2021 Fiscal Year Research-status Report
大雪時におけるスタック車両発生条件の定量的評価と予測技術開発
Project/Area Number |
20K05043
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
藤本 明宏 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (90456434)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河島 克久 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 教授 (40377205)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 大雪 / 立ち往生 / 車両滞留 / スタック車両 / 大型車 / データベース |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、大型車のスタック発生メカニズムの解明、スタックの危険性の定量的評価およびスタック発生予測モデルの開発を実施した。また、過去に発生した雪による車両滞留の事例を整理し、データベースを作成した。 2022年2月に北海道千歳市において、実車試験を実施した。この実車試験はスタックのし易さ(スタック脆弱性)を定量的に評価することを目的とした定量化試験と、大型車のスタックメカニズムを検証することを目的としたメカニズム試験に分けられる。定量化試験では、載荷の有無や輪荷重を考慮して、大型車を含め各車種のスタック脆弱性を定量的に評価できた。メカニズム試験では、トラクターとトレーラーの連結車において、圧雪路面に凹凸が発生する状況下では著しくスタックし易くなる可能性があることを明らかにした。 スタック発生予測モデルに関しては、路面雪氷状態予測モデルをスタックリスクモデルへと発展させた。この関係性については特許を出願した。また、スタックリスクモデルをWeb上に公開するシステムを構築し、新潟県、福井県および鳥取県を対象として昨冬にスタックリスクの予測を試行した。 2020/21年冬期までに日本において発生した雪による車両滞留イベントについて、発生日時、場所、路線名、発生原因、車種、滞留規模、発生状況等をとりまとめ、「雪による車両滞留イベントデータベース」として公開した。 以上、大雪による立ち往生が多発し、その対策が急務となっている中、スタック発生メカニズムの解明やスタックの危険性(ここではスタック脆弱性)の定量的評価は効果的なスタック対策やドライバーへのより適切な啓発に繋がる知見である。また、スタック発生予測モデルは広域迂回や予防的除雪の適切な実施を支援する技術となる。さらに、雪による車両滞留イベントデータベースは、気象的見地から車両滞留の発生リスクを推定するデータとしての活用が期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、スタック発生の要因となる窪みや凹凸のある圧雪路面の形成メカニズムやそうした圧雪路面でのスタックメカニズムを明らかにしたが、取り扱いの容易さから2 tアルミトラックのみで実車試験を実施していた。大型車を用いた実車試験の実施はその費用、レッカー車や大型車の手配、圧雪路面の作成など簡単でなかったが、本課題とは別に大型車のスタックメカニズムを解明する受託研究に採択し、またトラック協会の協力も得ることができ、実験を実施することができた。実験期間、実験地は記録的な大雪となり、本実験において理想的な圧雪路面を作成することができ、順調に実験を遂行できた。本実験より、大型車のスタック発生メカニズムの解明に加えて、本研究課題であるスタック脆弱性を定量的に評価することができ、本研究は大きく前進した。 スタック発生予測モデルについては、モデルの骨格を構築することができ、実際に気象予報データを取り込んで予測を試行することができた。モデルの構築やシステム化については、事前に特許出願を想定しており、予算と時間が必要と考えていたが、予定より早く順調に進んだ。 雪による車両滞留イベントデータベースは、当初の計画に含まれていないが、大雪による立ち往生の対策の検討やスタック発生予測モデルを実用化する上で欠かせない基礎資料となることから、とりまとめることにした。 以上、計画以上の成果を得られたことから、本研究課題の進捗は当初の計画以上に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、計画時の内容は全て着手でき、一定の成果が挙げることができた。本年度は残された課題の中で、タイヤチェーン装着効果の解明、道路勾配がスタックに及ぼす影響評価を重点的に取り組む。また、計画には含まれていないが、スタック発生予測モデルの検証についても着手する予定である。 タイヤチェーン装着効果については、昨年度に実施した実車試験の方法で評価できると考えている。計画どおり、タイヤチェーン装着効果を明らかにする実車試験を実施するとともに、計画以外のノーマルタイヤを対象とした実車試験など、本試験方法によるスタック脆弱性評価を広く適用させるために、他の競争的資金の獲得も目指す。 道路勾配がスタックに及ぼす影響については、上記のタイヤチェーン装着効果を解明する実車試験に併せて実施するか、あるいは別の実施試験で実施する。様々な道路勾配で圧雪路面を作成し、走行試験を実施することは極めて困難であることから、室内実験も組み合わせて定量的な評価を検討する予定である。 スタック発生予測モデルの検証については、2022年度から道路管理者を含めた共同研究を実施することになったので、本課題のモデルの検証をそのフィールドや道路情報を提供を受けて実施する予定である。モデル検証を行う道路は積雪地域にあるが、スタックが発生するような事象に立ち会う可能性は高くないため、まずは路面雪氷状態予測の精度を検証し、スタックの事象が発生した場合にはスタック発生についても計算精度を検証する。
|
Causes of Carryover |
2021年度の研究では、新たに大型車のスタックメカニズム解明に関する研究を立ち上げ、その研究で別の競争的研究資金を獲得できた。本課題の実車試験と上記研究の実車試験は試験地の貸与や圧雪路面の作成など共通する部分が多く、本科研費の支出を抑えることができた。 この差額は2022年度冬期に実施予定の実車試験またはモデル開発に使用する。2022年度も本課題とは別の研究として競争的研究資金の応募を予定している。採択されなかった場合には、差額を含め本科研費の研究費を用いて実車試験を実施する。採択された場合には、共通部分の費用を按分し、本課題の実車試験の回数を増やすか、規模を大きくして、研究成果の充実を図る。または、スタック発生予測モデルの拡張に使用する予定である。
|
Research Products
(5 results)