2020 Fiscal Year Research-status Report
中性子・放射光X線散乱を用いた充放電中の蓄電池の伝導イオンの時空間流れの解明
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20K05061
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福永 俊晴 京都大学, 複合原子力科学研究所, 名誉教授 (60142072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 一広 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (40362412)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中性子散乱 / X線回折 / 原子構造 / イオン伝導 / 電池材料 / MEM解析 / BVS解析 / 熱分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、第4世代中性子回折装置SPICAや世界トップクラスの装置を活用し、充放電中の固体構造(原子配列)と固ー固界面構造を原子レベルで可視化するとともに、伝導イオンの動きも直接観察する。同時に、歪んだ結晶や非晶質でも伝導イオンの流れを可視化できるBVSイメージング法などを活用し、固体内のイオン伝導経路や固ー固界面内のイオン伝導経路も可視化し、伝導イオンの流れを明らかにすることを目的としている。 昨年度は、交流インピーダンス装置、熱分析装置、X線回折装置および中性子回折装置SPICAを利用して、固体電解質のイオン伝導特性、構造相転移および詳細な結晶構造(室温)の評価を行った。中性子回折実験の結果から、フッ素系固体電解質のフッ素イオンのイオン伝導経路を提案した。 例えば、タイソナイト型構造をもつCeF3にアルカリ土類金属を一部置換した Ce0.95A0.05 F2.95は、全固体用固体電解質の有力候補の1つであることから、Ce0.95A0.05F2.95(A=Ca、Sr及びBa)の電気伝導率及びSPICAによる中性子回折実験、結晶構造解析を行なった。イオン伝導率では、特に、Ca添加が最も高いことが分かった。詳細な結晶構造解析から本系では3つのFサイト(F1、F2及びF3)が存在し、その中でF1サイトのみにF欠損が生じていることがわかった。さらに、M-F原子間距離(M=Ce0.95Ca0.05)の構造情報を利用し、Bond Valence Sum(BVS)解析から、各F1、F2及びF3のBVS値を評価した。その結果、F2のBVS値が最も小さい値を示しており、M-F2間でのやや強い結合が示唆された。以上の結果から、この固体電解質では、F1及びF3サイト経由する方が、Fイオンにとって動きやすい環境であると推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の中、中性子散乱実験を行うためのJ-PARC/MLFへの出張を控え、試料送付で、現地の研究者に実験を依頼していた。それ故、研究が特に進んでいるとは思えないが、現在、研究成果をまとめ、2報目の投稿論文を準備していることから、ほぼ順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、次世代電池としてのフッ化物系全固体電池の研究を推進しており、その中でもフッ素系固体電解質に着目して、イオン伝導経路の解明を推し進めている。最近、我々は世界最高のフッ素イオン伝導特性を持つ固体電解質を見いだしたので、その構造ならびにフッ素イオン伝導経路の解明に努力しているところである。その解明後は、全固体電池を形成させ、電池特性を明らかにすると共に、本研究課題の目的である、充放電中のオペランド実験を行い、イオン伝導経路の解明を推し進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、J-PARC/MLFでの中性子散乱実験の出張を押さえ、試料送付などで、現地の研究員に実験そのものをお願いしたため、出張費が出費できなかった。 今後、予定していた研究計画に沿って、新たな固体電解質を作製し、種々の実験(電池特性実験、固体電解質の特性実験、そして中性子回折実験や中性子準弾性散乱実験なども含む)を行っていく予定である。
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Research Products
(1 results)