2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of a system for selecting safe routes of evacuation from landslides and floods in villages in valleys
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20K05029
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
水野 秀明 九州大学, 農学研究院, 准教授 (80356104)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 暗渠 / 堆砂 / 3次元数値解析 / 浅水流方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
暗渠内における個々の流砂の挙動及び流れの水深と流速の空間分布を明らかにすることを目的として、水および流砂に見立てたガラスビーズと水を、屈曲した暗渠を有する実験水路に流し込んだ実験のうち、特にガラスビーズを流し込む前の段階における、水の挙動に対して3次元数値計算により再現計算を実施した。その結果、3次元数値計算結果の水面形は実験の結果とほぼ一致し、速度ベクトルの方向と大きさ、および圧力の3次元の空間分布を推定することができた。速度ベクトルの大きさは屈曲部の上流側で大きく減少するとともに、等圧面が屈曲部に近づくにつれて暗渠の天井に近づくことが分かった。これにより、ガラスビーズは屈曲部に近づくにつれて、上流側、すなわち減速する方向に力を受けていたことが推定でき、それによって暗渠の屈曲部の上流側で停止したと推定できた。 更に、質量保存則と運動量保存則を暗渠内で鉛直方向に積分し、流れの表面の圧力を新たな変数とすることで、2次元浅水流方程式を開渠だけでなく暗渠にも適用できるように拡張した。その2次元浅水流方程式を用いて、ガラスビーズを流し込む前の段階における、水の水面形を再現したところ、その計算結果が概ね実験結果と一致したことを確認した。 一方で、前述の2次元浅水流方程式に従来の開水路における、土砂の侵食・堆積速度式を組み込んだ数理モデルにより、暗渠内の堆砂過程を再現したところ、計算結果は実験結果と大きくずれることが分かった。これは、3次元数値計算により明らかになった速度ベクトルと圧力の空間分布が土砂の侵食・堆積速度式に反映されていないためと推測できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、水および流砂に見立てたガラスビーズと水を、屈曲した暗渠を有する実験水路に流し込んだ実験を対象として、3次元数値解析により水面形を概ね再現できたとともに、流れの中の速度ベクトルと圧力の空間分布を推定できた。更に、2次元浅水流方程式は一般的に開水路に適用される数理モデルであるが、それを暗渠にも適用できるよう拡張できた。一方で、拡張した2次元浅水流方程式に従来の土砂の侵食・堆積速度を組み込んだモデルを用いて、暗渠内の堆砂現象を再現したところ、計算結果が実験結果と大きくずれる結果となった。その原因は3次元数値計算により明らかになった速度ベクトルと圧力の空間分布が土砂の侵食・堆積速度式に反映されていないためと推測できており、次年度以降の数理モデルの作成方針が明確となった。 一方で、本研究の対象としている大分県津久見市内の土石流危険渓流とその流域内に存在する暗渠(雨水排水路)の地形的な特徴や避難経路にかかわる道路の特徴を把握するための現地調査は、コロナウィルス感染症拡大防止の観点から延期した。そのため、次年度以降、現地調査を実施する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、暗渠内における集団としての流砂の挙動と暗渠の閉塞過程を水路実験及び数値解析により更に明らかにするとともに、暗渠内の流れの水面形及び堆砂過程を再現できる、2次元浅水流方程式及び侵食・堆積速度に基づいた数理モデルを開発する。具体的には、水路実験では、複数個のガラスビーズを所定の割合で実験水路の上流側より供給して、暗渠の閉塞過程を再現する。ビデオカメラでガラスビーズの動きを撮影し、先頭のガラスビーズの停止過程及び後続のガラスビーズの停止過程を観察し、暗渠内でのガラスビーズの堆積過程を整理して、暗渠の閉塞過程を明らかにする。数値解析では、暗渠内のガラスビーズの停止・堆積の状況に応じて、流れの圧力と流速ベクトルの空間分布を3次元数値計算により推定し、暗渠内で停止又は移動しているガラスビーズに作用する力を推定する。その推定値を運動方程式に代入して、ガラスビーズの挙動を再現することによって、暗渠の閉塞過程を再現する。2次元浅水流方程式に基づいた数理モデルを開発では、暗渠内の流れを再現できるように、3次元数値計算により推定した圧力の空間分布より、暗渠の天井における圧力の推定式を作成し、2次元浅水流方程式と組み合わせた数理モデルを開発する。その数理モデルを用いて実験結果の再現計算し、開発した数理モデルの再現性を検証する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、コロナウィルス感染症拡大防止の観点から、現地調査を予定通り実施できなかったことに加えて、学内の水路実験を予定通り実施できなかったためである。 翌年度においては、コロナウィルス感染症拡大防止の観点から現地調査が可能となった時期に速やかに現地調査を実施するとともに、水路実験を継続して実施する予定である。
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Research Products
(1 results)