2021 Fiscal Year Research-status Report
A Study on monitoring of seismic EM waves focusing on a low-frequency range below 10 Hz
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20K05053
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
河合 淳 金沢工業大学, 先端電子技術応用研究所, 教授 (10468978)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | SQUID / 地震 / 電磁波 / 低周波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、高磁場分解能を有する超伝導量子干渉素子(SQUID)磁力計を2か所に設置し、ELF帯域の低周波領域(DC~100Hz)における電磁波の精密な比較観測を行い、地震活動に関連する電磁波現象の検出を試みることである。特に,従来の誘導コイルが苦手な10Hz以下の超低周波領域での地震電磁気現象のモニタリングの可能性を検証する。 昨年度に引き続き観測場所として選択した能登半島(輪島市門前地区皆月:MNZ)と白山麓(白山市白峰地区西山 :NSY)にSQUID磁力計1台ずつをそれぞれ設置し、電磁波観測を行った。同時観測期間は6/9から積雪期に入る11/15までであった。特に、2021/8頃より能登半島の先端付近(珠洲市)での地震活動が活発化し、同時観測期間にM4以上の地震が計7回発生した。観測終了後、地震発生時における両観測地点での観測信号を順次解析しているが、M5.1の地震が発生した9/16 18:42(LT)に関しては地震発生の約2分前にMNZにおいてNSYと異なる数秒間の信号が確認できている。ただし、この信号が電磁的なものか極微弱な地震(振動)によるものかは現時点では明確ではない。また、60Hzから80Hz付近の比較的高い周波数領域においても地震発生前後での背景ノイズに変化が確認できている。この1回だけを取って地震との関連性を議論することは難しいため、他の地震発生時の信号も含め注意深く調べているところである。一方、M4クラス以下の地震発生時にはMNZとNSYで有意な信号差は確認できていない。今後、背景ノイズの変化などにも着目して引き続き解析を続ける予定である。尚、令和2年度の観測結果を元に、2地点間での差分計測によって背景ノイズとなるShcumann共鳴がキャンセルできることを令和3年の日本地球惑星科学連合大会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナの影響が治まってきた令和3年度は出張制限も緩和され、また令和2年度に使用できなかった分の液体ヘリウムは出来るだけ研究所のヘリウム回収・再凝縮システムを用いて保管していた。この保管分を使うことで令和3年度の観測には大きな支障は生じず、令和2年度に比べ2地点での電磁波連続観測期間を長めに遂行することができた。また、NSYの観測地点(白山高山植物公園駐車場)に関しては、令和2年から令和3年の冬季にかけての積雪の重みで発生した地割れが徐々に進行するという事態が発生した。この場所は盛り土で造成されており、白山市からの依頼も受けて、観測装置に急遽傾斜計を追加し、データロガーの空きチャンネルを利用して地割れの進行をモニタしながらの観測となった。幸い観測期間中での装置設置場所への影響は無かった。フランスのグループとのデータ比較などの研究協力に関しては、令和3年度も新型コロナの影響で先方の研究活動が滞っていた関係で進展は無かった。以上のような進捗状況ではあったが、研究課題の遂行状況としては概ね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の観測計画については最終年度ではあるが、能登半島での地震活動が活発なことから、NSYに設置していた装置を震源に近い珠洲市(SUZ)に設置し、能登半島の東(MNZ)と西(SUZ)での差分観測を試みる予定である。ただし、令和3年の秋頃からポストコロナにおける急激な経済回復による世界的な物流逼迫の影響により、国内における液体ヘリウムの供給が滞っており、更には年度末に起こったロシアのウクライナ侵攻の影響で液体ヘリウムの購入が大変厳しくなってきている。すでに令和4年3月の時点で業者から液体ヘリウムの注文を受けても供給は保証できないとの連絡が入っている。研究所で保管していた液体ヘリウムも底を尽き始めており、令和4年度は液体ヘリウムが手に入るかどうかが最大の懸念事項である。令和3年度の年度末時点で約2ヶ月間は同時観測を行えるだけの液体ヘリウムは何とか確保しているものの、早めに装置を設置し、地震活動が活発な期間のデータをなるべく多く取得したいと考えている。仮に液体ヘリウムが入手できないという状況になった場合は観測自体が不可能になるので、大学当局とも相談の上その後の方策を講じたい。新型コロナの状況も完全には収束としたと言えないが、この点に関しても大学当局とも相談の上、感染対策をしっかり行った上で観測活動を遂行する予定である。データ解析に関しては、過去2年間の膨大なデータを引き続き順次解析する予定であるが、地震計では検出できないレベルの極微弱な振動(微弱地)にも着目し、震源域と遠方での差分計測の検証を行う予定である。フランスのグループとの交流やデータの比較については、令和4年度は3年ぶりにWorkshopが開催されるので参加を予定しており、情報交換等を行うことにしている。
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Causes of Carryover |
令和2年度は新型コロナの影響で観測出張が制限され、観測期間を計画よりも短縮せざるを得なかった。観測期間の短縮に伴い出張費の消化だけでなく、液体ヘリウム購入費の消化も十分に進まなかった。令和3年度については新型コロナによる影響も緩和され、ほぼ計画通りの観測期間を設けることができたものの、液体ヘリウム購入費に関しては令和2年度に当該研究で繰り越した分が残る形となった。更に、当該研究以外で研究所にて購入した液体ヘリウムについてもコロナ禍の影響による研究活動の停滞から在庫が十分あり、令和3年度の当該研究に順次使用することができた。その結果、当該研究で予定していた液体ヘリウム購入費の消化が進まなかった。一方、令和2年度に予定していたデータ解析用のパソコンに関しては令和3年度に購入した。令和3年度の後半から更に液体ヘリウムの購入が難しくなり、令和4年度については需給状況が非常に厳しく先行きが全く予想できないが、出来るだけ長期の観測を遂行してデータを蓄積することを最優先し、必要な経費の支出に努める予定である。
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