2021 Fiscal Year Research-status Report
小型鉛直レーダ網を用いた豪雨・豪雪防災科学システムの構築
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20K05037
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
Principal Investigator |
椎名 徹 富山高等専門学校, その他部局等, 教授 (80196344)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 鉛直レーダ / 豪雨・豪雪 / 防災科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、小型鉛直レーダ網を活用した豪雨・豪雪発生機構の解明を行い、降水強度分布の高精度測定・予測を行う防災科学システムの構築を目的とする。 小型鉛直ドップラーレーダを一定距離間隔にて3台配置し、レーダで囲まれた三角地帯内において、最大高度6000mまでの3次元空間内の降水現象を10秒間隔の時系列で捉える。更に、地上付近を落下する降雨および降雪粒子の形状、含水率と落下速度を測定し、降水雲から地上までの降雨・降雪過程を高精度測定し、降水粒子生起確率モデルにより降水強度予測を行う防災科学システムの構築を目指す。 地上測定による降雨・降雪粒子の形状や落下速度等をもとに、種々の降水粒子の電磁波散乱特性を解明する。更に、大気圏下層の降水現象について高分解能にて時空間測定を行い、粒径・落下速度の分布を解析する。次に、降水粒子生起確率モデルを機械学習にて作成し、降水強度予測を行う。 今年度は、光学式ディスドロメータParsivelのオーバーホールを行い、降水粒子の粒径・落下速度、粒子種の測定を行う環境を整備した。また、ドップラーレーダ1台のオーバーホールも実施し、各観測機器と同期測定可能なシステムを再構築した。次に、レーダによる後方散乱量とディスドロメータによる粒径・落下速度分布から、降水粒子の電磁波散乱特性の解明を試みた。更に、粒径・落下速度分布の十分統計量を利用した降水種の分類を試みたところ、良好な結果が得られた。一方、CNNを用いた機械学習により、ドップラーレーダスペクトルによる降水種判別の精度が向上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍等による半導体部品等の入手困難が発生し、光学式ディスドロメータおよびドップラーレーダのオーバーホールが遅れたが、研究は概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
(Ⅰ) 降雨・降雪粒子の電磁波散乱特性の解明:光学式ディスドロメータにより各粒子の粒径および落下速度とその分布を測定する。次に、上下非対称な扁平雨滴単体の消散・散乱効率を点整合法により求め、降水粒子の散乱特性を解析する。 (Ⅱ) メソガンマスケール降雨・降雪現象の時空間解析:3台のレーダを数百m以上の間隔で三角配置し、高時間分解能(10秒間隔)で地上付近から高度6000mまでの電磁波散乱強度分布を同期測定する。次に、降水粒子の消散効率を用いて、測定経路(高度)によるレーダの減衰補正を行う。更に、ニューラルネットワークによる降水種類の自動判別を行い、散乱効率から高度ごとの粒子種類、粒径と落下速度分布を求める。また、ライダにより高度7700mまで10m間隔にてエアロゾル観測を行い、その移動速度とレーダの落下速度分布をモーメント解析し、大気対流速度の推定を行う。最後に、レーダに囲まれた空間内の降水粒子情報(粒子種、粒径および落下速度分布)をスパースモデリングにより取得し、大気対流を考慮した時空間解析を試みる。 (Ⅲ) VAEによる降水粒子生起確率モデルの作成:地上付近の降雨・降雪粒子観測を教師データとして、機械学習により種々の降雨粒子や降雪粒子の生起確率モデルを作成する。 (Ⅳ) 降水強度分布予測を行う防災科学システムの構築:(Ⅱ)の3次元空間内の降水粒子種類、粒径および落下速度分布に粒子生起確率モデルを適用し、降水強度予測を試みる。更に、地上付近の降水強度測定値およびMPレーダやアメダス等と本予測結果の比較・検証を行い、研究にフィードバックする。
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