2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of high-efficiency up-conversion oxide phosphor material and the analysis of its light-emitting mechanism
Project/Area Number |
20K05065
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山本 知之 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40298196)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アップコンバージョン蛍光体 / エネルギーハーべスティング / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,吸収した光をより高いエネルギーの光に変換して放出するアップコンバージョン現象に着目し,近赤外光を可視光に変換して太陽電池発電に寄与できるようにすることを目指した高効率・高耐久のアップコンバージョン型蛍光体の創製と,そのようなアップコンバージョン型蛍光体として知られている希土類添加型酸化物におけるアップコンバージョン現象のメカニズムの解明を目指している.具体的には,種々のマトリックスに希土類元素を添加したアップコンバージョン型蛍光体を種々の条件下で合成し,粉末X線回折法を用いた結晶構造解析及びシンクロトロン放射光を用いた添加元素の原子レベルでの局所環境解析を行い,アップコンバージョン発光特性評価を進めている.更に,X線光電子分光,紫外可視吸収分光及び第一原理計算を用いた電子状態評価も進めている.合成して評価を進めたアップコンバージョン型蛍光体における発光機構に関する知見を基にして,より高効率・高耐久のアップコンバージョン型蛍光体の創製し,太陽電池とのハイブリッド化を視野に入れて研究を進めている. 2020年度においては,CaMO4(M =Zr, Ti, Sn)系の酸化物をマトリックスとして,Er, Ybをはじめとする希土類元素を添加した試料を種々の条件下で固相反応法を用いた合成を行い,X線回折法を用いたそれらの結晶構造解析とアップコンバージョン特性の評価を行った.マトリックスの違いや添加元素の種類及び添加量に対する,アップコンバージョン発光波長や発光強度を整理した.また,第一原理計算を用いた希土類元素添加による構造変化や添加した希土類元素の局所環境評価を行った. 更には,紫外可視吸収スペクトルの測定および第一原理計算を用いた電子状態評価も行い,上記の構造変化や局所環境と電子状態の関係について検討を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度においては,CaMO4(M =Zr, Ti, Sn)をマトリックスとして,Er, Ybをはじめとする希土類元素を添加した試料を,固相反応法を用いて,雰囲気や焼成温度,焼成時間などの条件を変えて合成し,X線回折法を用いたそれらの結晶構造解析ならびにアップコンバージョン発光特性の評価を行った.アップコンバージョン発光スペクトルの測定は, 980nmの小型出力可変レーザーを光源として,小型分光器をセットしたプロトタイプの装置を組み上げて測定したが,発光特性評価に十分な感度と分解能を持った発光スペクトルを得ることができた.測定したアップコンバージョン発光スペクトルの形状と強度から,マトリックスの違いや添加元素の種類及び添加量により,アップコンバージョン発光波長や発光強度が異なることを整理し,より高効率な組み合わせについて検討した.また,平面波基底の第一原理計算を用いた希土類元素添加による構造変化や添加した希土類元素の局所環境評価を行った. 更には,紫外可視吸収スペクトルの測定から希土類元素添加によるバンドギャップの変化やバンドギャップ中の新たな準位形成の評価を行い,第一原理計算を用いた電子状態計算の結果との比較検討も行った.次年度の計画を進める上で,希土類元素添加による構造変化や希土類元素の局所環境と電子状態の関係について整理した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の本研究の推進に当たっては,さらにマトリックスの種類と合成条件,添加する希土類元素の種類を変えた試料の合成,X線回折,アップコンバージョン発光特性,紫外可視吸収スペクトル,シンクロトロン放射光を用いたX線吸収端近傍微細構造の測定などによる系統的は評価を進め,第一原理計算を用いた解析と合わせて,高輝度・高耐久のアップコンバージョン型蛍光体の創製とその発光機構の解明を進めていく.また,次世代型太陽電池として期待されている有機無機ハイブリッドペロブスカイトを受光層に用いるペロブスカイト太陽電池とのハイブリッド化によるエネルギーハーベスティングも目指していく. 2021年度においては,2020年度に行ったCaMO4系の酸化物に対する結果を基にして,異なるマトリックスを用いて,2020年度と同様の方針で実験を進める.それとともに,アルカリ金属など希土類元素以外の元素をさらに共添加することによってアップコンバージョン発光強度を上げるという従来研究の方法も取り入れて,さらに発光効率の高いアップコンバージョン型蛍光体の探索にも取り組んでいく. 2020年度は,シンクロトロン放射光を用いた希土類元素の局所環境解析を当初の予定通りに進めることができなかったため,合成条件を変えた試料の作製と実験室環境で実施可能な評価と第一原理計算を予定よりも多く進めた.2021年度においては,実施可能性の状況を見極めつつ,シンクロトロン放射光施設でのX線吸収端近傍微細構造測定の実施を前年度の計画分も含めて進めていく. 2021年度までに合成したアップコンバージョン型蛍光体を用いて,ペロブスカイト太陽電池とのハイブリッド化についても試験的な取り組みを始めていく. また,当初の計画に含めていた国際連携についても積極的に推進し,研究成果の発表を行っていく.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大のため,予定していた出張の大部分を実施することができず,次年度に向けた環境整備に重点を置いた支出に一部変更した.そのため,一部繰り越し金を残し,2021年度の状況を見極めて,特に本年度1回しか実施できなかったシンクロトロン放射光を用いた実験のための旅費に繰越金を充当することを予定している.
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