能とする対応で、日本のトンネル火災対応の特徴である。一方、欧州では縦流風速の低下はCOの発生量を増加させることから、火災時の風速を煙の遡上を阻止する風速3m/sとしている。2021年度は縦流風速を0m/s~3m/sの範囲で変化させたCFDシミュレーションおよび避難シミュレーションを行い、人的被害に対する影響について検討を行った。また、想定する火源規模は欧州は10MW~100MW以上と幅広い火災規模であるが、日本は30MWのみである。そこで、発熱規模を10MW~100MWに変化した場合の風速0化の効果についてシミュレーションによって明らかにした。その結果、勾配0%では60MW以上で避難時に煙に暴露される避難者が表れるものの、100MWでも負傷者はほぼ発生せず、風速0化は大規模火災でも有効であることが分かった。一方、勾配2%の場合は、30MW程度ならば負傷者の発生はほぼないが、50MW以上では避難口から100m以上離れた地点で行動不能の避難者が表れることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1.縦流風速の変化に対する成層煙の動挙動特性 本年度は模型トンネルを製作し、火災実験を開始する計画であったが、2022年3月に本学にトンネル火災実証実験室が新設されることになり、本研究で用いる模型トンネルの製作を実験室の完成に合わせて進めたため、火災実験の実施には至らなかった。本年度は、実験が出来ない分、シミュレーションを活用して模型トンネルのためのシミュレーション精度の確認(壁での摩擦応力のおよび熱伝達係数の境界条件の検討)と模型トンネルの温度分布計測システムの製作を中心に行った。 2.風速0化の効果的な運用法に関する検討 風速0化の評価の検証に関しては、火災規模が大きい場合や縦断勾配が変化した場合の有効性について拡張して比較検討を行った。しかし1.の項目の模型実験が遅れていることから、実験結果を反映した煙制御システムに関しては未だできていない。 本研究は3か年計画の2か年経過の時点で、研究全体の約50%の達成度である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.縦流風速の変化に対する成層煙の動挙動特性 本研究の当初の目的の一つは実大トンネルにおけるフォトダイオードの煙検知検証実験であったが、本年度のコロナ感染状況の悪化のため模型トンネルによる実験に変更した。これにより当初目的のフォトダイオードによる煙検知検証実験は困難になった。トンネル火災時の煙の挙動に関する従来の研究は、定常および準定常についての特性が中心で、縦流風速を急変させた場合の煙層の挙動などの動特性については殆ど研究されていない。本研究にとってこの動特性は縦流換気風速によって煙を制御するために、極めて重要な特性である。そこで計画を変更し、縦流風の変化による成層煙の挙動に関する動特性の解明を目的とした。次年度は改修した模型トンネルを用いて早急に実験を開始する。まず縦流風速が一定の状態から急激に0m/sに低下させる場合および周期的に縦流風速を変動させた場合の煙挙動(先端位置及び煙層の厚さ)に関する実験を行い、並行して行うcfdシミュレーションの結果と合わせた検討により、煙の動的挙動特性を解明する。 2.風速0化の効果的な運用法に関する検討 本年度までの検討により、勾配0%では、風速0化を行えば全員が避難をするという前提ならば全員が安全に非難することが可能であることが分かった。勾配がある場合は、2%程度の緩やかな勾配であっても単純な風速0化では負傷者が生じることが分かった。そこで、まず2%の場合について縦流風速を0.5m/s、1m/sとして避難環境に対する影響を把握する。その際には、単に煙の到達位置だけでなく、路面への拡散状況についても調べて、煙の成層状態を長く維持しうる換気風速についての知見をまとめる。その後、1.の煙挙動の動特性を応用して、煙を感知できるセンサーからの情報を基に縦流風速の制御を行った場合の煙の成層状態の維持特性についてシミュレーションによって解明する。
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Causes of Carryover |
本年度に模型トンネルの製作を計画していたが、本大学研究棟内のトンネル火災実証実験室の新設(2022年3月完成)に合わせて研究計画の修正をしなくてはならなかったため、本年度は模型トンネル内部に設置する熱電対による計測システムの製作、およびシミュレーション精度の確認を行った。また、本研究に関して大学院後期課程学生(留学生)をRAとして雇用し、その経費の一部を本研究経費で負担するように計画していたが、コロナ禍で来日することができず、次年度4月の来日になった。これらの、模型トンネル製作およびRA経費の一部を次年度に繰り越すことにした。 当初次年度予算と今年度未使用額を合わせた1,193,116円の使用内訳は、RA経費420,000円(28時間/週×10週×1,500円/時間)、模型トンネル製作費約400,000円(ケイカル板、鋼材、熱電対、)、スパコン使用料100,000円/年、学会発表等旅費100,000円、消耗品約180,000円の予定である。
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Research Products
(2 results)