2021 Fiscal Year Research-status Report
並列タンクモデルによる土砂災害警戒情報の精度向上に関する実践的研究
Project/Area Number |
20K05032
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
高原 利幸 金沢工業大学, 工学部, 准教授 (20324098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 勝利 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (70232767)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 並列タンクモデル / 土壌雨量指数 / 地質図 / クリティカルライン / RBFN |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで助成を受けてきた関連課題から,土砂災害が発生する降雨パターンは地質構造に依存し,広島型の土石流などが発生する短期豪雨型,地層境界に浸透した水によって発生するため長雨で災害が発生する長期小雨型,これらのどちらかへの判別が難い中間型の3つに分類できることがわかっている.それぞれ,地質構造や特性に支配されるため,他の降雨パターンでの土砂災害発生は極めて稀であることが確認されている. この中間型は,「層厚が薄いため地層境界型であるが直接浸透型に近い降雨パターンで災害が発生する,またはその逆の場合」が混在していると考えられたため,5万分の1の地質図を新たにデジタイズし,被災状況,被災時の降雨パターンを検討することで,地層境界型もしくは直接浸透型に細分類を実施した.今後,新たな被災データによって,これらの分類の妥当性を確認しているところである. 一方で,新しく分類し直された箇所に置いて,提案している並列タンクモデルのパラメータの変更なしに適用できるかどうかについて検討も進めたところ,係数の修正によりある程度可能であることが確認できた.ただし,今後保水能力を示すタンクの容量は地質および斜面角度から求める必要がありそうで,さらなる向上に向けては今後検討が必要であることも明らかになった.実際の地下水位とは異なるものの,土壌雨量指数のような単純な指標でも,捕捉率や的中率が実用レベルと考えている50%弱での利用可能が十分あることは確認できてきた. 昨年は屋外観測点を増やすために,学内施設での観測などに変更して,実測に基づくパラメータの作成を行う予定であったが,学内での作業も測定候補地点のキャンパスが異なることから十分制限が取れなかったため,本年改めて取り組む予定である. 最終的に提案する並列タンクモデル指標による災害予測と,従来の土壌雨量指数による災害予測の比較を進める予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
活動の自由度は一昨年度と比較して格段に向上したが,その際に十分メンテナンスができなかった計測機器の不具合修正などにかなりの時間を要した.山麓にある大学施設内での測定に切りかえの予定であったが,学内であってもキャンパスが異なるためある程度の行動制限があり,計画全体としては十分に進まなかった.ただし,今年度は制限もほぼなく実施計画を練り直し遂行予定である.今年度以降は予定通りに進められるのではないかと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
短期豪雨型に関しては,従来の土壌雨量指数による方法でも50%程度の捕捉率があり,やや煩雑な手法ではあるが従来の土壌雨量指数をもちいても,長期小雨型地域でも40%近い捕捉率を実現できた.本研究では,さらなる長期小雨型の捕捉率,的中率の向上とともに,新しい並列タンクモデル指標を用いることで,煩雑な手順を踏むことなく,災害発生予想ができるように改善する予定である. このために同じ地形・地質構造の場所では同じ降雨パターンで土砂災害が発生するという知見を利用して中間型を長期小雨型または短期豪雨型のどちらかに振り分け,2018年以降に発生した土砂災害によって並列タンクモデル指標の有効性を確認する予定である.
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Causes of Carryover |
中間型に分類されるものの,地層境界型であるとか直接浸透型であると考えられる崩壊斜面を県内外問わず選定し,地下水位の観測を次年度に開始するために,調査旅費,計測器の通信費,簡易地盤調査費用を見込んでいたが,いずれもコロナ禍での行動制限により実施が困難であったため. また,学内の制限も完全に撤廃されず,学内の準的地における計測も進まなかったため.
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