2022 Fiscal Year Research-status Report
城郭築石構造物の災害レジリエンス向上のための力学的安定性の定量的評価手法の提案
Project/Area Number |
20K05030
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
杉本 知史 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (60404240)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石塚 洋一 長崎大学, 工学研究科, 教授 (50284708)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 城郭石垣 / 築石構造物 / 遠隔モニタリングシステム / ワイヤレスセンサネットワーク / 動態観測 / 個別要素法 / 数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、城郭の築石構造物の変状観測のための遠隔モニタリングシステムの開発・運用と,個別要素法に基づく石垣モデルの数値シミュレーションにより,これらの構造物の静的・動的安定性に関するメカニズムを明らかにすることを目的としている。 2022年度の計画は、①熊本城と丸亀城でのモニタリングの継続と収集データの評価、②崩壊危険度判定基準の作成を行うこととしていた。 ①については、前年度に引き続き,本年度も熊本城でのモニタリングを継続して行った。城内4カ所10地点の築石に対し、ジャイロセンサーを搭載した通信モジュールを固定設置し、10分ないし30分ごとに回転角を計測し、無線通信~通信親機~携帯回線を通じ、遠隔でデータ収集を行った。季節変動は確認されているものの、大きな変化はいずれも確認されておらず、また期間中大きな地震動も発生しなかったことから、築石の安定性を確認することはできたものの、挙動の特徴を明らかにするには至っていない。これに加え、レーザー距離計を用いた石垣表面形状の定期的観測を城内50カ所以上で今年度も行い、この結果においても顕著な変状は確認されなかった。さらに、モニタリング箇所の選定において、不安定築石を定量的に評価する手法を提案するため、築石打撃による振動を加速度センサーで計測する手法の検討も新たに行い、スペクトル解析により明らかな築石のかみ合わせ具合の差異を確認した。 ②については、個別要素法による築石構造物のシミュレーションより、石垣の構造形態、背面地盤の物性、地震動の規模により崩壊危険度の分類に取り組んでおり、一定の成果は得られたものの、判定基準の作成には至っていないことから、次年度も継続して取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熊本城でのモニタリングの継続と収集データの評価については、2021年度に引き続き,2022年度も熊本城でのモニタリングを継続して行った。城内4カ所10地点の築石に対し、ジャイロセンサーを搭載した通信モジュールを固定設置し、10分ないし30分ごとに回転角を計測し、無線通信~通信親機~携帯回線を通じ、遠隔でデータ収集を行った。季節変動は確認されているものの、大きな変化はいずれも確認されておらず、また期間中大きな地震動も発生しなかったことから、築石の安定性を確認することはできたものの、挙動の特徴を明らかにするには至っていない。これに加え、レーザー距離計を用いた石垣表面形状の定期的観測を城内50カ所以上で今年度も行い、この結果においても顕著な変状は確認されなかった。さらに、モニタリング箇所の選定において、不安定築石を定量的に評価する手法を提案するため、築石打撃による振動を加速度センサーで計測する手法の検討も新たに行い、スペクトル解析により明らかな築石のかみ合わせ具合の差異を確認した。 崩壊危険度判定基準の作成については、個別要素法による築石構造物のシミュレーションより、石垣の構造形態、背面地盤の物性、地震動の規模により崩壊危険度の分類に取り組んでおり、一定の成果は得られたものの、判定基準の作成には至っていないことから、2023年度も継続して取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、2022年度をもって終了する予定であったが、遠隔地でのモニタリングの実施が研究の中心であったことから、コロナ禍の影響から、対象を熊本城のみに絞るとともに、進捗状況にも記したように種々の計測手法により、築石構造物の変状の進行の有無を継続的に調査するとともに、計測すべき箇所を抽出するための新たな手法の提案にも取り組んできた。また、個別要素法による数値シミュレーションにも取り組み、築石構造物の動的挙動や力学的安定性の評価手法を提案した。 2023年度も期間を延長して、モニタリングデータの分析、数値シミュレーションを実施し、これらの成果を整理した築石構造物の崩壊危険度判定基準の作成に取り組む。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染の状況が改善しない中、研究計画で観測対象としていた香川県丸亀城での計測が実施できなかったことから、そのための旅費支出がなされなかったため、使用額に差額が生じた。次年度以降の計画にも記述した通り、今後は熊本城での観測対象を拡大することでこの代替とするため、当該差額をこれに充てる計画としている。
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Research Products
(4 results)