2021 Fiscal Year Research-status Report
深層学習による衛星データの機械学習と土砂崩壊地の自動抽出
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20K05054
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Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
小西 智久 広島工業大学, 環境学部, 准教授 (40559960)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 畳み込みニューラルネットワーク / ディープラーニング / 合成開口レーダ / COSMO-SkyMed / ALOS-2/PALSAR-2 / SPOT-7 |
Outline of Annual Research Achievements |
災害発生時の被災状況の早期把握のため、天候や昼夜によらず地表面の状態を観測可能な人工衛星搭載の合成開口レーダ(Synthetic Aperture Radar: SAR)データの活用が期待されている。本研究では、画像認識で成果を上げている深層学習を用いて災害前後のSARデータから土砂崩壊地を抽出することを目的とする。さらに、波長や観測方向および観測モードの異なるSARデータを用いることで土砂崩壊地抽出に適した手法を確立する。 2021年度はSARデータにCNN(Convolutional Neural Network)を適用して土砂崩壊地を抽出するための学習データを構築する方法について検討を行った。一般的にSARデータよりも光学衛星データの方が地表面状態の識別に適していることから、高分解能光学衛星データにCNNを適用して教師データを作成する。2018年に発生した北海道胆振東部地震の発生後に観測されたSPOT-7データに全層畳み込みニューラルネットワークの一つであるU-Netを適用して土砂崩壊地抽出を行った。この抽出における教師データと検証用データは国土地理院が公開している斜面崩壊・堆積分布図から作成した。モデルへの入力はSPOT-7データの異なる観測バンドの組み合わせを4種類準備して比較を行った。学習に使用していないテストデータを用いて比較を行った結果、SPOT-7の可視青、可視緑およびNDVIを入力データとした場合に高いF値を示した。これにより光学衛星データにCNNを適用する土砂崩壊地抽出に適した観測バンドを明らかにすることができた。 SARデータにCNNを適用する被災状況把握の応用事例として洪水域抽出を実施した。2011年に発生したタイ・アユタヤにおける洪水の前後に観測されたCOSMO-SkyMedデータにU-Netを適用して洪水域抽出を行いその有効性を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度はSARデータにCNNを適用して土砂崩壊地を抽出するための学習データを多数用意するために高分解能光学衛星データから土砂崩壊地抽出データを作成する方法を検討した。北海道胆振東部地震の発生後のSPOT-7データにCNNを適用して土砂崩壊地抽出を行った。光学衛星データの観測バンドの組み合わせを調整して土砂崩壊地抽出におけるパラメータの最適値を求めた。国土地理院が公開している斜面崩壊・堆積分布図から作成したテストデータを用いて検証を行い、F値72.9%を得た。この結果は一定の成果と言えるが、モデルの改良や入力データの追加など改善の余地があると考えている。 SARデータにCNNを適用した被災状況把握の応用としてタイ国アユタヤの洪水域抽出を実施した。洪水前後のCOSMO-SkyMedデータにU-Netを適用した洪水域抽出を行い、閾値法より有効であることが確認できた。これによりSARデータにCNNを適用する被災状況把握は土砂崩壊地だけでなく洪水域に対しても有効である見込みが高い結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、SPOT-7データにCNNを適用した土砂崩壊地抽出において、モデルの改良を行うことと、入力データとして災害前の衛星データなどの情報の追加を行い、抽出精度の向上をはかる。また、これまでにモデル学習を行っていない国内外の土砂災害についてもSARおよび光学衛星データを用いて同様の解析を行い、モデルの性能を向上させる。さらに前年度までに開発したCNNをもとに災害直後の1シーンのSARデータのみから土砂崩壊地を抽出する手法を開発する。1時期のSARデータのみでは得られる情報が限られるため、表面散乱、体積散乱、2回散乱などの情報が分析可能なALOS-2/PALSAR-2のフル偏波モードデータを解析する。そして、CNNへ入力する散乱成分を比較して土砂崩壊地抽出に適した手法を確立する。抽出精度が向上しない場合には、標高や傾斜角等の地形データやLandsat-8のように災害前の観測データが必ず存在するデータをSARデータと併用する手法を検討する。 以上のSARおよび光学衛星データによる土砂崩壊地抽出に関する検討結果と解析事例に基づき、国内外での学会発表や論文投稿を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により国際学会がオンライン開催となり旅費が発生しなかった。また、対面での土砂崩壊地データ作成のアルバイト業務が長期間実施できなかったため、人件費がほとんど発生しなかった。次年度は今年度完成できなかったデータ作成のアルバイトを実施してもらう予定である。その他には衛星画像の購入、国際学会参加費を中心に支出する予定である。
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