2020 Fiscal Year Research-status Report
高時間分解能In-situ XRD測定系構築による高温変形中の微細組織変化の解明
Project/Area Number |
20K05063
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
足立 大樹 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (00335192)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高温変形 / In-situ測定 / 転位密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
高温において材料の力学応答は刻々と変化するため、変形応力と微細組織変化の関係を良く理解することを目的として、SPring-8放射光を用いた高温変形中のIn-situ XRD測定を高時間分解能で実施するための測定系の構築を目的とした。 加熱方式はX線経路を確保しやすいように、電熱線を試料周りに配置するのではなく、加熱したガスを試料周りにフローすることによる加熱を試みた。回折ステージ上に設置した小型引張試験機にAl-Cu合金試験片を取り付け、横からガスフローするチャンバーを挿入し、X線経路に窓をつけた。その結果、試料温度が400℃まで上昇させることが出来、高温引張試験中におけるIn-situ XRD測定を時間分解能2秒で行うことに成功した。 また、得られたX線回折プロファイルの変化から、変形に伴う転位密度の変化を求めた。純Alでは降伏時の転位密度は低く、また、塑性変形中の転位密度はほぼ増加せず、転位源からの転位増殖よりも回復が早いことが示唆された。Al-Cu合金ではCu添加量の増加に伴い、降伏強度が増加し、同時に延性も増加した。Cu添加量の増加に伴い、塑性変形中の転位密度が単調に増加し、降伏強度は転位密度の1/2乗に比例して増加することが明らかとなった。また、Cu添加量の増加により塑性変形中の転位密度増加量が増え、Cu原子が回復を抑制することが加工硬化量の増加につながり、延性も増加することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究によって、高温ガスフロー方式の採用により試験片を加熱することが出来、高温変形中のIn-situ XRD測定を2秒という高時間分解能で測定が可能な測定系の構築に成功した。この測定系を用いることにより、高温変形中の転位密度変化、固溶量変化、動的相変態の観察などが可能となると予想される。今回、本測定系で得られた上限試験温度は400℃であった。ガス加熱部における温度と試験片温度には、試験片温度300℃までは線形性があったが、それ以上の温度に加熱するためにガス加熱部の温度を上限の800℃にあげても試験片温度は400℃にしか達しなかったことが原因である。当初の計画では600℃を目標としていたため、この点においては十分に達成できなかったが、次年度に実施する予定であったAl-Cu合金における試験を一部実施できたため、「概ね順調」とみなした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に構築した測定系を用い、高温変形中におけるAl合金の転位密度変化に及ぼす固溶合金量や種類、析出物による変化を系統的に明らかにする。析出物は、人工時効温度、時間を変えることにより、サイズや体積分率を調整する。添加元素としては、Cu、Mg、Siを候補とする。 また、本年度の研究では400℃までの加熱を実現したが、さらに高温における実験を可能とするため、赤外線ゴールドイメージ炉など、他の加熱方法においても検討を行う。
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