2021 Fiscal Year Research-status Report
北東北日本海沿岸低地における津波及び洪水災害評価の高度化に関する研究
Project/Area Number |
20K05042
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
鎌滝 孝信 岡山理科大学, 理学部, 教授 (50631280)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 津波堆積物 / 洪水堆積物 / 日本海東縁 / 地質調査 / 津波 / 洪水 / 火山泥流 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国は沿岸部に人口が密集しており,水災害の頻度や規模に関する将来予測技術を高度化することは,沿岸低地における防災対策を進める上で重要な課題といえる.北東北日本海沿岸地域では,古文書等による災害記録に乏しいため,過去の大規模な津波や洪水といった将来予測に資する情報が不足している.本研究では,北東北日本海沿岸低地において津波および洪水堆積物に関する地質調査を実施し,それらの形成年代やより詳細な空間的分布範囲を明らかにすることによって,過去に発生してきた津波および洪水の頻度や規模を推定することを目的とする. 2021年度には,秋田県にかほ市象潟および仁賀保の沖積低地において津波堆積物および洪水堆積物に関する現地調査を実施した.現地では長さ2m程度の堆積物試料を数本採取し,その粒度,堆積構造,含まれる化石,地層の境界面の形状などに基づいて層相を記載し,それぞれの地層が形成された堆積環境を推定した.その結果,過去の津波および洪水によって形成されたと推定されるイベント堆積物が仁賀保地域の沖積層からみいだされた.これらイベント堆積物の堆積構造について,その一部をX線CT画像等を用いて詳細に観察し,津波堆積物と洪水堆積物の内部構造についてそれぞれの特徴を示した.一方,象潟地域では1804年象潟地震に伴うと考えられる津波堆積物の平面的な分布を明らかにした. 今後,イベント堆積物の内部構造等に関してより詳細な解析作業をおこなう予定である.一方,当初予定していた放射性炭素年代測定や微化石分析等の分析作業は,十分な量の試料を採取できなかったことから2022年度に実施することとした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は秋田県内の2地域で地質調査を実施し,そこから津波堆積物および洪水堆積物と推定される堆積物を識別した.また,次年度に実施を計画している調査地域についても下見等をおこない,調査実施の目処をつけた.したがって本研究課題全体のスケジュールとしては,ほぼ計画どおりの進捗と考える.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,秋田県北部および南部の沿岸低地を対象に現地調査をおこなう.採取する試料は放射性炭素年代測定,粒度分析,微化石分析やX線CT撮影措置を用いた解析等をおこなう予定である.当初の計画通り,今年度までに主要な現地調査をほぼ完了させ,青森県,秋田県周辺における津波堆積物や洪水堆積物の時間的,空間的分布から,日本海北部の沿岸低地における大規模な津波や洪水等水災害につながる事象の発生時期や履歴および浸水範囲について検討するための基礎データを整理する.2023年度はそれまでに得られたそれぞれの地域における津波および洪水堆積物の形成年代や分布様式から,それぞれの沿岸低地における津波や洪水の発生頻度および浸水範囲について評価していく.
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Causes of Carryover |
予定していた微化石分析等を2022年度に実施することとしたため,次年度使用額が生じた.次年度使用額は,2022年度にその分析作業をおこなうために使用する.
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